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清貧に生きる野良神官は魔物退治をしながらお金を稼ぐ夢を見る~改訂にあたってカットしたエピソード集~  作者: 兎野羽地郎


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中の原衛兵隊女性兵士装備美麗化計画③及び中の原衛兵隊演習①

衛兵隊の演習エピソードは、投稿時には本編第二章に含まれていました。本筋には直接関係無いので、改訂時にこちらに移動させました。

 衛兵隊の演習は年に二回ある。春と秋だ。王国駐屯軍も一緒になってやるから結構な見物で、見物客も集まる。一種のお祭りなので、やるとやらないでは街に落ちるお金が違う。今年の春は魔王軍との戦いのために出征中なので人員不足で出来なかったのだが、マルセロ商会が魔物退治を請け負ったので、その分人員に余裕が出来た。なんとか実施にこぎつけたのだそうだ。

 私達もこう見えて貢献しているらしい。


 もちろん、王国軍と衛兵隊の半分は不参加なのでごく小規模なのだが、それでは盛り上がりに欠ける。アドルフ町長が自ら実行本部なるものを立ち上げて、色々趣向を凝らすらしい。衛兵隊対自警団の模擬戦が目玉になると言う話だった。


 通常は模擬戦で活躍した者は昇級するの。今回はアドルフ町長からも特別褒賞を出すとの布告があった。褒賞の対象は自警団も該当するので、自警団の気勢の上がり方は凄まじい。オッサン達の道楽にも困ったものだ。


 マルセロ商会の面々も自警団なので参加は出来るが、模擬戦で攻撃魔法を使うわけには行かないので、出るとすれば個人戦として藁人形を敵軍に見立てての披露となる。王国軍と衛兵隊の魔法兵が出征していないので、自警団のみとなったがこれは恐らくパウルさんとアンジェリカさんの一騎討ちだろう。私とマルセロさんは怪我人の手当てに、ベイオウルフは衛兵隊側で参加する。残念ながら模擬戦に参加する者はマルセロ商会にはいない……はずだった。




 演習当日。

 日曜日だ。

 その日の予定行事が張り出された自警団の集会所前には、人だかりが出来ていた。

 近隣の村からも見物客が出てきているからごった返している。

 マルセロ商会は参加者がいるので町から演習の案内が送られてきている。

 それを見てびっくりした。


 第一の町長挨拶は良いだろう。

 第二の衛兵隊の大通り行進も問題ない。

 問題は、第三の戦技競技会だ。

 いつの間にかペアの部に私がマルセロさんとの組でエントリーしていた。


 冗談ではない。回復魔法しか使えないのに戦技とはどういうことだ?

 どうやら、ベアトリクスが断りも無く勝手にエントリーしたらしい。

 文句を言うと、二人だから大丈夫とのこと。

 何が大丈夫なものか。神官の使う初級魔法だけなのに何故戦技なんだ。

 猛烈に抗議するも通らなかった。


 いつの間にか私の声を聞きつけたマルセロ商会の面々が集まってきて、私を四人がかりで説得にかかってきた。作戦があると言う。


「今更棄権なんて出来ないわよ。宣伝兼ねてんだから、諦めて大人しく出なさい」


 ベアトリクスがしたり顔で言う。


「一七五の会の規約違反よ。弾劾裁判だわ!」

「違反にならないと思うけどなあ」

「どうして? こんな大事なこと勝手に決めていいと思ってんの?」

「だって好意を伴っているんだもの」

「私には悪意以外感じられないわよ!」


 結局、初戦敗退なら規約違反にすることで決着がついた。

 ホントに、ホントに、どうしてこうなったのか……。




「では、皆さん。日頃の鍛錬により培った技と力をご披露していただき、中の原衛兵隊夏季特別大演習を大いに盛り上げて下さい。ああ、くれぐれも怪我をしないようにご注意を」


 なんだか、お祭りの開会みたいなアドルフさんの挨拶で衛兵隊の演習が始まった。集まった群衆は笑いながらもやんやの大喝采である。


 挨拶に続いては衛兵隊の行進だ。例年衛兵隊本部前から出発し、教会前、中央広場、町役場の順に右回りに町を一周した後、衛兵隊演習場に行き、演習が始まるのだ。

 今回もコースは同じらしいので、アドルフさんや大司教様のいる役場前のひな壇の傍へ行くと、工作所の二人が場所をとっておいてくれた。


 先頭は隊長代行のハンスさんで騎馬だ。その後ろに、伝統の黒地に白銀色の線画で王国の紋章を描いた旗印を持った兵士が三騎続く。その後は歩兵で、チェインメイルを装備し、衛兵隊の緑色の外衣を着て楯と槍を持っている。人数が多いのは、中の原地区の村々の衛兵隊から、個人戦に出場する腕自慢が参加しているからだろう。


 ベイオウルフがいないなと思っていたら、少し間をあけて見物客のどよめきと共に、騎馬兵が十騎出て来た。二列に並んでいる。


 漆黒だ。


 黒い衣服の上に黒く塗った胸甲、冑、ネックガード、腕輪を装備し、黒いマントを羽織って、艶めかしくも素足に黒いサンダルを履いている。良く見ると全員女性兵士だ。ベイオウルフもいた。楯も黒く塗ってあり、白銀色の線画で旗印と同じ紋章が描かれている。その徹底ぶりは乗っている馬にまで黒い布を掛けているほどだ。


 一様に引き締まった表情で真っ直ぐ正面を見ている。なかなかの演出だ。

 ベアトリクスが声を上げて手を振ると、先頭のブリジットさんが、正面を見据えたままで軽く口元だけの笑顔を見せてくれた。どうやら装備美麗化計画の結果らしい。


 ベアトリクスに聞くと、マントはなかった、とのこと。緑マーブルを染める時にきていた女性兵士達が染めたのだろう。


 喝采を浴びながらひな壇の正面に来たところで、突然ブリジットさんが号令を掛けた。


「抜刀!」


 一斉に黒い柄に黒い鞘の剣を鞘走る音と共に抜き、顔の前で垂直に立てた。

 驚いたことに刀身まで黒く塗ってある。観客もどよめいている。


「総司令官殿に対し! 礼!」


 一斉に剣を右斜め下に下げる。同時に、顔を右に向けてアドルフさんの顔を見る。

 観客は大盛り上がりだ。こんなの見たこともない。王国軍だってやっていない。歩兵は並んで歩いているだけだし、騎兵に至っては若い女の子に手を振ったりしている。


「直れ!」


 再びの号令で、前を向いて剣を収めると後は無言で去って行く。


「凄い! 凄い! 格好いいわよー!」


 ベアトリクスもこの演出は聞いていなかったのか、立ち上がって声援を送っている。

 ベアトリクスだけではない、皆立ち上がってそれぞれに声援を送った。私も思わず立ち上がって拍手をする。アドルフさんまで立ち上がっていた。


「よっしゃ! 決まった!」


 座ったままでガッツポーズをする工作所の二人の声は、聞こえなかった

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