ごめん
私のいる学校には奇妙な怪談がある。
「プールの呪い」「プールの生霊」と色々な呼び方があって、内容も様々だ。
女子Aによると、放課後にひとりでプールに行くとなぜかプールに入りたくなって、そのまま飛び込んで、溺れて、死ぬらしい。その死体にプールに誘い込んだ霊が入り、次の日にはまるで別人になっている、というもの。
また、男子Bによると、休み時間にプールに行くと、次の日事故に遭うらしい。しかも、必ず植物状態になるとか。
怪談とは、語られる口によってだんだん変化していくものだ。
一昨日、のーの(私の親友)に、忘れたものをプールに取りに行きたいけど怖いからついてきてほしい、と言われた。あれから特になにも起こっていない。なんだ、やっぱり怪談なんて嘘だったん―――。
その日、少女は車にはねられて死んだ。死因は未だに不明だ。
また、この事故にはもうひとつ奇妙なことがある。
防犯カメラの映像によると、車には誰も乗っていなかったという。
少女の葬儀の日、棺の中から少女が生き返るという非現実的なことが起きた。
彼女は起き上がった瞬間、「ごめん、のーの」と言ったそうだ。
葬儀の事件から五年、現在彼女は地域の不動産で働いている。
ただ、彼女が紹介した物件に住んだ人は、必ず事故で死んでしまうそうだ。
そして、のーのこと宮原のの は、ある日突然ぴくりとも動かなくなった。
ただ、宮原ののは死んでいるわけではない。
いまも確かに、息をしているのだ。