大量
「よ~しお前ら、そろそろ終わるぞ~」
「は~い」
西村さんの掛け声を聞き俺たちは撤収作業を始めた。何時間たったのだろうか。太陽はすっかり西方面にあった。
秀一に撤収作業のやり方をレクチャーしてもらったおかげで滞りなく後片付けを終える事が出来た。そして俺たちはクルーザーの中に入り動き出すのを待った。
しばらく待っていると船が動き始め陸の方に移動し始めた。
「いや~楽しかったな~!」
「そうだな、本当に楽しかった。これも秀一と秀明さんと西村さんのおかげだ」
初めて本当の釣りをしたが俺が予想していた何倍も面白かった。これは秀一が釣り好きだというのも納得だ。ぜひまた一緒に釣りに行きたい。…こんなすごい環境でなくていいが。
「にしても今日の釣り秀一に釣りについて聞いてばっかだったからもしかして秀一楽しめなかったんじゃないか?」
「いや全然!すっごく楽しかったぞ!」
「でも俺よりも釣りになれてるはずなのに連れてる魚の数俺と大差ない気がしてさ」
「なんだそんな事か。俺にとったら俺がボウズになるより釣りを楽しもうとしてる人がボウズになる方が嫌なんだよ」
確かに自分の好きな物を好きになってくれそうな人が楽しめなさそうにしてる時って辛いな。
「そうだな、うん。ホントに楽しかった、絶対また行こう」
「だな!今回は海だから次は川かな~」
「海釣りと川釣りってどれくらい違うんだ?」
「え~とそうだな。まずハッキリ言って別の趣味って言っていいほど違って~―――」
俺達は陸に帰るまで川釣りについて長く語り合った。
「よ~し荷物車に入れるぞ。俺と秀明で重い物入れるから誠翔と秀一は小道具とかを積んでくれ」
俺達は軽い小物や釣り竿や網、またクーラーボックスなどを車に積み込んだ。小道具系ばっかりだったという事もあり意外と時間がかからずに終わった。
「おっちゃん終わったけど後何すればいい?」
「じゃあ魚積み込んでくれ。結構な量が入ってて重いから気を付けろよ」
「分かってるよ!任せて」
指示された通り俺たちはフェリーに行き魚が入っている箱を担ぎ車に向かった。
「結構ずっしりするな。今日結構釣ったんだな~」
「俺と誠翔だけでも結構な量釣ったけど親父とおっちゃんもいたからな。これだけの量があれば相当腹いっぱい食べれるな。大漁だ大漁」
「昼に秀明さんが作った料理だけであれだけ美味しかったからな。その秀明さんの料理よりも美味しいって言う西村さんの料理楽しみだな」
「西村家の料理は美味いぞ~。ハッキリ言ってそこら辺の飲食店よりも美味いからな」
俺は固唾を飲み込みながら車に魚を積み込んだ。
俺達と西村さん達両方が帰りの支度を終え行きの時と同じように俺は西村さんの車に乗って車を走らせた。
「どうだった誠翔、釣りは楽しかったか?」
「はい!本当に楽しかったです。とてもいい思い出になりました」
「俺も久しぶりにこんな楽しい釣りしたよ。何が一番面白かった?」
「そうですね~色々ありますけどやっぱり魚が連れた瞬間ですかね。スゴイ嬉しくって…。後あれですね、面白いとは違いますけど秀明さんが作ってくれたお昼ご飯は美味しかったです」
「新鮮な魚を使ってたからな!あれは確かに美味かった」
「西村さんの料理とっても美味しいって話なのですごく楽しみです」
「そうか!それは腕に縒りをかけて作らなきゃな!」
話を聞くと秀明さんも秀一と同じように楽しめたか気になっていたようだ。俺は今日の思い出、そして感謝をしながら楽しく談笑しながら家に帰った。
俺達は家に到着し車から降りた、秀一達はまだ帰ってくる様子は無い。
「それじゃあ誠翔は積んでる魚を台所に移動させてくれ。そこで魚の下処理をしててくれ」
「分かりました…でも俺下処理なんてしたことありませんよ?」
「大丈夫だ、そろそろ帰ってきてるはずだから」
「そうですか、分かりました」
帰ってきてる?誰が帰ってきてるんだ?いや、もしかしたら聞き間違えで秀明さんが返ってくるの間違えか?
俺は魚が入った箱を抱えながら記憶を頼りに台所まで向かった。
「え~っと、確かここだっけ?」
幸いものすごく立派な調理場であったとこが印象に残っており迷うことなくまっすぐ台所に着いた。俺は扉を足で台所の扉を開ける。
「あれ?誰?…あ~!もしかして君が今日来るって言ってた誠翔君?」
そこには肌はこんがりと日焼けし、まるで漫画やアニメから登場してきたようなスタイルの良い女性が立っていた。服も何だか出てるところははち切れちゃいそうな位パツパツで締まる所はしっかりと締まっていて目のやり場に困る。
「初めまして三葉誠翔です。よろしくお願いします」
「うんうんよろしくよろしく!私潮音ね!その箱の中身魚でしょ?ほらほら、そんな重い物担いで無いでさっさと床に置いちゃって」
俺が箱を床に置くと潮音さんは箱を開け中身を確認する。
「中身はアジとかサバが多いね。ねぇ、今日の魚ってこれで全部?」
「あぁいや、まだ結構な数の魚がいますね。何回かに分けてこっちに持ってくるつもりだったので」
「そうだよね、満がこんな量で満足するはずないし秀明君に秀一君、それに釣り初心者の誠翔君が来るってなるともっと釣るはずだもんね…てことはいつも通りならマダイも何匹かいるかな」
潮音さんは箱を調理台の上に乗っけて魚を一匹掴み取る。
「これは血抜き成功してる、これは失敗、これは…う~んまぁ妥協点ってところかな」
「もしかして血抜きの完成度を見てるんですか?分かるものなんですね…あっ、ごめんなさい。俺秀一に教えてはもらいましたけど何匹も血抜き失敗してしまって」
「良いの良いの、血抜きが上手くいってても上手くいってなくても美味しく食べれる調理方法があるんだから。誠翔君はこれから何匹かを三枚におろしてもらいたいんだけど出来る?」
「三枚おろし程度なら何とか」
俺は仕分けされた魚の血抜きが上手くいっている方の魚を捌き始めた。最初は久しぶりのため緊張したが、少し捌いて行くと要領を掴み何とか捌くことが出来た。
「うんうん上手い上手い!その調子でドンドン捌いちゃって!」
「ハイ!ありがとうございます」
俺が次の魚を捌こうとしたところで扉が開いた。
「ふ~重い重い、こりゃ捌くの大変だな…あ!潮音さん久しぶりです!」
「あ、秀一久しぶり!また見ない間に男前になっちゃって、このこの~!」
「へへ、でしょ~!これ追加の箱ね。お!その三枚おろし誠翔がやったのか上手だな!」
「最初は苦戦したけど何とかな」
「よ~し俺も負けてられないな」
そうして秀一は俺の隣で魚を捌き始める。
俺はずっと気になっていた事を秀一に捌きながら聞く。
「なぁなぁ秀一、聞きたいことあんだけど」
「どうした?魚の捌き方か?」
「いやそうじゃなくって、潮音さんって西村さんとどういう関係なんだ?親子…にしては西村さんの年齢の割には見た目が大人びてるって言うか」
「あれ聞いてない?夫婦だよ夫婦」
「え!夫婦!?てことは年齢も同じ位って事か!?」
「そうだな…確か潮音さんの方が何歳か若かったはずだけどほとんど変わらないはず」
嘘だろ、こんなに若い見た目なのにまさかそこまで年上なんて。俺はてっきり20歳前半だと。あと西村さんとの関係は親戚関係だとバッカリ…いやよくよく考えればお互いの見た目からしてお似合いだ。夫婦と言う関係が思いつかなかった方が良く考えたらおかしいのかもしれない。
「何々?私の年齢がどうしたって?」
「いぇ…潮音さん年齢の割にすごく若くてびっくりしたって言うか。夫婦って聞いて驚いて…俺はてっきり親戚関係とかだと勘違いしてて」
「へ~!嬉しいこと言ってくれるじゃん!最近年取って来たなって思ってたけどあたしもまだまだいけるって事かな~!」
「いけるいける!冗談抜きで会うたびに若くなってるし母さんも毎回潮音さんの若さの秘訣気になってるよ!」
果たしてこの若さを保つ秘訣は何なのだろうか…。今日一日で秀明さんがマンションに迎えに来たり魚を釣ったりといろいろな出来事があったが俺はこの現実離れした若さをもつ潮音さんに今日一番の衝撃を受けた。




