ゴブリンの巣でお泊り
第四章序盤でのクマ退治合宿時のお泊り体験談です。本編の進行とは直接関係無い余談になるので、改訂時にこちらへ移動しました。
陽が落ちた頃、ゴブリンの巣に帰り着くと、出迎えに外で待っていてくれた。
「お風呂を用意してくれているようだ。君達は先に入ればいい」
「お風呂? ゴブリンもお風呂入るんだ」
「その先の山肌に穴を掘って蒸し風呂を作ってるんだ。お湯を貯めた浴槽には入りたがらないけど、蒸し風呂は好きみたいだ。布を体に撒いて入ってくれば良いよ」
見るとお母さんたちが、人数分の布を持ってきている。
案内された入口は、脱衣所よろしく柵で囲ってあって外からは見えない。
中に入ると、座れるように段差があって板が敷いてある。反対側には近づくだけで火傷しそうな石が置いてあった。石の上には煙突がある。石に油をかけて焼いたのだろう。
「これかな?」
「水をかけるんだよね」
「少しずつかけるんだよぉ。湯気が熱いから気をつけなきゃだめだよぉ」
焼いた石に水をかけて湯気を作る。木の枝に布を貼り付けた扇で仰いで湯気を部屋に行き渡らせると、丁度良い熱さになった。
しっかりと汗をかいた後で、水を浴びて着替える。
外に出ると、ビールを入れたお椀を渡してくれた。
「悪くないわね」
「最近はゴブリン達も、お風呂上りに僕が買ってきたビールを飲むようになったんだ」
ロビンソンさんは週末に町に降りて来る。その時に買っているらしい。
「大丈夫なんですか? ほら体に合うとかあるだろうし」
「元々、果物を発酵させて作ったお酒は飲んでたんだ。飲んで体調を崩す者もいなかったし、一日に一回一人一、二杯程度なら大丈夫だろう」
「そう言えば、一緒に蜂蜜酒飲んで騒いだことがあったわね」
ゴブリン救出作戦の時の事だ。
「そうそう、あれで味を占めたみたいでね。今じゃあ、ビールだけではなく、蜂蜜酒、ワイン、ゴブリンが作った果実酒と日替わりで飲んでいるんだよ」
「毎晩飲んでるの?」
「子供達や身重の母親を除いて、皆で風呂上がりの晩酌をするのが恒例になってしまった」
「中年太りになっても知らないわよ」
崖や木を敏捷に登っていく彼らが中年太りになるのは想像できない。飲み過ぎには注意をして欲しい。
とは言え、折角の親睦の場だ。
パウルさんやベアトリクスと言ったムードメーカーもいる。その夜は夜行性のゴブリン達と盛大に騒いで、翌朝いつまでも寝ている魔法使いをアウェイクの魔法で起こす羽目になった。
この魔法を授かった理由は、ベアトリクスを起こすためかもしれない。




