表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

炎は、逃がしてくれない

魔物の正体は、サラマンダーだった。


炎を纏う爬虫類型魔物。

赤黒い鱗、裂けた口、灼けた息。


(最悪の部類だな)


雷は通る。

土も効く。

だが――

火属性耐性が高い。


しかも、こいつは若体じゃない。

魔力の密度が、明らかに違う。



サラマンダーが吠えた。


熱が、爆発する。


地面から噴き上がった炎が、

通路を覆い尽くした。


(速い……!)


反射で魔力を叩き込む。


「――固めろ」


土属性・初級

《硬殻》


同時に、足元。


「――抑えろ」


土属性・中級

《縛地》


地面が盛り上がり、

サラマンダーの四肢を絡め取る。


だが――

一瞬で焼き切られた。


(拘束は無理か)



距離を取る。


サラマンダーが、息を吸う。


次に来るのは――

ブレス。


「――来る」


雷を練る。


詠唱を削る。

制御だけに集中する。


雷属性・中級

《疾雷》


一直線の雷が放たれ、

サラマンダーの頭部を撃ち抜いた。


だが、止まらない。


口が開き――

灼熱が吐き出された。



視界が、白くなる。


熱。

衝撃。

肺が焼ける感覚。


(……まずい)


地面を転がり、

ギリギリで直撃を避ける。


服の端が燃え、

皮膚がひりつく。


魔力を即座に回す。


「――沈め」


闇属性・中級

《黒霧》


濃い闇が広がり、

炎の視界を遮る。


闇は燃えない。

だが――

熱は通る。


(時間稼ぎにしかならない)



ここで、判断。


このまま削り合えば、

俺が先に死ぬ。


だから――

一点突破。



魔力を、雷に集中させる。


中途半端は駄目だ。

全部、叩き込む。


「――雷よ蒼穹に満ちる怒りよ

雲海を裂き、天の律を破れ


我が呼び声に応え

裁きの軌跡となりて

虚偽と障壁を貫け


今ここに集い

一点に収束し

天を穿て」


雷属性・上級

「《天穿》」


天井から、雷が落ちた。


直撃。


サラマンダーの鱗が砕け、

悲鳴が通路を震わせる。


だが――

まだ、生きている。


(……タフすぎる)



反撃。


炎が、床を舐めるように迫る。


逃げ場がない。


だから、

耐える。


「――沈め」


闇属性・中級

《影幕》


闇で炎を遮断し、

同時に土。


「――固定しろ」


土属性・上級

《岩牢》


地面から岩柱が立ち上がり、

サラマンダーの胴体を押さえ込む。


岩が、赤く焼ける。


時間は、数秒。



その数秒で、十分だ。


雷を、もう一度。


今度は、

一点。


雷属性・中級

《閃走》


目。


魔物の眼窩に雷が突き刺さり、

サラマンダーの動きが、完全に止まった。


次の瞬間。


身体が、崩れ落ちる。



炎が消え、

熱が引く。


サラマンダーは霧となり、

巨大な魔石だけが残った。


(……勝った)


息が、荒い。


魔力は、ほぼ空。

立っているのが、やっとだ。


(無理、しすぎたな)



魔石を拾い、

布に包む。


手が、少し震えていた。


でも――

生きている。


それでいい。



ダンジョンは、優しくない。


だが、

逃がしてもくれない。


なら、

倒すしかない。


俺は、ゆっくりと出口へ向かった。


心臓の鼓動が、

まだ、うるさかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ