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清貧に生きる野良神官は魔物退治をしながらお金を稼ぐ夢を見る~改訂にあたってカットしたエピソード集~  作者: 兎野羽地郎


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激戦の後で

第三章東の原山岳陣地防衛戦後のエピソード集です。戦いの後が冗長になり過ぎているので、本編改訂時にこちらに移動しました。

 ガタン、ガタン、とカタパルトが陣地前の森に向けて石を飛ばし始めた。

 潜んでいるかも知れないオークの群れに向かって飛ばして追い払う。

 ある程度飛ばして、パウルさんが木を伐りはらう。止めはアンジェリカさんが作る氷の山だ。


 陣地内では怪我人の治療が始まった。猟兵団治療所の回復魔法兵、マルセロさん、私、それにため込んでいた巻物がフル稼働する。

 崖の上下を合わせて、十人以上の戦死者が出て、四十人近い負傷者が出た。

 それでも、相手の規模を考えると少ない方だと治療所の人が言っていた。


 ベアトリクスとリュドミラは一緒に陣地内を回って、炎の魔法で篝火をつけて廻っていた。同時に手に持った桶に水を作り兵士にあげていた。


 なんでも陣地内に入り込まれたら櫓は最初に狙われるからと、突っ込んでくると同時に一斉に逃げ出したらしい。

 あれだけ派手に雷を落とされた割には、魔法でやられた戦死者が少なかった。そういった理由のようだ。


 頭から地面に突っ伏したせいで泥だらけになっていた。あんまり活躍できなかったと言っていたが、怪我もせずにいたから良かった。


「あの時はありがとう!」


 お礼を言って抱きついたら、臭い、汚い、と散々だった。

 汚れてるのはお互い様なのにね。


 ◆◆◆◆


 ベイオウルフとヴィルが崖の上の状況を説明してくれた。

 ガーゴイルが足に掴んだオークやオーガを、崖下陣地を左右から迂回して崖上陣地後方の森の中に何十匹も落としていったらしい。その間、他のガーゴイルが上空から襲い続け、崖上の弓兵を引きつけていた。


 相手がそんな作戦をとるのは想定外だったようだ。

 魔法兵と白兵戦用の歩兵の大半が崖下に配置され、崖上の主力は弓兵だった。そこへ森の中からいきなりオークの群れが出て来た。

 弓兵を真ん中に集め、護衛の歩兵が周囲を固めて頑張っていたらしいが、浅い穴を掘っただけの平坦地と森の中との射撃戦では分が悪すぎる。楯を並べて矢を防いでいたところに突撃されたらしい。

 その結果、援軍要請になった。


 幸いなことに、崖下からの援軍と共に乱戦になっている最中に、峠を固めている守備兵が異変に気付いた。十騎ほどの騎馬兵と二十人ほどの歩兵で突撃をかけ、何とかもちこたえたようだ。


「オークは倒せたの?」

「ああ、1匹倒せたよ。いつものように私が守って、ヴィルが横合いから仕留めてくれた」


 答えを聞いたベアトリクスは、やるじゃない、とヴィルの肩を小突いている。


「いや、キャサリン先生が貸してくれたこの槍の御蔭だ。ベイオウルフが作ってくれた相手の隙目掛けて一気に突き込んだのだが、大して力を入れていないのにオークの身体を貫通してしまった」


 ヴィルは白銀の穂先を眺めて、満足そうに微笑んでいる。


「しかし、ガーゴイルを使ってオークの群れを空から運ぶとは、随分と手の込んだことをしてきたな」


 パウルさんが言うと、皆頷いている。


「これは、防衛戦術の見直しになるかも知れませんね。例えば、深夜に十組程度のオークとガーゴイルのセットに空から奇襲されるだけで、普通の村なら全滅しますよ」


 確かにマルセロさんの言うとおりだ。普通の村は衛兵がせいぜい十人程度だ。とても、勝てるとは思えない。


「町長に何か考えて貰わんといかんな」


 猟兵隊と衛兵隊が報告書を作るだろう、とパウルさんが締めくくってこの話は終わりになった。


◆◆◆◆


「こほん。では此度の勝利と、その勝利を我々にもたらしてくれた中の原から来た女神たちに。乾杯!」

「かんぱーい!」


 帰宅前夜に隊長主催の送別会を開いてくれた。中の原猟兵隊のルイスさんも差入れを背負った五人の山賊と共にやって来た。流石にロバーツ様は来ては貰えなかったが、その代わり酒樽を差し入れてくれた。


「お疲れ様でした」

「ハンナさんこそ、お疲れ様でした」


 テーブルの間では、エプロンを着けたアンジェリカさんが料理を配って回っている。パウル&ベアトリクスの宴会担当も盛り上がっている。私達の隣のテーブルでは、ブリジットさんがヴィル相手に飲み比べを始めた。


「あの時、フェンリルの魔法から私達を庇おうとしてくれましたよね? ありがうございました」

「いえ、良く分からないままに、ハンナさんや猟兵の人達に庇われていましたので、こちらこそお礼を言わせて下さい」

「実は事前にあの三人の方に言われていたんですよ。ここまで来るのはフェンリルだろうから、攻め込まれた時はジャンヌさんを庇って逃げろって」

「そうだったんですか」

「それなのに立ち上がって牽制したり、皆を庇おうとしたりして、びっくりしちゃいました」


 正直、どうしてああいう行動をとったのか、自分でも良く覚えていなかったりする。覚えているのは、ハンナさんに思いっきり引き倒された上に、オッサン三人が覆い被さってきたので、ぶつけた顔がやたらに痛かったことだけだ。


 そこへ即席カルテットを組んだ人達がコップを持ってやって来た。


「よう。お二人さん。よく頑張ったな。お疲れさま」

「ありがとうございます」


 二人してお礼を言う。


「今回は二人に随分と助けてもらったよ。礼を言う」


 そんなそんな、と二人して慌ててしまった。


「東の原の部隊は、知っての通り魔物が棲む森の抑え役だ。これからも応援を頼むこともあるだろう。その時はまた組もうな」

「はい! よろしくお願いします」


 自分の仕事がこういう風に認められるのは嬉しいものだ。ハンナさんと二人でニヤけてしまった。


 最後は、ルイスさんが、我らのマドンナに乾杯!と言って締めくくった。

 ハンナさんがお辞儀をし、エプロンを着けたアンジェリカさんがニコニコし、私が顔を赤くして俯いているなかで、ヴィルを潰したブリジットさんが山賊共を相手に飲み比べをやっていたのは流石と言うべきか。

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