成績の結果と種目決め
「それじゃあこれから成績表を配るから出席番号の順番に名前を呼ぶからみんな取りに来てね~」
テストが終了し数日後、成績表が配られ始める。いつもは緊張しないが、今回は縁に勉強を教えた身として、そして友達二人の赤点回避の件もある事から少しドキドキしている。
「次三葉誠翔君」
名前が呼ばれたため自分の成績表を取りに行く。
「大変良く頑張りました!ただ、簡単なケアレスミスでほとんどの教科で満点を逃してるから勿体ないから気を付けてね」
「はい、ありがとうございます」
先生から成績表を受け取る。順位は1位だった。しかし教科別の点数は見事に99点や98点で100点が一つもない。この点数はいつもの事なので今は順位が1位だという事を喜んでおこう。
しかし1位か…1位という事はBクラスのからEクラスの中で一番Aクラスに近かったという事だ。悔やんでも仕方がないが、もし入試で本調子を出せていたらAクラスに入れていたかもしれないな。
そんな仕方がない事を考えていると成績表を受け取った真波が席に帰ってくる。
「真波点数どうだった?赤点は大丈夫だったか?」
今回の心配事1号だ。あれだけ頑張って勉強していたし、教えたのが秀一なのだからほとんど大丈夫だろうがやはり少し心配してしまう。
「おう!赤点が一つも無かった!しかもあの心配だった英語が平均点を超えてるんだよ!」
良かった。どうやら真波は赤点がなかったらしい。成績表を見せてもらうと心配していた英語の平均53点に対して真波の点数は56点だった。赤点を心配していた教科が平均点を超える。これはすごい進歩だろう。
一安心していると今回の心配事2号の縁が俺たちのそばにやってくる。しかしその顔は喜んでいるように見えなければ悲しんでいるようにも見えないよく分からない顔だった。点数がどうだったかは分からないが何かあったことは明白だった。どうやって声をかけようかと考えていると真波が口火を切る。
「支倉、お前テストの点数どうだったんだ?喜んでるようにも悲しんでるようにも見えないんだけど」
「点数は悪くなかった」
「え?じゃあ何でそんなに喜んでないんだ?悪くなかったってことは赤点がなかったって事だろ?良かったじゃん」
真波の言うとおりだ。仮に縁の目標点数だった理系科目の平均点を超すことが出来ていなくても赤点が無ければ部活には参加できるのだから喜んでいる雰囲気を出すはずだ。
「その点数が良すぎるのよ。今回の数学ⅠとかA、化学基礎とかって全体的に平均が50とかだったけどあたしの点数が70点とかで…もしかしたら採点ミスなんじゃないかなって…」
「赤点確定状態からその点数か…確かにそう思うのもおかしくないな。一応先生に聞いてみたらどうだ?」
「うん、そうしてみる」
縁はすぐに先生に聞きに行き、1分ほどしたところで帰って来た。しかしその顔は先ほどとは違いものすごく明るい。
「確認してもらったら採点ミスとかもなく本当にあたしこの点数で間違いないみたい!」
どうやら間違いなく高得点を取り赤点を回避できたようだ。
「よかった、教えてた身としてこれで赤点とか取ってたらどうしようって心配だったんだよ。何とかいい点数をとるサポートが出来たようで何よりだ」
「誠翔本当にありがと!万年理系科目赤点の私がしかもスポーツ推薦の私がここまで良い点数を取れたなんて誠翔のおかげだよ!もう神様みたい」
「確かに教えたけど、ここまで良い点数を取れたのは何よりも縁自身が努力したからだよ」
みんなでテストの成功を分かち合っていると先生から声がかかる。
「学年委員の二人ちょっと来て~」
俺と縁は先生のもとに向かい話を聞く。
「テストの成績がわたって早々で申し訳ないのだけど、もうすぐ球技大会が始まるじゃない?これからその球技大会の参加するスポーツを分けて欲しくて。まあ難しいことはないからこの冊子に従って進めてくれる?」
そうして縁は先生から冊子を受け取る。冊子を確認すると球技大会のタイムテーブルや空のトーナメント表、そして行われる種目が載ってある。種目としてはソフトボール、バスケ、サッカー、バレー、卓球がある。
「はーいみんな聞いて。これから球技大会の説明と参加したい種目聞くから参加したい種目があったら手挙げてね」
そして縁は最初に説明を始める。
「まず男子と女子に分かれるから男女混合競技はないから、それと人数的に一人二種目以上は参加して、必ず一種目以上はレギュラーメンバーとして参加するようにしてね。あと入部してる部活と同じ種目には参加できないから。それじゃあこれから種目とルールを説明していくから何に参加したいか決めといてね」
縁が説明していると同時に教室内からはやるからには勝ちたいや何に参加するかなど様々な話声が聞こえてくる。俺は卓球に参加したい。何故なら一番目立たないからだ。プロ卓球選手同士の試合はものすごいく激しく打ち合いすごく見ごたえがある。しかし初心者同士の卓球となるとものすごくゆっくりとしたラリーであまり見ごたえがなくサッカーやバレーなど初心者同士でもある程度見ごたえのある試合になるため、観客もそちらに多くいく。
「それじゃあこれから一つずつ聞いていくからやりたい種目が来たら手を挙げてね」
そして縁が聞いていく。やはり予想通り他の球技は人気だが、女子には人気があるが男子には卓球の人気がなかった。俺は問題なく卓球に参加することが出来た。もう一つはまぁどうせ控えとしての参加だし空いてるやつに適当に入ろう。そう縁に伝え俺は自分の黒板の板書に集中する。
瞬間悪寒がした。本能がバスケだけは参加するなと警告している。
もう一種目はバスケ以外にしようと決めたときにはもう遅かった。
「誠翔、もう空いてるのバスケしかないからバスケで良いよね?」
気付いたころにはもう手遅れだった。正体は分からないが俺は何かがあるであろうバスケのベンチ入りが確定してしまっていた。
球技大会の種目決めも決まり、自分の席に戻る。まさか何でもいいと思っていた種目決めでこんな気持ちになるとは。こういう詰めが甘いところがテストで100点を取れない原因だろう。
「誠翔がバスケに参加するならBクラスの上位入賞はほぼ間違いないな」
「いや、俺はバスケにベンチ入りこそ決定したがバスケに出るつもりは毛頭ない。何故なら俺は卓球だけ出れば問題ないからだ」
「はぁ~?そんなこと言うなよ、せっかくなら参加してくれよ。」
「どうしても参加してくれって言うならもう逆転は不可能だってなった時にだけ参加するよ」
真波は隣でまだ何か言っているが俺は自分の事でいっぱいいっぱいなので聞き流す。そしてそんな気持ちを持ったまま学校を終え帰宅する。
「誠翔テスト何点で何位だった?俺は全部満点で1位だったぞ!」
「だろうな。予想通り過ぎて何も驚かねぇ」
「それで?誠翔はどうだったんだ?」
「いつも通りだよ。100点をケアレスミスで逃して99点とか98点。でもお前がいないおかげで1位」
「こっちも予想通りだな。そういえば球技大会参加種目何にした?」
「俺はバスケとサッカー」
「俺は卓球とバスケ」
予想通りバスケを選択している。しかし謎なのが秀一がバスケに参加することは必然であったため悪寒の正体ではないと断言できる。
「マジかよ!久しぶりにチーム戦のバスケできるな!あと卓球の時応援しに行くから誠翔もサッカーの時応援に来いよ!」
「サッカーの応援の時は喜んでいくが卓球の応援には来るな。俺が卓球を選んだ意味がなくなる。それと俺バスケは控えだから多分出ないぞ」
「え~⁉なんでだよ~、何が何でも参加しろよ!」
隣で秀一がずっとバスケに参加しろと言っているが軽く受け流し、俺は頭の中で悪寒の原因を探す。しかし答えは出てこなかった。