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ライバル

ああ…そうだ、この目だ。俺はずっとこの誰もが惹かれるような熱意を持った目をしていてみんながついて行きたくなるような明るさを持った誠翔と勝負することを心待ちにしていたんだ。やっとまた戦える。


後半開始のホイッスルと共にジャンプボールが行われる。


ボールはBクラスの生徒が勝ち取りボール回しをする。そして誠翔の手元に渡る。俺はいつも誠翔と1on1をするときと同様にディフェンスをする。


「行くぞ、秀一!」

「ああ。来い誠翔!」


誠翔はいつもの1on1の時とは比較にならないキレのあるオフェンスを仕掛ける。俺はそのオフェンスを予測やいつもの誠翔のプレーから何とか予測し止めることに成功する。


しかしすでに誠翔の手元にはボールがない。


その事実に気が付き周囲を確認すると既に他の選手にボールがパスされており、点を決められる。


「流石だな」

「お前が前半暴れたせいで俺はノンストップで取り続けなきゃいけないからな。どうせ後半も暴れるだろうし」


今度は俺がボールを受け取ると。俺は今度は誠翔を抜こうとする。いつもの何倍も堅い守り。しかし、その分俺も燃えいつも以上の力を出し、点を決める。


「相変わらずオフェンスのキレヤベ~な」

「本気の誠翔は久しぶりだからな。こっちも本気で行かせてもらう」


そう、本当に久しぶりだ。本気を出してくれる誠翔と勝負することは。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

俺と誠翔は中学校からの仲だ。別に出会いとかは運命的な物でも何でもない。ただペンを忘れた俺に親切にもペンを貸してくれた人がいた。それが誠翔だっただけだ。


誠翔とは気が合い、一緒に遊べて楽しかった。


中学生活が始まり一カ月が経ったあたりで誠翔と勉強を始めたあたりで勉強について話した。誠翔は頭がいいのか。それは休憩の時に何となくただ世間話程度に始めた話だったと思う。


「普段から予習復習は怠ってないし、誰にも負けないよ。負けられない理由もあるしね」


正直誠翔が頭が良いのは知っていた。それは普段の授業態度からひしひしと伝わってきた。


誰にも負けない。自慢じゃないが、俺も小学校の時は比較的出来が良かった。しかしそのせいで競う前に相手が降参してしまったり、戦いを放棄するという事が多かった。だから誰にも負けない、その言葉は俺に行ったわけではないだろうがその言葉が嬉しかった。だから俺は誠翔と競うために答えた。


「そうなのか。俺もそこそこ自信あるし負けないぞ!」


テスト期間が始まりテストが終わる。テストなんて別にいつもの授業と変わらない。そう思っていたが、競うという行為をするだけでこうも楽しいものだと思った。数日間かけて行われたはずなのにあっという間にテスト期間が終わった。


成績表が返ってくる。


 氏名 最上秀一


 学年順位 1位


やった!1位だ!


俺は成績表が渡るとすぐに誠翔のもとに行く。


「誠翔順位何位だった?なんと俺は聞いて驚け!1位だったぞ!」


そこでものすごく悔しそうな誠翔の顔を見て俺は気付く。1位を狙っていたはずなのに1位と自慢されたら悔しいに決まっている。俺はなんて失礼なことをしたんだろう。


俺は数秒前の自分を後悔しながら誠翔の言葉を待つ。


「おめでとう。俺は2位だった。次は負けない」


誠翔は称賛してくれた。しかしそれは心からの称賛ではないだろう。しかし俺は嬉しかった。誠翔は次は負けないと言ってくれた。この次は負けないという言葉は本気の言葉だと感じ取れた。それは今までの同級生は一度負けたりするとすぐに諦めてしまう同級生とは違い、俺に本気で競ってくれた人が現れた証拠だったからだ。


いや、何よりもうれしかったのは俺をちゃんと人として扱ってくれたことだ。


人と扱ってくれたと言うと何か俺が化け物みたいな表現になるがそうではない。俺は他の人よりもできがよかったせいで、秀一だったら一人でも大丈夫、困ったら秀一にお願いしよう、相手が秀一だったら何をしても無駄だ。俺はそう言い続けられてきた。


しかし誠翔は他の皆とは違って、何かあったらまるで当たり前かのように手伝ってくれるし、相手が俺でどんな勝負をするとしても、謙遜こそするが、実際に勝負を目の前にすると最初から最後まで勝負を投げ出して最初から負ける気で勝負するという事はなかった。


それから誠翔とは勉強やバスケで勝負をした。


勝負は多くの割合で俺が勝利してきた。勝つという事は正直慣れていた。しかし俺は誠翔に勝つたびに嬉しかった。誠翔と勝負する時は俺は本気で取り組まなければ負けてしまう。何より本気で取り組んでもたまに敗北する。そんな相手が初めて現れたからだ。ずっと競い合える相手、俺にとってライバルのような存在が現れて本当にうれしかったし楽しかった。


しかし、そんな楽しい時間もあまり長くは続かなかった。誠翔は真剣に勝負してくるから俺も真剣に勝負する。しかし時間が経つにつれて本気で勝ちにこそ来るが、諦めてしまう同級生の目に似てきたからだった。


俺はショックこそ受けたが、それは目だけで、本気に勝ちに来てはくれる。


ある日、体育の時間に誠翔とバスケのチーム戦をした。1on1以外で初めての戦いで楽しみにしていたことを覚えている。そして俺はその日自分にとって衝撃的な一日になった。


チームメンバーに的確にパスをしたりアシストをする。そして決めるときはしっかりと決める。何よりいつもの1on1での動きとレベルが違う。そんな誠翔と勝負したからだ。正直全く手も足も出ず、圧倒された。俺は本能的にこいつには勝てないと思った。誠翔にいつもより動きが悪かったけど具合でも悪いのかと言われる始末だ。


そして俺は気付いた。誠翔が本当に100%力を出せるのは仲間と協力している時や人助けをするときなど、自分だけでなく他の人と活動をしている時であると。


思い返してみればそうだ。テスト勉強の時だって普段一人で解くには難しい問題も誠翔と一緒に考えると簡単に解けるようになる。悩みを持っている時だれも気付かないような小さな仕草も見逃さずに声をかけ相談に乗る。


俺はシングルスの試合やテストなど自分一人だけの能力特化の力だ。対して誠翔の能力は能力自体は俺と遜色ない力があるが何故か発揮できない。しかし人と協力することでその力を120%以上出せみんなの動きも良くするという人と協力する事によって発揮される力だった。


バスケだけじゃない。サッカーでもバレーでも、俺が敵でも味方でもその力が発揮された。


社会では一人だけの力では限界がある、そのため人と協力することが大切だ。実際俺ワンマンチームは誠翔の協力したチームにぼこぼこにされたからだ。俺はその能力に特化している誠翔を本当に尊敬した。


思っていた通り、いやそれ以上に誠翔は凄い。しかも俺の何倍以上も。そのことを再確認出来て俺は嬉しかった。


8月下旬、俺達のクラスはもうすぐ訪れる9月3日、誠翔のサプライズ誕生日会を計画していた。提案したのは俺だが、別に提案しなくてもそのうち誰かが提案してただろう。


理由はいつもみんなに協力しており、いつもみんなが感謝している。男女問わず俺含めみんなが誠翔の事が好きだった。更にルックスもあり得ないほど良いため、誠翔は気付いていないが学校中の多くの女子が誠翔の彼女というポジションを狙っているぐらいだ。


このクラスのリーダーと言っても過言ではない。なんなら誠翔以外ありえなかった。


ある日焦ったようにクラスの女子が俺に話しかけてきた。


「あのさ秀一君!今さ、誠翔君の誕生日会の飾りつけどうしようかって考えてたら、どうしたの?って誠翔君に話しかけられてさ、急いで秀一君に相談するからって伝えたんだけど何か違和感持たれてないかな?大丈夫かな?」

「大丈夫。絶対バレてないよ。誠翔は人の事はどんな些細な事でも気付くけど自分の事となるとあり得ないほど鈍くて鈍感だからそんな些細な事じゃ気付かないよ」

「そうかな?なら良かった。これからは考えるときは誠翔君のいないところで考えるよ」


誠翔のサプライズ誕生日会を絶対に成功させたいそんな気持ちがとてもよく伝わってくる。これだけでどれだけ誠翔がみんなから好かれているかが伝わってくる。


みんなの協力もあり誠翔のサプライズ誕生日会は成功した。誠翔はその誕生日会を嬉しそうに過ごしてくれた。しかし、その日を境に誠翔は今までの活発な性格とは真逆の静かな性格になって行った。

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ここから熱くなる… チーム競技の方が強いのか
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