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地獄の予算会議

最初に生徒会のスカウトを受けてから数週間が経過した。今でも勧誘こそあるが最初の方に比べたら頻度も少なくなり、また安息の日々を取り戻しつつあった。朝の学校への登校の時間いつもは少し憂鬱な気分になるが、なんだか今日は少しだけ晴れやかな気分だ。


「あっ!誠翔おはよう!」

「おはよう雲雀さん。こんな時間に会うなんて珍しいね」

「最近は生徒会の仕事も慣れてきたけどやっぱりまだ慣れないところが多くてね。それで少し寝不足になっちゃったんだ」

「そうだったのか。早く慣れたいって気持ちも分からなくもないけどそれで体調崩しちゃったら元も子もないよ」

「うん!そこら辺の自分の体調はしっかりと把握してるから安心して!それじゃあ私これから生徒会室に行かなきゃいけないからまた後でね!」


そうして雲雀は走って学校に向かっていった。この間の夜に相談が来た時はどうなるかと少し思ったが、どうやら心配なさそうだ。それにしても朝から仕事をするなんて大変だな。尊敬してしまう。


学校に到着しBクラスの自分の席に着く。暇なので真波とホームルームが始まるまで雑談でもしようとすると自分の席に座っている真波が何だが暗い顔をしている。


「真波おはよう。どうした?そんな暗い顔して」

「おはよう誠翔。実はさ、今日部活動間の予算会議があるんだ。俺も今日それに参加するんだけどそれがもう今から憂鬱でさぁ」

「そうなのか。やっぱ使える予算が多い方が機材ったり色々出来ること増えるもんな」

「いつもの練習の体育館の使用会議とかなら別に問題も起きずにすぐに終わるんだけどさ、もうすぐ大会が始まるんだよ。だからどこの部活も質のいい練習したいから遠征とかでたくさん予算使いたいんだよ。うちの高校スポーツ推薦あるぐらいだからどの部活も強豪でさ、やっぱりいい成績残したいし、俺なんかもそうだけどインターハイとか全国行きたいからこの高校来たみたいな奴もたくさんいるしさ」


いい結果を残したいためよりの質のいい練習をしたいという気持ちもよくわかる。部活とは違うが俺だってテストで良い点数を取りたくてより集中して勉強できる筆記用具買う時あるしな。


「なるほどな、でも会議だろ?確かに言い合いとかには発展するかもしれないけどそこまで憂鬱になる必要あるか?」

「甘いな誠翔。普段冷静な先輩達はこの予算会議となると一気に狂犬になる。俺は何回か参加した会議で一回予算会議の場面に遭遇した。あれは会議なんかじゃない戦争だ。今回の会議は大会が間近に迫っていることもある。今回戦争が起きることは確実だし、何ならもっとひどいことになると思う」


バスケ部期待の1年という事もあり、真波は体力やメンタルは高いだろう。しかしその真波が青ざめるほどの会議か。…絶対に参加したくないな。そんな事を考えていると朝のホームルームが始まる。ホームルームが終わり授業が始まった後でも真波はそこまで恐ろしいのかどこか上の空で授業を受けていた。


授業が終わりお昼になる。俺はお昼になっても元気のない真波に声をかける。


「真波、もうお昼だぞ。考えてても仕方ないし一緒に学食でも行こうぜ」

「あぁ、…そうだな、考えても仕方ないし、俺も大会のために新しい用具は欲しいからな。恐らく少しは話し合いに参加することになるから昼しっかり食って体力つけなきゃな」

「体力つけなきゃいけない話し合いってなんだよ」


そうして俺と真波は学食に向かう。そして各々食べたいものを買い席に座る。


「…それスタミナ丼か?」

「ああ、スタミナつけなきゃな」

「普段の練習よりスタミナつけようとしてないか?」


ご飯を食べ始めたあたりでスマホが揺れる。メッセージが届いたようだ。確認してみると秀一からだった。


「今食堂いるか?いるんだったら今座るところないから相席させてもらいたいんだけど」


相席のお願いだった。俺は真波に事情を伝えると、真波は快く承諾してくれた。そして秀一に今座っている席の場所を伝えると1分もしないうちに俺たちが座っている席にやってきた。


「ありがとう二人とも。助かった」

「もっと早く連絡してくれればよかったのに」

「ちょっと委員会の仕事があってな。あれ真波それスタミナ丼?珍しいもん食ってるじゃん」

「あぁ…今日はちょっと体力使うからさ」

「大会が近いから練習試合とか?」

「いや…そういうわけじゃないんだけどさ」


そうして真波は今日部活動間の予算会議が放課後に有る事、そしてその会議がものすごく熾烈を極める事を説明した。


「は~部活動間の予算会議ね~。なるほどそういう事か」


その話を聞くと秀一は何か納得したような顔をした。そして秀一はその理由を話し始めた。


「いや実はさ、今日委員会の仕事が長引いた理由が雲雀にこれから生徒会室に行かなきゃいけないからって申し訳ないけど仕事を一人でやって欲しいって頼まれたんだよ。別にそれ自体はどうでもよくて快く引き受けたんだけどさ、なんか雲雀、結構生徒会室向かうときなんか緊張してたからさ」


その話を聞き真波がそれと部活動間の体育館の使用会議と何が関係あるのかを聞く。


「その会議って多分生徒会のメンバーの誰かしらが仲介人として出席することになってるでしょ?」

「あぁ、俺が前出席した時は3年の茂木先輩、2年の不知火先輩が出席してた時があったな」

「多分今日の会議、生徒会代表として雲雀が出席することになるんだろうなって。で、実は前教室で雲雀が海香って友達に体育館の使用での会議の時何にも仕事を果たせなかったって落ち込みながら相談してたからさ」

「なるほどな。ここ最近はそこら辺ピリピリしてたし、今日なんかはより一層凄いだろうから今日なんかはもっと大変だろうな」


なるほど、朝雲雀が生徒会室に行かなきゃいけないって言うのはこの事だったのか。…少し心配だがさすがに大丈夫だろう。第一雲雀は俺よりも優秀だし心配するのも少しおこがましい気もする。


「ていうか仲介とか嫌だな~。俺は先輩がほとんどしゃべるからいいけど仲介とか話をまとめたりヒートアップした話し合いとかを一人で収めなきゃいけないんだろ?俺だったら耐えられないかもな」

「流石に生徒会だって今回は大変だって分かってるだろうから雲雀一人だけじゃなくて先輩も一緒に参加するだろ」

「そうだよな。流石に入ったばかりの可愛い後輩一人だけそんな地獄に放り込むなんてことしないよな」


俺はその会話を聞き金城先輩の事を少し思い出す。…あの人なら余裕でやりそうな気もする。俺は全く安心できない。


ご飯を食べ終わり、俺は一足先に教室に戻る。


「お昼ご飯は美味しかったかしら?三葉さん」


最近は聞かなかったが聞きなれた声が耳に入る。


「金城先輩…たまたまってわけじゃないですよね?用件は何ですか?」

「相変わらず話が早くて助かるわ。今日部活動間の予算会議があるの。これに参加したら一気に生徒会の一員としての経験値が付くわ!どう?参加する気はない?」

「さっきまでその地獄の話してましたよ。結構です」

「そう?残念。一般生徒は参加できなくて、部活動の部長とその補佐、生徒会の一員しか出席できないのに。こんな貴重な経験はめったに受けられないわよ?」

「今のところその経験は必要としてませんね。失礼します」

「参加したくなったらいつでも生徒会室に来なさい!参加するには生徒会加入が必須だけど!」


俺は金城先輩の歓迎を無視しながら教室に戻る。

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人間関係を盾に役職を強要するのは社会ではパワハラになるけど、生徒会長は分かってるんだろうか…
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