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雲の上と草の根~実は高スペックなことを本人だけが知らない~  作者: あかかど


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夏休みの課題

「は~いじゃあこれから夏休みの課題を渡しますね~」


そう言うと紬先生は教卓の上に置かれていた段ボールの中からノート一冊と夏休みの課題にしては薄目なプリントの束を配りだした。


「やった!見た感じ夏休みの課題の量少なそうだし、これなら部活に集中できる!」

「ホントにね、夏休みの練習で差が出るといっても過言じゃないし」


真波と縁が嬉しそうにハイタッチしている。確かに部活に集中したい人達は夏休みの課題に少ないに越したことは無い。これで全部と言うことは無いだろうがそれにしてもここまで課題の量が少ないというのは少し驚きだ。


俺は最初に渡ってきた数学のプリントに目を通してみる…なるほどな。


「二人とも、喜んでるところ水を差すようだけどちょっと渡ったプリント見てみな」

「え…これは…」


プリントには数学の問題がプリント一枚に着きおよそ2から3問印刷されている。確かに問題数は少ない、しかしその問題1つ1つがいつも自分たちが解いているレベルの数段上のレベルをいっている。


「こんなレベルの問題参考書に一問載ってるかどうかだろ!?」

「多分実際の大学入試の問題から引っ張ってきたり、先生オリジナル問題も交じってるだろうな」


問題の量が少ないと思ったが確かに量が少ないのも納得だ。このレベルの問題が普通の夏休みの量出たら雲雀でも多分無理だ…と思う。少なくとも秀一は100%無理だ。


「こうなったら背に腹は代えられない、答え丸写しするしか―――」

「答えは夏休み中に一回ある出校日に一定以上の量課題をやってきた人にだけ渡しま~す。ちなみに部活が忙しくても基準値に達しなかった場合学校に来て基準値を上回るまでやってもらいますからね」


二人はこの報告を聞きどんな感情になっているか分からないような顔をしている。


「プリントはそのまま上に書いて、ノートは各教科ごとに課題の問題や範囲が決められてるからその問題を解いてきてね。それから、課題の量が少ないからって普段からの自学自習も忘れないように!」


紬先生は笑顔でそんな事を言ったが言っている内容はそんな顔で言うようなものではない。


その後は勉強以外の課題などを渡された。これはそこまで難しい内容でもないしいつも通り毎日コツコツやれば大丈夫だろう。


そして俺たちは全ての夏休みの課題を受け取った。


「それじゃあ次にこの間受けた模試の結果を返すのと一緒に面談をしますね~。出席番号順に来てくださいね。Bクラスは図書室でやりま~す。待ち時間は何しててもいいけどあまりうるさくしすぎないように!じゃあ一番最初の人は準備ができたら図書室に来てください!」


そうして紬先生は恐らくBクラス全員の模試の結果が入っているであろう封筒を持って教室を後にする。


時間を潰すとしても何して潰そう、取り合えずさっきもらった課題に名前でも書くか。


そう思いペンを持ったが凄い勢いでプリント取り組んでいる二人に気を取られあまり書く気にもなれなかった。


「二人とも、まだ夏休みも始まってないんだからそんな急がなくてもいいんじゃない?」

「そうかもしれないけど早く始めなきゃ間に合わない可能性もある」

「そうそう!あたしなんて一人でいると絶対進まないから誰か人といるうちにやらなきゃ!」

「でも二人とも今日は授業無いから教科書も参考書も持って帰ったって言ったよな?解けるのか?」

「「・・・・・」」


質問するまでもなく初めから二人のペンは式を写した後は動いていなかった。二人は決して頭が悪いわけではない。Bクラスでスポーツ推薦で入ったとはいえ天稟学園に入っているのだから全国的に見ても別に高い方だろう。しかし今回は相手が悪い。


「課題は未来の自分に任せて今日は部活の事に集中しよう」

「あたしもそうする」

「急がなくてもいいんじゃって言った俺が言うのもなんだけど諦めるの早いな」


二人はプリントを机に置く。そして自分たちの面談が来るのを待つことにした。


「まだまだ始まったばっかりだけど二人はどういうところ志望したんだ?」

「俺はスポーツ医学かスポーツ科学が学べる場所。バスケで推薦貰えればいいんだけどそれもまだどうなるか分かんないから最初はとりあえず偏差値とかレベルは考えずにバスケが強くて学べそうなところって感じで。」

「あたしは心理系の場所選んだ!大学はあんまり学費かけれないからとりあえず国公立で簡単なところから難しいところまで満遍なくって感じかな」


二人ともしっかりと自分が学びたい事や将来を見据えて選んでいて偉い。俺なんてまだ自分が何を学びたいのかすら分かっていないのに。


そんな事をぼんやりと考えていたら今度は俺が二人からどこを選んだのか聞かれた。


「そういう誠翔君はどこ選んだの?やっぱりトップクラスの国公立大学とか医学部とか?」

「あ~大学は確かにトップクラス選んだけど国公立も医学部も受けてないな」

「え!なんで!?学力的には十分戦えるでしょ?」

「うち貧乏だから医学部通う余裕ないしな。うまくいけば国公立でも学費0に出来るかもしれないけど私立なら特待生で0円+給付型の奨学金もらえるところもあるし」

「え~勿体ないな~。でも仕方ないか」

「そうそう、まず天稟学園通えてる時点で奇跡にも近いのにこれ以上その奇跡に頼るわけにもいかないからな」


これは仕方ないと割り切っているため俺自身は別にそこまで気にしていない。しかも天稟学園の受験とは違いまだまだ準備期間も沢山ある。


二人の少し残念で申し訳なさそうな顔とは裏腹に俺自身は今の状況をラッキーとすら捉えているぐらいだ。


俺は二人と会話をしながら少しずつ課題に自分の名前を書き続け遂に名前を書き終えた。そしてパラパラとプリントをめくりどんな問題があるのかを軽く目を通した。


「おっ!二人とも、この問題なら多分この時間の間に解けて教えられるかも」

「ホントか!どの問題だ?」

「すぐやろ早くやろ!」

「わかったわかった時間は沢山あるんだから落ち着きなって。問題は科学の2ページ目で―――」


そうして俺たちは自分たちの面談の番が来るまで問題を楽しく話し合いながら解いた。


「―――ってことで答えがこれになる」

「なるほどな…これ絶対俺一人じゃ解けない気がする」

「あたしも、第一今これ解いたって事はまだ簡単な方だって言うね」

「大丈夫だって教科書とか参考書参考にすれば解けるようにはなってるし。ただの考察になっちゃうけど先生が一定以上の量をやってくるって言うのを課題にしたのは捨て問を探す練習も含まれてるからだとと思う」

「それ本当に~?」

「当たってるかどうかは分かんないけど答えもないのにそれくらい難しかったら課題として成り立ってないでしょ」

「それはそうなんだけどさ~」


正直俺の考察が当たってるかどうかは分からないがそのような理由がある方がまだ解いていてこれも練習だとやる気が出てくる。


「縁ちゃん面談次だよ」

「あっ、ありがと!じゃあ行ってくるね~」


そうして縁は元気に面談に向かっていった。


「支倉が行ったって事は俺達もそろそろ呼ばれるな、って言っても今の時期の面談なんて正直まだ有って無いようなもんだしな」

「俺は面談あんま好きじゃないんだよな」

「そうなのか、それまた何で。学力的には問題ないだろ?」

「まぁ中学時代に色々あってな」


俺は自分の面談の番が来るまで天稟学園受験前後の事を少し頭の中で振り返って待った。

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