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教会から出ると馬車のような乗り物に乗せられた。

男も一緒だ。

もちろん、私はこの人と一緒になんて行く場所があるはずがない。


怖かった

馬車に連れ込まれるときは特に

得体のしれない人にどこかへ連れて行かれる

そう思うと

泣き叫んで暴れだしてしまうほどに恐怖を感じた


ただ実際はそれすらできない状態にあって


抱えられるようにして男には体の自由を奪われていたし、甘い蜜のせいで声はでなかった。

飲まされた蜜のせいか ショックから来るものか 手足は痺れて力が入らなかった。

声もなくひたすら泣いていたけれど 満面の笑みで涙をなめようと男の顔が近づいてくるので 無理やり涙は引っ込めた。

手荒く扱われることはなかったが いくら綺麗な人でも見知らぬ人からの過度なスキンシップは恐怖でしかなかった。


叫び声は強い喉の痛みとともに激しい咳にかわり

結局 暴れることすらできずに竦みあがっていただけだった。




このままどこかでおもちゃにされてしまうのだろうか


車内は男と二人きりで 私は向かいに座る相手の一挙一動にいちいちビクついていたが しばらくすると緊張する私をよそに 男はすやすやと寝息をたてて眠り込んでしまった。

男を起こさぬようドアを押したり引いたりしてみたが開かれることはなく、窓を割って出ようかと外を見ると結構な速さで景色が映り変わっていったので飛び降りたら自殺行為とわかり、これも断念した。

この馬車?が止まった時しかチャンスはない、と早々に体力温存へと切り替えた。

楽な姿勢を取り、目を閉じる。

いつ停車するか分からないから眠らないよう気をはり考えを巡らす。



本当になにがどうなっているのか。


見渡した招待客は皆知らない者ばかりだった。


今考えてみると、そもそも式場を間違えるということはあり得なかった。

一日貸切の会場だ。

到着したときに名前を伝えて花嫁の控室へ案内をしてもらった。

親族紹介は挙式の後披露宴の前に行う予定だったし、彼にはバージンロードの先で会う約束をしており、今日は一度も会っていない。

準備中はスタッフ以外会っていなかったため、もしかして間違いがあったか とも思うけど

確かに、父とは一緒にバージンロードを歩いたのだ。

振り返ったらすぐさま父のもとへ駆け寄ろうと考えていたのに。

最前列にいるはずの父の姿はどこにも見当たらなかった。


さらには 知らない景色

石畳のきれいな白を基調とした街並みを通り抜け、緑の広がる丘を緩やかに登っている。

街が見下ろせるほどまで来ると、その向こう側には海が広がっていた。

時折見た人々は外人さん

黒や茶が多かったけど金髪の人もいた。

格好は なんていうか 農夫っぽい雰囲気。中世ヨーロッパに描かれた絵画の中の人みたいな??ハイジに出てくる人物のような?


私がいたのは日本の山の中の避暑地で、かわいい教会のはずだったけど



ああ 本当に どうなってるの



目の前の男の様子からもこの移り変わる景色からも たどり着いた先に皆がいる なんて甘い希望は持つことができない。



今の状況から助けてくれる人がここには誰もいない。

わかるのはただそれだけ。


それでも一つだけ希望を残すとするのなら


(どうか どうか 目が覚めれば消える悪い夢でありますように・・・!)


そうか、こんなこと夢でしかない!

わけのわからない脈絡のない夢。よくあるじゃない。

夢だわ

夢・・・


揺れる馬車も 痺れたように残る口の中の甘味も 喉の痛みも 泣きすぎたせいで感じる頭重感も

すべてリアルに感じていることを知りつつ

無理やり夢ということで心を落ち着かせ、気を緩めた


途端 意識が遠のいた


やばいなーと思ったけど 夢ならいっかと強引に思い込み 睡魔に抗うのをやめた


本来あるはずの現実を夢にみながら・・・







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