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第二話 緊急事態

――コール大陸


川沿いにある集落からダークウルフの討伐依頼を受けたフィオル達は、集落周辺の森に現れたダークウルフの群れと交戦中だった。


 

「か、囲まれたぁ!」


「慌てるな!…エディウス!背中を合わせるぞ!」


「は、はいっ!」


背中を合わせ全方位からの攻撃に備える二人に、四匹のダークウルフは唸り声を上げ、威嚇をする。


双方間合いを詰めることなく睨み合うその場の空間には、緊張感が漂うが痺れを切らし先に動いたのはダークウルフだった。


助走をつけエディウスに向かって一匹が飛び掛かろうとする。


「うわぁぁ!ダメだ隊長ー!」


その場でしゃがみこんで攻撃を避けようとしたエディウスの動きに、即座に反応し振り返りながらダークウルフを切り捨てると、その奥にいるダークウルフへ突進し切りつけ、フィオルのとてつもない瞬発力に反応が出来なかったダークウルフは即死した。


 

「あと二匹だ…。俺の後ろに来い。」


フィオルの指示にエディウスは後ろに隠れるように縮こまると、フィオルの睨みつけに怖気付き、動けなくなったダークウルフはあっという間に討伐された――。


 

「ふぅ。」


剣にこびり付いた血を布で拭く。


エディウスはポカンとした表情で立ち尽くしていた。


 

「おい!エディウス!」


その声にビクつき肩を落とす。


「お前がしゃがんだら奴らの攻撃は俺に一直線だぞ?俺が反応できたからいいが…あれじゃあ背中を合わせた意味が無いじゃないか…。」


「すみません…怖かったんですもん!」


「はぁ…。訓練を真面目にこなしてるって聞いて連れてきたはいいが…ここまで臆病だとは…。しかもしゃがんで避けた時にふらついて腰を打っただろう?大丈夫か?」


「大丈夫です!つ、次はちゃんとしますから!」


「その言葉、何回も聞いてるから!」


フィオルはエディウスの額に手刀を浴びせた。


「痛っ!」


 

ふと何かの気配に気づき空を見上げると、一羽の鳥がフィオル達の上空を旋回していた。



「ん?何だ……?ブルク長老の伝書鳥だ。」



伝書鳥はフィオルの肩に止まると、フィオルは脚に括られた手紙に目を通す。


 

「緊急事態だ。村に戻るぞ。」


フィオルの顔に汗が滲み、鬼気迫る表情を見たエディウスは返事をすること無く頷いた。

 


――フィオル達が交戦する二時間前、エルジオーネ大陸


陽は一番高い位置を過ぎ、少しずつ傾いてきたが空は暗い雲に覆われ、陽の光は薄らと大地を照らしていた。


エルジオーネ大陸支部長フェルレは数名の隊員を引連れ、竜の咆哮の発生源を調査する為、火山を目指していた。


活火山がいくつもあるが標高は1000m程でラヴィエルよりも高い山は一山しかなく、その山は咆哮の発生源とされるクレレと呼ばれるいちばん高い山で楯状火山の先にあり、フェルレの小隊はクレレを目指し、楯状火山の穏やかな傾斜を歩いていた。


 

「この傾斜…緩いが地味に脚にくるな…。」


最後尾の隊員が呟くと先頭を行くフェルレは振り返る。


「愚痴を零すなー!その一言がこの隊に伝播して考えてもいないのに、皆脚が重くなっていくことに気を取られてしまって…」


「はいはい。分かりましたよー。」


「そう。それでいいんだ。」


フェルレの言葉を遮る隊員にフェルレは頷き、喋るのを止める。


「あの人喋り出すと止まんないからなあ…。」


「うんうん。」

 

隊員達は微笑みながら顔を合わせ頷く。


そんな話をしながら小隊は歩き続け、クレレに近づくとだんだんと気温は上がり、暑くなっていく。

 

 

「…いやー。疲れてきた。」


「こらー!フェルレさんが愚痴零してるじゃないですか!」


「ふふふっ。」


これは彼女なりの気遣いであり、調査に訪れる前の隊員達は竜と対峙するのではないかと少し怯えていた。


少しでも緊張を解し、隊の雰囲気を良くしようとした彼女なりの気遣いである。


「大丈夫。これはただの調査。竜が現れたら発煙筒で知らせてすぐに引き返す…。」


「分かってますけど…。」


「それと!最悪日が暮れたら調査は中止。それまでに……」


言葉を途中で止めると、目を細くし先を凝視した。


 

「待て!止まれ…。」


先に見える大小ある岩の陰に、何かを目視したフェルレは右手を横に出し隊を止める。


「ヌグリエだ…。」


「何処です?何も見えないですが…。」


「あの岩の陰だ。」


先に見える大小ある岩は小隊から500m離れていて隊員達は目視出来なかった。


フェルレは目が良くどんな依頼の際も先頭を行く。


「火山帯に棲む肉食の鳥獣…。熱を逃がす為に毛を持たない…。恐らく2m程の成鳥だ…。確かに見えた…。」


周りに隠れる障害物は無く、一行はその場で体勢を低くし辺りを見回す。


「群れで行動するのに、一匹しか見えなかった…。他にも必ずいるはずだ。剣を抜いておこう。」


「「はい…!」」


小隊はその岩の先にあるクレレを目指している為通らざるを得なかった。


辺りを警戒しながら進み続け、岩まで40mと迫った瞬間、キィィという鳴き声が小隊の頭上に響き渡ると、二頭のヌグリエを目視し、隊員達は剣を強く握り迎撃体勢を取った。


ところが翼の羽ばたく音が小隊の背後から急に訪れると一頭のヌグリエの嘴が最後尾の隊員に迫っていた。


 

「危ねぇっ!」


最後尾の隊員は振り向き、驚きと同時に間一髪で嘴による攻撃を剣でいなし、すかさず他の隊員がヌグリエを切りつけ頭を落とした。


「くっ…。既にやられていたのね。」


仲間が倒され、警戒し空を飛び回るヌグリエを見て呟く。


「あいつらは頭が良い…。私達の歩いている方向に一頭置き、存在をわざとチラつかせ、そして上空に注目させるように鳴き声を出し、背後から襲う…。攻撃が捌けなかったら正面の奴も動いて挟み撃ち…頭の良いヌグリエの群れならではの行動だ。」


「既に囲まれていたって事か…。」


「そうみたい。でもね、私達も群れているとアイツらは勘違いしてるようだけど…!」


そう言うと目の前の岩へと剣を片手に猛スピードで走り出す。


そして、小さな岩へ飛び乗った瞬間、陰に隠れていたヌグリエは驚き飛び立った。


「逃がさないわよ…!」


続けて大きな岩に飛び移り、その上を飛ぶヌグリエへ向かい弾丸のように飛びながら突きを繰り出すと、胴体を見事に貫いた。


「うおぉぉ。」


隊員達は一瞬の出来事に声を漏らす。

 


フェルレは細剣の使い手で突きを主な攻撃手段とする。


身長は110cmと小さいが、女性特有の身体の靱やかさと柔らかさを持ち合わせ、あらゆる依頼、人々を救ってきた。


 

(流石だ…。バネを縮こませるように脚に力を溜め、弾丸のように飛んでいく…。フェルレさんの突きは丸太をも簡単に貫通させる…。ソウルガーディアンズの隊長達に並ぶほど…彼女は強い……!)


隊員の一人はフェルレの動きを瞬きをせずに見ると、高揚していた。


「さすがにあそこまでは飛べないなぁ…。」


スタッと華麗に着地をし、上空を飛び回るヌグリエを見上げる。

 

「相変わらず見惚れる動きだ。」


「はいはい。ありがと。さて…」

 


「ー!!」


突然耳をつんざく様な大きな音が鳴り響く。


隊員達は耳を塞ぎフェルレの手招きで岩の陰に走り、身を潜めた。


「咆哮だ…!」


フェルレは岩陰からチラッとクレレを覗いた。


「――!」


「どうした?」


息を漏らし驚きの表情を見せるフェルレに隊員は不安げな声を上げる。


(朱く、溶岩の光を反射させた鱗……!!)


「…朱の竜を目視した…。その周りにヌグリエの大きな群れもね…。」


その言葉に隊員達は顔を合わせ、汗を滲ませた。


「ど、どうする!?」


「発煙筒で知らせて私達は撤退だ…!急ぐぞ!」


「「はい!」」


小隊は発煙筒をラヴィエルの方に向け放ち、武器を仕舞い走り出した。


「…大じいちゃんに届いて…!」


フェルレは呟きオラディ村の方角を見つめた。

 


――コール大陸


「あれからずっと黙って走ってますけど…隊長!手紙を見た途端に強ばった表情してましたけど何があったんですか!?」


討伐を終え馬に乗り、村へ戻りながらエディウスは話し掛ける。


「エルジオーネ大陸で竜が現れた!…もうすぐ村に着くが俺は集会所で降りる!俺の馬も頼む!お前も後から集会所へ来るんだ…!」


「わ、分かりました…!」

 

集会所が見えてくるとフィオルは馬から飛び降り、エディウスに託し、駆け足で集会所に向かう。


「頼んだ…!」


「はい!」


(隊長のあんな焦る表情を見るのは初めてだ…。竜の出現…。)


 

集会所の扉を開けるとブルクと隊員達が集まっていた。 

 

「フィオルか待っていたぞ。手紙でも伝えたがエルジオーネ大陸から発煙筒が上がりフェルレから伝書鳥が届いた。地鳴り、竜の咆哮の発生を受け、警備隊からの伝書鳥では様子を見るとあったが、発生源と思われるクレレにフェルレ小隊が調査をしに向かった所、ヌグリエの群れと遭遇。そして再び咆哮が聞こえ竜の姿を目視したそうじゃ。さらにはヌグリエの大きな群れも現れた。」


「思った以上に危険かもしれない。」


「一刻も早く向かった方が良いだろう。」


弓撃隊長ノワルヴェール、守備隊長デュールは腕を組み言った。


「そうじゃな。ではすぐに馬車の準備をしてエルジオーネ大陸へ向かってくれるかのう。」


「「「はい!」」」


三隊長はすぐに個々の隊員を集め、遠征の準備を始めた。


急に慌ただしくなると村人は何事かと様子を見に中央通りの脇に集まっていた。


「隊長ー!」


武具の確認をいち早く終え、馬車へ向かうフィオルに合流したエディウス。


「お前もエルジオーネ大陸へ向かうぞ。」


「ホントですか!?て、敵は…?」


不安げな表情でフィオルに問う。


「ヌグリエという鳥獣と最悪竜種だ。」


「えー!!」


「次はちゃんとするって言ったろ。大丈夫だノワルヴェールさんもデュールさんもいる。ダークウルフと戦ってないから武具の準備は問題無いな!」


「はい。が、頑張ります…。」


俯くエディウスの肩をポンと叩くと二人は馬車へと向かった。


準備は滞りなく進み隊員達は三つの馬車へ乗り込む。


総勢50名で挑む遠征。


隊員達を乗せた馬車はエルジオーネ大陸へと出発した。

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