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 カチャ  キィ ・・・パタン


決して開かないだろうと思えた重厚な扉だったのに 男はなんとも軽い音をたてて外へでていった。


ドアが開いた瞬間 すぅっと空気が流れた。

緩やかな流れにのって前髪がさらりと額にこぼれる。

反射的に白い布でぐるぐる巻きの左手で 前髪を元の位置へ、左へ流す。

そのまま顔をあげると 少し開いている窓が目に入った。


風が木を揺らすような音が聞こえる。

さわさわ と静かな音が部屋の中を満たす。

静かな空気の中に一人。目を閉じて深呼吸をすると男と二人でいた時よりは落ち着くことができた。



さて これ どうしよう。


じっと足にはめられた枷を見る。


どうしようって言ったって・・・

はぁ と 重いため息が出る。


金の輪の繋ぎ目はしっかりと潰されており 当然ながら自分ではずすことはできない。

銀の鎖は太く 少し足を引いてみるとジャラリと重たい音を立てる。

長さは・・・結構ある。この部屋の中は動けそうだ。

テラスまではいけるかもしれない。


ベッドから見える景色は雲一つない青空のみ。

ここは建物の二階か三階?

葉の擦れる音が聞こえるからそんなに高い位置ではないだろうけど。


ふいに また涙が出そうになり頭を横に振る。


ああ それにしても


・・・頭 痛い・・・


泣きすぎだ。

昨夜は緊張して寝付けなかったから 寝不足というのもあるけど。

ベッドに横になりたい と思うけど、そういうわけにもいかない。

汚しちゃったけど あまり皺にしたくない。


だって ウェディング ドレス だもんね

純白でいたいのに赤なんて混ざっちゃって

・・・どこかで染み抜きできないかな


頭の隅で今のうちに逃げなくちゃ と思いはするものの、つながれた足を見ると そんなの無理 と絶望感が押し寄せてくる。

怖いことを考えたくなくて 無気力な状態でつらつらとどうでもいいようなことが頭に浮かぶ。


あのドアはトイレかな。

その隣はお風呂?

何か食べ物は持ってきてくれるんだろうか。

喉かわいたな。

頭痛薬ないかな。




・・・乱暴は されないといいな・・・。



ぶるっと寒気が走る。

どうしたって 怖いものは怖い。


覆い尽くそうとする恐怖心とそれから逃げる現実逃避的思考とがぐるぐる自分の中で巡る。


そんなことしていてもどうしようもないのはわかってる。

あのときもっとああしていれば!ってこの先後悔するんだろうか。

けど今の状態がどうしようもないのだから しょうがない。

そんなどうにもならない現実みていたくない。



そうして延々と頭の中をくるくるまわっていた自分が ふと 違うところへ足を踏み入れた。



・・・あれ?

あの人の花嫁さんはどうしたんだろう?



いきなり知らない人に知らない場所へ連れてこられて 私はすっかり被害者だと思い込んでいた。

けど 

思い返してみたら?

さっきの結婚式はたぶん本物だった

あの男の人の礼装も 神父さんらしき人も 煌びやかな参列者の人も

私にとっては見知らぬ人々で すごく怖かったけど

客観的に考えれば どこにでもある結婚式の風景だった


結婚式で花嫁が見知らぬ女になっていたとしたら


そう 普通はそっち

あの男にしてみたら



不審者は・・・・私・・・   



急にお腹の奥の方がヒヤッとした。


ど  どうしよう・・・。


あの人 悪人じゃ ないってこと?

そりゃ悪人て顔じゃなかった。

あの人だって 最初は驚いた顔してたもの。


あ  どうしよう なんかいろいろ納得。


そうか それで 足枷。

私は罪人なのか。


無実を叫びたいけど声でないしね。


喉に手を添えてみる。熱をもったりはしていない。

すぐ治るかな・・・   ん・・?



そう ええと・・・?

でない・・・・声?


・・ちょっと 変 よね? 


花嫁の行先を知りたいなら 普通 私に聞こうとしないだろうか。


なんで 

男は 私の声を潰してしまったのか。

なんで

あの場で公にして捕えなかったのか。


花婿自ら同じ馬車に乗り 花婿自ら私をここに閉じ込めた



公的な処罰よりも 私的に処罰したいという事だろうか??


ああ!!待って!

それはだめ

処罰なんて!私何も知らないし、やっぱりどう考えても被害者の一人だし!



・・けど 状況からみて私の立場は加害者。

声を取り上げたのは もしかしてどうあっても私に罪を着せるため?


それとも それとも 

・・あの人は事情をすべて知っている?

知っていて、花嫁のフリを私にさせた?

そうして 偽物とばれないように人目に触れないように ここに閉じ込めた?


ああ!


あの男が何者か分からないけど

きっと なにか知っている。

どうして私がここにいるのか 知ってるかもしれない。


どきどき してきた

喉にあてていた手をゆっくりと胸にあてる。

深呼吸をして脈打つ心臓を落ち着かせる。


そう 帰り道が もしかしたらあるかもしれない。


最後に見た涙目の父の顔が浮かぶ。


みんなきっと心配してる。


なんとかして事情を聞きださなくては


手の手当てをしてくれたし 一度隠した私を今すぐどうこうする というのはない気がする。

きっと 大丈夫

とにかく あの男と話せる機会を待とう


そこまで考えがたどり着くと

不安と恐怖しか感じられなかったこの場所に 少しだけ希望が見えた気がして 体の力が抜けた。







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