リュドミラの活躍
第三章東の原山岳陣地防衛戦での一幕です。リュドミラの紹介用として投稿したのですが、ここまで書き込む必要はないと判断し、本編改訂時にこちらに移動しました。
日々見張りと訓練と夜間襲撃に備えての待機と偵察部隊の撃退とを繰り返していたのだが、意外なところで活躍した仲間が出た。
リュドミラだ。
一度来て以来、リュドミラはちょくちょく顔を出すようになったが、パウルさんが木を切っているのを見て思う所があったようだ。
いつものように昼過ぎに目を覚まして陣地の工事現場を見に行くと、リュドミラがしゃがんで何かしている。彼女の周りは雑草が植えられていた。
「リュドミラ? 何してるの?」
「草を植えてるの」
横に置いてある盥には、どこかで引っこ抜いてきたらしい雑草が入っている。
「木を一杯切ったから、このままだと雨が降ったら土が流れちゃうの。こうやって草を植えて根が張ったら大丈夫なんだよ」
「でもこれ、雑草よね?」
「雑草でいいんだよ。日向で育つ背が高くならないのを選んできたから、味方の邪魔にもならないよ」
「水はあるの?」
「後で汲んでくる」
盥の傍らには、きちんと桶とコップが用意されてある。
「そんなの私に任せなさいよ」
ベアトリクスがウォーターの魔法で桶に一杯の水を作った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「水撒き手伝おうか」
「うん!」
ニコニコ笑っている・
しばらく三人で雑草の植え付けをやっていたら、猟兵が近づいて来た。
「嬢ちゃんは、さっきから何をやってんだい」
リュドミラが説明する。
「嬢ちゃんは年の割にはしっかりしてんだな。よし、俺も手伝ってやろう。どうせ今は非番なんだ」
「ありがとう!」
既に成人しているのだが見た目が見た目だ。こんな所に子供が来るわけないのだが、殺伐とした雰囲気の中でこういう作業は新鮮だったようだ。面白がって説明を受ける者や手伝う者が増え、その日だけでも結構な草が植えられた。
以来、非番の者はリュドミラの指導の元、休憩所の周辺に生える日向で良く育つ背の低い雑草を引っこ抜いて盥に入れ、パウルさんが耕した後に植え付ける作業が流行った。
農業研究家が言うのだから実際に効果があるのだろうが、それ以上に現地の気分転換に一役買った。
他にもこういうことがあった。
ハンナさんの非番の時間に、山を案内してくれ、と言って、峠の左右の山を散策に行くようになった。
「ただ今帰りました」
「ただいま」
山から二人が帰って来た。
ハンナさんに手を引かれていたリュドミラが飛びついて来る。手には水筒を持っている。
「水筒綺麗にしとこうか?」
「その前にパウルさんに見せに行く」
「パウルさんに?」
「今日は水源になる場所を見つけたんですよ」
山の湧き水が小さな滝を作っているところだそうだ。
山の上では水は貴重品だ。現在のところ、マルセロさんの魔法陣で東の原側の峠下の渓流から水を移動させて供給しているのだが、経費が掛かり過ぎるから一時的な措置に過ぎない。
「二人共良くぞ見つけてくれたな。場所を教えてくれ」
「この地図に書いてあります」
流石はハンナさん。ところどころに目印を書き込んでいて、分かりやすく綺麗にまとめてある。
「良し。早速この目で見て来ることにしよう」
しばらくして帰って来た。
「山の水が清水になって流れておった。水道管を通せば煮炊きくらいには使える量だ。隊長に話しておくよ。実際に水をここまで引くのは陣地が出来上がった後だが、陣地は今後も人が入るからな。守備兵にとっては朗報だ」
リュドミラの頭を撫でている。
「今まではどうする積りだったんですか?」
猟兵だって水が無いと守れないことは分かっているはずだ。
「いや実はな。東の原の猟兵たちも、そういった場所は把握しておったんだ。しかし、中の原で泉を作った方法で、ここの水も西の山の下から汲み上げておるからな。問題意識が喪われておったんだ」
「あの方法なら鮮やかに解決しますものね」
ハンナさんも目を細めている。
もちろん、度々魔法陣を描き直さなければ効果が無くなることは知っている。
「上下水道の専門家として言わせてもらえば、アドルフ町長とマルセロがおらんと水汲みもできんようでは陣地としては機能せん。しかし、この件が問題の再提起の良いきっかけになるじゃろう。二人には礼を言うよ」
「いえいえ、私はリュドミラさんの道案内をしていただけですよ。お礼はどうぞリュドミラさんにお願いします」
ハンナさんが謙遜しているが、リュドミラ一人では出来なかったのは確かだ。その証拠にリュドミラがハンナさんにお礼を言っていた。
なんにせよ、色々と話題を振りまいたリュドミラだった。




