最悪な夢
怠い体の状態から頑張ってベットから抜け出しリビングに移動する。そして俺は体温計を取り出し自分の体温を測り始める。数十秒待っていると体温計から音が鳴り始める。
「うわ、結構高いな」
体温計を見てみるとそこには37.8と表示されていた。寝起きでこの温度だという事はこれからどんどん熱が上がってくるだろう。
俺は本格的に熱が上がり始める前にやるべきことをやり始める。まず最初に秀一に風邪を引いたため今日は休む旨を伝える。次に学校に今日は休むことを連絡する。最後に食欲はあったため簡単な朝ご飯を作り薬を飲み布団に戻る。
「あっそうだ」
俺はもう一度秀一にメッセージを送る。
『今日もしも雲雀さんに俺が休んでる理由聞かれたら風邪って言わずに適当にはぐらかしておいてくれ』
『分かったけど何で?』
『昨日俺の傘貸して雲雀さんの事帰したんだ。もし風邪ひいたって分かったら自分のせいだって気にしちゃうだろうから』
『分かった、じゃあゆっくり休んで』
俺は今度こそやるべきことを全て終え、ベットで眠りにつく。
小学校の教室。そこで悩んでいる女の子がいる。
「どうしたの、困ったことでもあった?手伝おうか?」
「あ~誠翔君か、いやいいよ。誠翔君って頼りにならないし誠翔君に相談したところで無駄だろうし」
「えっ…」
「誠翔君頭悪いから私の悩んでる事相談したところで意味ないもん」
そう言うと女の子はどこかに消えていく。
僕はショックを受けていると後ろから同級生の男子の話し声が聞こえる。
「これから何して遊ぶ?やっぱバスケとか?」
「いっつもバスケだからたまにはサッカーとかドッジボールとかやろうぜ」
「あ~それ良いな!」
「僕も入れてくれ!」
僕はその同級生たちに仲間に入れてもらうように話しかける。しかしみんなは僕に対し嫌そうな顔をする。
「嫌だよ。だって誠翔運動神経悪いから」
「そうそう、誠翔がいるチームが負けるって分かってるから戦ってもつまんないんだもん」
「そんなことない!きっと足引っ張らないから」
「いやもういいよ。行こ、みんな」
同級生たちはみんな揃って消えていく。
「どうしちまったんだよみんな」
僕はいつもみんなと帰っていたはずなのに、一人で家まで帰る。
「どうした誠翔、そんな顔して」
「え、お父さん!どうしているの!」
「どうしてってここはお父さんたちの家だろ?いるのは当たり前じゃないか」
「そっか…そうだよね!お父さん、実は相談したいことがあって…」
僕は今日あったことを父さんに相談する。
「なるほどなそんな事が」
「僕どうすればいいかな」
「別にどうすることもないさ。別に誠翔がその女の子が誠翔を頼らないのも男の子たちが混ぜてくれないのも誠翔の能力が低いから仕方ないだろ」
「…え?」
「人間なんてじぶんのことでいっぱいいっぱいなんだ。お父さんだってよく困ってる人がいても心の中で解決すればいいなっては思うけど思って終わり。だからそこまで気にする必要なんかないさ」
「お父さん…本物…?」
「どうしたんだ誠翔、どっからどう見たって本物の父さんだろ?」
目の前にいる人は確かにどっからどう見ても父さんだ。でも僕の知っている父さんではない。
「父さん…いや、おっ…お前は誰だ!?父さんはそんなこと言わない!」
「違うわ誠翔。彼は間違いなく誠翔のお父さんだし何も間違ったことも言ってないわ」
「誰だ!?」
俺は聞こえてきた声の方向に振り返り誰かと声を張り上げる。
「雲雀…?」
「そうよ、私は間違えなく空先雲雀」
僕も彼女を雲雀だと思い、彼女自身も自分の事を雲雀と言った。しかし、目の前にいる女性は明らかに自分より年上だ。雲雀は僕と同級生のはずなのに。
「お父さんが間違ったことを言ってないってどういうことだ!」
「そのまんまの意味。誠翔は頭が悪いし運動神経もよくない、そして頼りがいが無い。だから誰も誠翔を頼らないの」
「そんな…そんなの嘘だ!」
「だったらどうして中学生時代彼女は誠翔じゃなくて秀一君を頼ったの?それは誠翔じゃ無理だったからでしょ」
「そっそれは」
「私はあなたとの約束を守るために一生懸命努力した。でもあなたは私との約束を守らなかったそんな人間に誰が頼るって言うの?」
何も言えなかった。…いや、何もいう事が出来なかった。
「じゃあね。あなたにはその惨めな姿がお似合いよ」
そう言うと雲雀はどこかに消えていった。
ハァ…ハァ…ハァ……ハァ………ハァ………ハァ…………。
「ハ!」
夢…か…。そりゃそうだ。思い返してみれば今高校生でベットで寝てたはずなのにいきなり小学校の教室にいるわ亡くなったはずの父さんは生きてるわ。最悪だ、せっかく父さんを見たと思ったらあんな非現実な父さんを見るなんて。汗で掛け布団やベットがびっしょりしていて気持ち悪い。
俺は一度起きてリビングで水を飲む。そしてスマホで時間を確認する。
「14時半か…結構寝たな。お、秀一から連絡来てる」
12時過ぎに秀一から連絡が来ていた。
『悪い、寝てて気づかなかった』
そう返し暫く返事が返ってこないと思ったがすぐに帰って来た。
『気にしないで、それより体調大丈夫か?』
『寝起きだから今はいいけどこれからすぐにまた具合悪くなるだろうな』
『そっか~。今日学校終わったらお見舞い行くよ。なにか欲しい物あるか?』
『たすかる。果物の缶詰とかスポドリ頼む』
『分かった。じゃあ無理すんなよ』
俺は秀一とのメッセージを終え、汗をかいていたためシャツを着替える。食欲がなかったためお昼ご飯はとりあえず今はやめておこう。
俺は水を飲みながら夢の一部を思い出す。
『私はあなたとの約束を守るために一生懸命努力した。でもあなたは私との約束を守らなかったそんな人間に誰が頼るって言うの?』
だよな…。夢だからおかしな部分は多かったが、夢の中に出てきた雲雀のこの発言だけは間違ったことを言ってない。
今でこそ雲雀とは新しい関係を築く事に成功しているが、本来俺は雲雀と関われるはずのない人間なんだ。今雲雀が俺に興味を持っているのもただの雲雀の気分なんだ。
風邪をひいているからだからだろう、悪夢を見るし気分も落ちてしまう。
今まで寝続けていたためすぐに寝る気にはなれなかった。俺はソファーに座りスマホをいじる。SNSを見たり勉強をしたり、様々な事をしてみてはいるが体調が悪いため全然楽しめなかった。それどころか俄然体調が悪くなって気がする。俺は再び体温計を取り体温を測る。
「どれどれ…マジか」
体温計を見ると今度は朝に測った時よりさらに高い38.9度と表示されていた。
「これは…いよいよまずいな」
俺はスマホを置きその場から立ち上がりまた薬を飲む。更に保冷材など冷たい物をタオルに巻き氷枕にするなどの準備をする。そしていよいよ寝ようとしたところでインターホンが鳴る。秀一がエントランスに着いたのだろう。俺はエントランスを開け玄関の鍵を開ける。秀一には悪いが具合が悪いため寝させてもらおう。俺はベットに入りまた寝始める。
「う~ん…夜か」
どれくらい寝たのだろうか、外はすっかり夜になっている。体調はそこそこになっている。俺はスマホで時間を確認しようとしたがスマホが見つからなかった。
そっか、ソファーで使ってたから今リビングにあるのか。
俺はベットから立ち上がり自室を出てリビングのドアを開ける。
「スマホスマ…ホ」
「あっおはよう誠翔、体調大丈夫?ごめんね~私のせいだよね」
「え…何で雲雀さんがいるの…秀一は?」
誰もいないと思っていたリビングを開けるとそこには雲雀がいた。
二度目の夢の中での一幕。
「…誠翔」
「今度は秀一か…」
「誠翔…俺はお前に失望したよ。お前そんな奴だったんだな」
一体何を言われるのだろうか。やはり中学時代に避けたり性格が変わったことだろうか。
「失望した…なんで俺に小学生時代の誠翔に合わせてくれないんだッ!俺だってちっちゃい誠翔がに会いたかった!」
そう言うと秀一は膝から崩れ落ちて叫ぶ。
「お前夢の中でもそういう感じなのなんなん」




