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もう一度布団に潜り込もうとして、思いとどまった。
顔を出さなければ剥ぎ取られてしまう!!
幸いなことに、愛らしい少女はにこにこと微笑んで、顔を出して固まっている私に用意してくれたらしい衣服を手渡し、先ほどの隣の部屋へ戻ると扉を閉めてくれた。
とりあえず服を着ていいらしいことに安堵し、ゆっくりと体を起こす。
ドレスを脱がしたのは誰 とか 考えないようにしよう・・・
たとえ、用意された服がブラとショーツに至るまで 私の体にぴったりジャストフィットしているとしても 考えない方が精神衛生上よろしいに違いない。
さらには 鎖につながれていることを考慮してか ショーツが紐パン とか、気にしちゃいけないよね。
色?柄?・・・生地は鮮やかな紅!キラキラと輝くようなラメ入りであったとしても、もはや突っ込みを入れる気力すらわかない
なんにしろ裸よりはまし、そう思わなくては。
用意された服はすっぽりと頭からかぶって着られる真っ白な無地のAラインワンピースでした。
シンプルいずベスト
かろうじて胸元に品のいいゴールドなリボンがついているのみ。もしかして寝間着だろうか?
下着が透けないようきちんとスリップも用意されていた。
衝撃的なインナーだったけど、まともな格好にみえる。
ベッドに腰を下ろし、ほっと一息つく。
正面にはおおきな窓。
・・・今夜は満月ね。
結婚式は午前一番だった。
もう一日が終わる。
みんな心配してる よね
これが夢でないなら、私はバージンロードを歩き終わった途端いなくなったのではないだろうか。
謎の失踪?目の前で起きた神隠し?
父は 大丈夫?
彼は ?
会いたい。
会いたい。
会いたい。
ただの夢だろ。大丈夫、俺はここにいるよ。
そう言って いますぐ抱きしめてくれないと
ばかだな 泣くなよ
って笑ってくれないと
私 どうにかなっていまいそう
会いたいよ
「・・・・。」
彼の名を呼ぶことができたなら、
私の呼び声は彼まで届くのだろうか。
彼が私を呼ぶ声を聴くことができるのだろうか。
発することのできない声のかわりに、涙は留まることなく零れ落ちていく。
「・・・っ・・っ、・・・・っ」
嗚咽もしゃくりあげる音のみ。
満月を見上げてひたすら涙を流していたから
背後からその様子を見ている人がいるなんて全然気が付かなかった。
だから、
『真衣、俺と結婚してください。』
・・彼の 声が聞こえた気がして、振り向こうとしたときには
「 」
静かな男の声が耳元で聞こえ
温かく逞しい腕が背後から腰にまわり
一瞬彼の腕の中かと錯覚してしまった私は拒絶するどころか、安堵の息を吐き
正気に戻った時には男の腕の中にしっかりと捕らわれてしまっていた。