新風吹く頃に
今から何百年も前、遥か昔の事である。
世界は強力な国家による統一、それに反する者達による分裂を繰り返し、小規模から中規模の国家が乱立する時代を迎えた。
統治者はより大きな支配域を求め、民衆は解放と自由を望んだ。
その為に国家間の争いは絶えず、民衆の蜂起は後を絶たなかった。
そんな世界において、強大な武力を誇り、強力な支配により、他の国に侵略される事無く、統治を続ける国も有った。
その一つがペルナ帝國である。
東・北・西の三方を山脈に囲まれ、南に大河が流れる。
自然の助けもあり、この山と川に囲われた平野は、歴代の統治者により、一国支配を続けていた。
外患は、山に拒まれ、大河に流されて来たのだ。
このペルナ帝國は、山に隠れ、大河の流れに乗り、勢力をみるみる拡大していった。
周辺諸国は次から次へと、帝國の侵略による併合、及び統治権の放棄により、支配下に組み込まれていった。
ペルナ帝國は、地域の覇権をほぼ手中に納めたように思えた。
しかし、時勢には逆らえないように、外側から次第に勢力域を狭めていってしまったのである。
その原因は、皇帝による強権的独裁体制の恐怖政治に因るものである。
その政治手法は代々の皇帝に受け継がれ、民衆の命を賭けて抵抗した結果である。
最終的には伝統的統治領域である、山と川に囲まれたペルナ平野、及びペルナ平野を囲む領域を支配下とした。
だが、平野外域の分離独立も一定の終息を迎えた後も、皇帝による専制政治は変わることなく、民衆は戦時の負担も加わり、疲弊していた。
そして、このペルナ帝國も世界の流れに流されるかの様に、自由を求める民衆により、歴代皇室支配の幕を下ろす事になる。
ペルナ平野に今、革命と言う新たな風が吹く。
それは突風のようであり、嵐の如く吹き荒れた。
必ずしも疲れ果てた民を優しく包む、春のそよ風のようにはならないのである。