季節外れの風鈴の涼しさ
掲載日:2025/12/04
「なんで冬なのに風鈴が飾ってあるの?」
君の部屋に吊るされた、青いガラスの風鈴を指さして聞く。
「風の声が聞きたいからかな」
愛しげに風鈴を眺めている。風鈴は揺れずにただそこに存在している。
「こんな部屋の中じゃ揺れないんじゃないの」
「だからこそだと私は思うの。たまにしか揺れない風鈴。そこに風の声が乗っているんだと思う」
君は、開けられた窓の外に目をやって、曇り空を惜しむように眺める。
「窓を開けても、この部屋に風は吹き込んでこない。でも時々風が迷い込んでここに入ってくるの。風鈴を鳴らしてね」
風鈴がちりん、とかすかに鳴る。乾いた冷たい風が部屋を駆け抜ける。君はこの風が何を言っているように聞こえるのだろうか。僕には何も聞こえない。
「今も風が迷い込んできたね」
「君にはこの風がどんなふうに聞こえるの?」
「寂しさ以上に期待の気持ちみたいなのが聞こえるかな。風鈴の鳴り方でなんとなくだけどね」
今は風鈴の音なんかせず、話し声が響くだけ。今度こそは風の声を聞こうと、今か今かと待っているが、ずっと風が迷い込んでは来なかった。




