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ハットトリック

 朝、いつも通りの時間に起床し、いつも通りの準備をし、いつも通りの時間にマンションを出る。


 ただいつも通りじゃいないところは、俺を含めて周りにいる天稟学園の生徒が皆制服ではなく学校指定のジャージを着て登校していることだ。


 今日から数日は朝から帰宅までずっと球技大会が開催されるため、授業が無く、ジャージで登校するように伝達されているからだ。


 制服と違い、動きやすいため正直見た目と言う点を除けば毎日ジャージで登校したいくらいだ。いつも背負っているリュックの中身も今回は教材ではなく、飲み物やタオル、塩分補給が出来るお菓子などが入っている。


 俺は学校に着き、リュックを自分の教室の机に置くと最後の球技大会の準備のためにすぐに体育館に向かう。


 体育館にいると既に何人か人がおり、その中には雲雀や秀一もいた。二人と談笑しながら先生が到着するまで時間をつぶした。


「皆さん、それでは最後の準備を始めます、ただ準備と言っても最後の確認です。これから配布する資料を確認してください」


 そうして俺たちは資料を受け取る。資料には今日から数日間のタイムテーブルやトーナメント表、また各スポーツの詳細なルール説明など様々な事が書いてあった。


「球技大会のだいたいの時間割はこの資料を確認すれば大丈夫です。また、想定できる範囲の何か緊急事態が起きた場合などの場合の対処法も書いております。そして最後の方のページには体育委員会と学年委員会に向けての項目となっております。何か分からないことがあったらこちらを確認してください。それでも対処できない場合は私達に連絡してください。それでは朝のホームルームに間に合うように教室に戻ってください。それでは今日から数日間よろしくお願いします」


 そして俺たちは解散した。時間を確認すると意外と朝のホームルームまで時間がなく、俺たちは駆け足で教室に戻った。


 教室について数分程待つと紬先生が教室に入ってきて朝のホームルームが始まった。


「今日から球技大会ですね!みんな優勝目指して頑張ってね~!優勝したクラスには景品もあるから頑張ってね~!」


 その後は球技大会の注意事項などを説明されて朝のホームルームが終了する。朝は急いでてあまり気に留めていなかったが、やはりいつもの憂鬱な授業日とは違い、球技大会と言うだけあってクラスの雰囲気が活気にあふれている。


 縁が先ほどもらった冊子を持ち、黒板の前に移動する。


「みんな~今日これから一番最初に女子バレーがあるから女子バレーに出る人は行くよ~」


 皆が縁の話を聞き女子バレーに参加する人だけではなく、クラスみんなで体育館に移動する。体育館で女子バレー代表の女子がアップを暫くアップしながら待っていると放送がかかる。


「それではこれより女子バレーの第一試合を始めます。各自準備が終了次第開始してください」


 そうして女子バレーが始まる。


 参加選手が並ぶと恐らく今回審判をする女子バレー部所属の審判がルール説明を始める。


「それではこれからルール説明を始めます。試合は全3セットで、先に2セット先取したチームの勝利です。1セットは先に15点を取ったチームが獲得します。仮にお互いが14点同士になった場合は先に相手チームから2点差つけたチームが獲得します」


 相手は2年Dクラスだった。実力としてはお互いの実力は拮抗しており、とても見ごたえのある試合だ。各クラスで応援の試合もあり、点の取り合いで一喜一憂していてクラスがまとまっていると感じる。


 一セット目は相手チーム、二セット目はこっちのクラスがセットを獲得する。そして最終セットが始まった。


 お互いリードを許さず、点を取っては取られ、取られては取り返すという試合が続いていた。点数も20―20まで続いていた。勝負は唐突に決まった。相手チームが点数を取り、相手チームのサーブ。そのサーブしたボールがネットに引っ掛かり、ボールの勢いが殺されこぼれるように床に落ちた。


 これは仕方ない、経験者でもなければとることは難しい。


 負けたからと言って残念ムードに入ることはなかった。むしろ試合を終えたクラスメイトにみんなはよく頑張ったや楽しかったなどポジティブな声ばかりが上がっていた。


 自分たちのクラスの試合が終わったため、次の自分たちのクラスの時間が始まるまでみんなちりじりに分かれる。他のクラスの試合を見に行く人もいれば、教室に帰っていくものもいる。


 俺も教室に戻ろうとしたところで秀一とばったり会う。


「よう誠翔、そっちから来たってことは女子バレー見て来たんだよな?どうだった?」

「良いところまではいったんだけど惜しくも負けちゃった。でも面白かったよ。秀一もこれから何かに出るの?」

「俺はそろそろサッカーの時間だからサッカー場にな。応援しに来てくれよ?」

「まぁ何もないし良いぞ」


 そうして俺たちは生徒玄関から外靴に履き替えサッカー場に向かう。…凄い、最近少し忘れていたが隣にいるこの男は完璧人間であり超イケメンだった。サッカー場の1年Aクラス側の応援席は様々なクラスの女子で埋められている。中には1年生だけではなく先輩もいるようだ。


「誠翔応援よろしく、じゃあちょっと行ってくるわ」


 そうして秀一はアップに向かう。アップだけでも他とは一線を画している技術が披露されている。何かするたびに女子の黄色い悲鳴が聞こえる。


「いや~秀一君相変わらずものすごい人気だね~」

「雲雀さん。わざわざ外熱いってのにサッカー見に来たんだ」

「勿論!Aクラスの試合だしね!精一杯応援しなくちゃ!」

「どうせ秀一が出るからAクラスが勝つぞ?」

「そういう問題じゃないよ!こういうのは応援することが大事なんだよ!」

「まあ確かにそうかもな」


 そんな事を話していると試合が始まる。


 サッカーは前半15分、後半15分、休憩10分合わせて40分で行われる。


 試合は一方的だった。開始数分で秀一が得点を決め、その数分後に複数人にも囲まれながらも追加得点を挙げる。休憩中も一切疲れた様子は無く、後半ではもっとたくさんの人数に囲まれるも、空いた場所にボールをパスし味方をサポート、そして試合終了まじか(まぢか/間近)に最後の追加点を自分自身で決めハットトリックを達成する。


 試合を終えたばかりの秀一が俺と雲雀の方によって来る。30分走りまくり本来滝のような汗をかいていてもおかしくないはずなのにさわやかな汗をかいている。近くに来ても一切不快感がない。不思議だ。


「いや~楽しかった」

「お前あんだけ動いた後なのに余裕そうだな」

「秀一君凄かったよ~!」

「ありがと!この後すぐバスケもあるから体をあっためられたよ。誠翔はいつ試合があるの?」

「残念ながら俺もこの後すぐに卓球が始まるからバスケの応援はいけない」

「え~まじかよ!応援行きたかった~!」

「だからくんなって言ってるだろ」

「えっ⁉誠翔この後の卓球に参加するの?」

「え?うん。スタメンは卓球だけだから楽で助かるよ」

「ふ~ん…そっか~」


 なんだその意味ありげそうな言い草は


「俺教室に行ってタオルと飲み物持っていくからそろそろ行かなきゃ。じゃあ秀一、どうせ余裕だろうけどバスケ頑張れよ」


 そうして俺はサッカー場を後にし教室に戻る。教室の俺のバック(バッグ)からタオルと飲み物を回収し卓球の会場である第二体育館に向かう。


 第二体育館に到着するとやけに人が多い。応援にしては不自然なほどに男女関係なく人が多い。


 俺はその中をかいくぐり開けた場所に移動する。俺はそこで予想外の人を発見する。


「…雲雀さん…何でここに居るの?」


 女性版秀一である雲雀がそこにいる。男子が多く集まるのも納得だ。


「誠翔がさっきこれから試合だって言うから!もう言ってくれれば応援に駆け付けるのに!水臭いな!」


 確かに雲雀には応援には来ないで欲しい旨を伝えていなかったため応援に来たことは仕方ない。俺のミスだ。しかし疑問が残る。


「これからAクラスの男子バスケ始まるんじゃなかったっけ?」

「どうせ秀一君が出るからAクラスが勝つもん」

「さっきそういう問題じゃない、こういうのは応援することが大事って言ってなかったか?」

「…それはそれ!これはこれ!」


 一瞬謎の間があったが今回はこの事態を予想していなかった俺に原因があるため仕方がない。


 俺は雲雀と会話したことにより、少し周りから注目された状態でアップに向かう。


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