三歳から始めたこと
三歳になった日、俺はダンジョンに入った。
理由は単純だ。
この世界では、魔物を倒さなければレベルは上がらない。
剣を振っても、
魔法を練っても、
強くなった気はするだけで、数値は変わらない。
意味はある。
だが、意味があるだけだ。
(それじゃ足りない)
⸻
ダンジョンは危険だ。
魔物は凶暴で、逃げない。
冒険者ですら死ぬ。
だから子どもは入らない。
――正しい判断だと思う。
でも俺は知っている。
十数年後、自分が死ぬことを。
だったら、やることは一つしかない。
⸻
最初に倒した魔物は、スライムだった。
弱い。
……はずだった。
動きは速く、
体当たりは普通に痛い。
三歳の身体では、一撃でも危ない。
だから、時間をかけた。
近づかない。
逃げる。
魔力を少しずつ使う。
何度も休み、
何度も距離を取り、
ようやく倒した。
魔物は消え、
手のひらサイズの魔石だけが残った。
同時に、身体の奥が少しだけ熱くなる。
(……上がったな)
感覚で分かる。
レベルが、確かに上がった。
⸻
問題は、その後だ。
魔石は証拠になる。
三歳児が持っていていい物じゃない。
だから俺は、
森の中に穴を掘り、魔石を埋めた。
場所は覚えた。
必要になったら、回収すればいい。
今は要らない。
⸻
それからの生活は、単調だ。
朝は屋敷で過ごす。
昼は子どもを演じる。
夜明け前に抜け出して、ダンジョンへ行く。
一日一体。
無理はしない。
危ないと感じたら、すぐ引く。
死んだら終わりだ。
レベルが高くても意味がない。
⸻
誰にも見つからず、
誰にも褒められず、
ただ淡々と続ける。
三歳の子どもが、
ダンジョンでレベルを上げているなんて、
誰も想像しない。
それでいい。
俺は目立ちたいわけじゃない。
英雄になりたいわけでもない。
ただ――
生き残りたいだけだ。
入学の日まで、
この生活は続く。




