パートナー
――あの私のもう一人の姉妹が私を捕らえよだと……!
馬鹿馬鹿しくてアリアはため息を着く。
そして、彼らのいない反対方向へと駆け出す。足の速さには自信があった。何せ野蛮人と呼ばれるほど活発な娘だったからだ。
だが、行く手を阻むように彼らの仲間が現れる。
とうとうアリアは囲まれ、逃げ場を失ってしまった。
「さあ、我らと共に来てくれますね」
「だ、誰が行くものか!」
「そう吠えてもどうしようもないのは分かっているはず」
「くっ!」
とてつもなく卑怯な奴等だ。一人や二人くらいなら軽々とのし倒せるのだが、この人数ではあがいても無駄だ。負けが最初から見えている。
ここには長く居座らない方がいいと忠告した彼を思い出す。
ついつい興味心に勝てずにほっつき歩いた自分がどれだけ無防備だったのかとアリアは罵った。
盗賊団のリーダーらしき背の高い男が縄を取り出す。そしてアリアに近づき縄で腕を縛ろうとした。
――お願い、助けてリュウ!
そう思った瞬間、兵士の叫びが響いた。
皆の注目が声の元に集まる。その隙を突いてアリアは男の手から逃れた。そして唖然とする彼らの間をすり抜けて声のした場所へ向かった。
急に視界が開けた瞬間、目に飛び込んで来たのはリュウの姿だった。
アリアは迷わずリュウに飛びついた。その勢いで二人は地面へ倒れこむ。
「アホ、何でさっさとこの都市を出なかったんだ!すぐに出ろって言っただろう!」
「あ、あなたにアホなんて言われたくないです!それよりどうして私の危険が分かったのよ!」
「う、それは、お前の後密かにつけてたから、さ」
「……はあ?」
「そこの二人だけでよく分からないような会話をするな!」
一斉に彼らは二人目掛けて襲い掛かってくる。
リュウは矢を一気に十本放つ。見事に矢は彼らに命中した。そのまま地面へ倒れこんでいく。
それを見計らってリュウはアリアの手を掴んで走り出す。
「待て!貴様また俺達の邪魔をしやがって!」
「邪魔で悪かったな。永遠に邪魔してやるさ、お前の盗賊団なんざよ」
そう言い捨ててリュウとアリアは走り去っていった。
息を切らしながらアリアはリュウに問いかける。
「ねえねえ、さっきの話どういう事?」
「ん?」
「だから、つけてたってこと!」
リュウの手を振り払ってアリアは立ち止まる。リュウはアリアから視線を逸らして言った。
「一人にしたら危なっかしいし」
「それって女性を敬うレディーファーストとか言う奴?」
「……じゃなくて!」
「じゃあ、何よ!」
「お前と一緒に居たいんだよ!」
顔を真っ赤にして言うリュウの姿にアリアの頬もピンクに染まる。心臓がドキドキと脈打つ。
――何だ、同じ気持ちだったんじゃないか
もっと知りたい、一緒に居たいと言う愛おしさの気持ちが今一つになった瞬間だった。
例え困難が待ち受けていても共に居よう。
何があっても離れてたまるものか。
アリアはぎゅっとリュウを抱きしめた。リュウもそっとアリアを抱きしめる。
「行きましょう、一緒に」
「ああ、地の果てでも付き合ってやるさ」
彼の優しさにアリアは甘えていた。そう、これから更にエリアの罠が待ち構えているとも知らずに。