順位発表
「ただ今の試合は37-38で1年Aクラスの勝利でお互いに礼」
バスケの試合が終わりお互いに礼をする。俺は礼をして秀一のもとに駆け寄る。
「いやぁ最後のハーフコートラインからのシュートは完全に予想外だったよ。負けたよ。やっぱり秀一は凄いな」
「それは俺のセリフだよ。あんだけ点数差があったのにここまで追いつめられるなんてな。最初から誠翔が出場してたら100%俺たちが負けてたよ」
「俺だけの力じゃないよ。クラスの皆の動きが良かったから俺はそのサポートを頑張っただけ。結局チームでの連携では勝ってたかもしれないけど秀一とのマッチアップは抜かれまくってたからな。…じゃあ引き分けってことで」
「…納得いかないけどそれはお互い様だろうからそういう事にしとくか」
「ああ、じゃあ決勝頑張って」
俺は秀一に決勝の激励をしてBクラスの方に向かった。
正直憂鬱だ。一度勝てそうになった場面もあったところから結局負けてしまった。あげて落としてしまったことになるわけだからクラスの皆には少し申し訳ない。
「誠翔君凄いね⁉プロの試合見てたみたいだったよ!」
「ホントホント!あんな絶望的状況からこんなにわくわくさせてくれるなんて!」
「本当にバスケ経験者じゃないの?」
「ていうか最後のシュート何⁉あれたまたまなの⁉」
クラスの皆は温かく迎えてくれて助かった。しかし次第にバスケ以外の事を聞かれ始める。
「誠翔君バスケやってる時何だか性格違ったね?いつもはクールって感じだけど今はクールってよりも元気はつらつって感じだね。そっちの方が似合ってるよ!」
「分かる分かる!俺も一緒にプレイしてて本当に頼りになってよ!」
「普段のクールな感じもいいけどこういう元気はつらつな感じもいいかも…てか絶対そっちの方が良いよ!」
クラスの皆がそのことについて言及し始める。どうしよう、秀一との約束を果たすのとバスケに集中しすぎて後の事を考えていなかった。…まぁ時間が解決してくれるだろ。
俺はすぐにその場から離れたかったため、立ち上がりその場から離れる。
「俺は席外すから!じゃあこれからすぐ3位決定戦始まるだろ?頑張って!」
「え~なんだよ、3位決定戦参加してくれないのかよ!」
「みんなの実力があれば3位になれるよ!俺はちょっと疲れちゃった。何より、化け物と戦ってたからな」
クラスの皆は何としても俺を引き留めようとしていたが、俺はそそくさとその場から離れる。
足早に体育館から出ようとすると聞きなれた声から呼び止められる。
「誠翔、相変わらずバスケ上手だね!最初から出てたら100%うちのクラスが負けてたよ」
「雲雀か。いやー確かにそうかもしれないけどそう簡単には行かないよ!もし最初から出てたら秀一だってそれ用の立ち回りをしてるはずだよ!」
「そうかもね~。でもどっちにしても完全敗北する秀一君ていう珍しいものが見れたし、何よりも昔と同じ誠翔が見れてよかったよ!…本当…カッコよかったよ」
「そうか?面と向かってそんなこと言われると照れるな。この後バレーの試合残ってるんでしょ?まあ頑張って。陰ながら応援してるからさ!」
「え?もちろん応援来てくれるよね?」
「いや俺は少し教室に戻ー」
「く・る・よ・ね・?」
「…わかったわかった行く行く、応援させてもらうよ」
「本当!やった~!」
「どっちにしろ水分補給するから一回教室帰るよ。じゃあ雲雀、また後で」
そうして俺は水分補給をするために教室に戻る。
「今だけかもしれないけど、前みたいな喋り方で私の事…雲雀って呼んでくれたね…よし!頑張っちゃうぞ!…にしてもカッコよかったぁ。私変な顔してなかったかな!てか汗臭かったかも…ていうか昔の誠翔を見れて嬉しかったけどただでさえカッコよくてモテてた誠翔がもっとモテちゃう!どうしよ~!」
様々な考えが頭の中だけで処理しきれず口から出てくるが、誠翔の耳には入らない。
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「これで天稟学園高等学校の球技大会を終了します。それではこれより閉会式を開催します」
すべての競技が終わり、体育館で閉会式が始まる。閉会式ではこの三日間クラス一丸となって協力し合っていてよかった、この後にある行事などは今回以上に盛り上がってほしいなど色々言われている。
しかしこんな前座は正直みんなどうでもいいのだろう。
「それではこれより総合順位の発表に参ります!」
来た。周りも少しざわざわし始める。
「それではこれより上位3チームを発表します。発表されたチームの各クラス委員長は前に出てきてください。それでは、第3位…3年Aクラス!」
周りからは歓声と同時に少しのどよめきが起こる。確かに優勝候補がいきなり潰れたのでそれも納得だ。
「第2位…1年Aクラス!」
この発表と共に1Aの方からは歓声が聞こえる。1年生の時点で2位を取れているのだ。この盛り上がりも納得だ。秀一と雲雀の活躍が効いたのだろう。しかしその活躍があったうえで2位と言うのが団体で優勝するのは難しいという事が物語っている。
「そして栄えある第一位は!…3年Cクラスです!」
この発表と同時に3年Cクラスの方から歓声が聞こえた。優勝したのだからそれも当然だ。
各クラスの代表が前のステージに登壇する。その中には秀一の姿もある。賞状をもらっており2位ではあるが、とてもうれしそうだった。
「それではこれで球技大会、閉会式を終わります。皆さん数日間お疲れ様でした」
こうして数日間に及ぶ球技大会の幕が閉じられた。そのまま教室に戻り、すぐに帰りのホームルームが始まる。ホームルームが始まると紬先生がこの数日間よく頑張ったとほめ始める。そしてホームルームが終わると同時に頑張ったで賞という事でアイスを配り始める。疲れた体に良くしみる。
アイスも食べ終わり帰り支度を済ませ帰ろうとするとクラスの中から誰がし始めたのかは分からないが球技大会のお疲れ様会をしようという声が上がり始める。
「お疲れ様会か、今日は部活もないし球技大会の片付けももう終わってるし参加するのも良いな、誠翔は参加する?」
「勿論参加するよね?やっぱり主役が来なきゃね~」
真波と縁が俺の近くに寄ってきて参加するかどうかを聞き始める。
「う~んどうしよっかな~。まぁ今日は何にもないし参加するか」
「さっすが!そう来なくちゃ!」
そして俺はクラスの皆について行く。ついた先はボウリング場だった。
普段ボウリングはやらないため少しおぼつかないところはあったが、みんなと楽しく遊ぶことが出来た。この球技大会でクラスの皆とまた一段と仲良くなれた気がする。
ボウリングで自分の番を待っていると隣に座っていた真波が何やら真剣そうな顔で俺に話しかけてくる。
「なぁ誠翔、やっぱりバスケ部入ってくれよ。お前が入ってくれればインターハイやウィンターカップ出場どころか優勝すら狙える。頼む!」
「買い被りすぎだって。俺にそこまでの能力はないよ。あと今日の最後のブザービートとかだってたまたま運が良かっただけであんなプレー滅多にできるもんじゃないよ」
「俺が言ってるのはあのブザービートじゃなくてボール運びだったり、リーダーシップだったり、他にも―――」
元々バスケは得意な方だったので球技大会ではそこそこ活躍できたが経験者に混じればそこまででもない。そう断ろうとすると他の人の声が入る。
「い~や、誠翔は陸上部に入るべきだよ」
「何でそうなるんだよ。バスケと陸上関係ないだろ」
「今日の試合だけで誠翔には陸上の才能があるってすぐ分かっちゃうよ。一つ目にあの足の速さ。強豪校でもあの足はなかなかないね。次に体力の多さ。あれだけ走ってたはずなのに試合が終わっても全然息切れしてないし長距離、短距離どっちでも行けるよ。さらにあのボールの投げ方。あれだけの力があるならやり投げでも砲丸投げでも行けるよ!ちょっと訓練すればすぐに成績残せるよ!」
「いや!バスケの方がいい!」
「い~や陸上だね!」
「「なんだと~!」」
何だか勝手に二人でけんかを始めてしまった。俺はその二人の喧嘩を横目にドリンクを飲む。
「部活云々はともかく誠翔君やっぱりあんな才能があるのに部活入ってないのは勿体ないな」
今日バスケで一緒に戦ったメンバーの一人が声をかけてくる。
「そう言ってくれるのはありがたいけどやっぱり俺を買い被りすぎだよ」
「そんな事ないって。あと一番思うのはリーダーシップかな。バスケをやってた時の誠翔君はいつもと違ってすごく元気はつらつでさ、この人について行けば何とかなるって思わせてくれたんだ。実際あんなぼこぼこにされてたのにあんな接戦まで持ち込めたしね」
それも買い被りすぎだと言おうとしたところで他のクラスメイトの皆も
「そうだよ!ほんとにカッコよかった!」
「私クールな誠翔君もいいけどあの元気な誠翔君の方が良いと思うよ!」
「本当にカッコよかった!」
などといろいろ言ってくれる。ここまで褒められると少しこそばゆい気持ちになってしまう。
その後もボウリングを楽しみをれは皆と別れ帰路についた。帰路についている途中今日みんなに褒めてもらったことを思い出し、少しだけ小学生時代の事を連想し懐かしい気持ちになった。