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暗い打ち上げ

「遅れてごめんね~、ちょっとみんなのお誘いを断ってたら遅れちゃった」

「だから秀一君を信じてさっさと一緒に行こって言ったのに~」

「悪いな何だかせっかくのAクラスだけの集まりっぽいのに場違いなBクラスの俺が混ざっちゃって」

「何言ってんのまっこちゃん、AとかBとかそんなクラスとか関係ないでしょ。こういうのは友達と来るからいいんじゃん。場違いで言ったら今ここの顔面偏差値がこの4人の中で明らかに低い私でしょ。あ~勘違いしないでね、別に私自身私を卑下してるわけじゃないから。あくまでこの中でって話だから」


自分自身を卑下してはいけないという波風の励ましだろう。そして俺は中学時代から交友関係を築く事が苦手になっていたためさらりと友達と言ってくれたことが素直にうれしい。


「ありがとう波風、確かに友達なんだしそんな事気にする事ないよな」

「そうそう!…あとさ、その波風って苗字で読むのもうやめない?私たち友達なんだから海香で良いよ?」

「そうか?じゃあ海香さん」

「海香さんじゃなくて海香」


別に名前を呼ぶだけだがここまで矯正されると何かこっぱずかしいところがある。


「うっ、海香」

「はい花丸100点!」

「はいはい!なら私も雲雀で良いよ!ていうか呼んで呼んで!」


ここで雲雀呼びに戻すという手もある。しかし用心しすぎな気もするが、最悪名前呼びをきっかけに俺の事を思い出すという可能性も否定できない。


「いや~、雲雀さんは雲雀さんって感じがするな、なんとなく」

「え~何で~?」


少しごねられ心苦しいがここは仕方がない。俺は雲雀の事をなだめながら喫茶店のマスターにアイスコーヒーとパフェを注文する。前にここのパフェを食べた時から次来た時は必ず注文しようと決めていたのだ。前回はスイーツの乗ったパフェを食べたので、今回はチョコレートのパフェを注文した。


配膳されたパフェを一口頬張る。甘いホイップクリームとアイス、そしてチョコレートが絡まり前回とはまた違うがとてもおいしい。


しかし、先ほどから一つ気がかりなことがある。それは秀一がずっと静かな事だ。しかし怒っていたり、機嫌の悪いような雰囲気はみじんも感じられない。考えていても仕方ないしアホらしい。とっとと聞こう。


「なあ秀一、お前さっきから黙ってるけどなんかあったのか?腹でも痛いのか?もしくは具合が悪いとか?」

「具合が悪い?その逆だよ誠翔、俺は今すこぶる調子がいいんだよ」

「なんで?」

「それはな誠翔、またテストでお前と競えるからだよ!入試の時に誠翔に何があったかは知らないけどAクラスにいないってことは本来の誠翔ではありえない点数を取ったって事だろ?だったら誠翔と真剣に競えるのは数カ月ぶりってことになる!」

「別に競うって言ったっていっつもお前満点だから意味ないだろ」

「満点なら満点同士で別にいいんだよ、てかだからいいんだよ。問題はお前いっつも小学生でもやらないようなケアレスミスして満点逃してるだろ!」

「そのミスも実力のうちだろ」


秀一のこだわりはよく分からないが機嫌が悪くないのなら良かった。…あれ?


俺はそこで一つの謎が頭に浮かぶ。


「なあ秀一、一つ聞いても良いか?」

「どうした?」

「Aクラスとそれ以外のクラスってテストの内容違うよな?確かAクラスは進学クラスだから他のクラスよりも難しいテストをやることになってるって担任の先生から聞いた記憶があるんだけど、それでどうやって競うんだ?仮に俺と秀一どっちも満点だとしてもそれって競たことになるのか?」


それを聞いて秀一は目を点にする。


「二人とも、今の話本当か?」

「うん、先生が朝のホームルームで言ってたはずだよ」

「言ってた言ってた」

「嘘…だろ…?聞いてなかった。じゃあ俺は高校のテストでは誠翔と競えないって事か?」

「そうなるな。あ、でも模試では同じテスト受けることになるから競えるぞ」


しかし秀一の耳には届いていないのか先ほどのように黙ってしまった。しかし今度は誰から見ても一目で落ち込んでいるから黙っていると分かる。しかしあれだ、いつも元気なやつが落ち込んでいると何だか周りが余計に静かに感じる。ここはひとつ秀一の元気が出そうな言葉を賭けよう。


「秀一、あれだ、今回のテスト俺と秀一と真波と縁で俺んちで勉強会しただろ。その時俺は縁に勉強教えて秀一は真波に勉強教えただろ?それで競うってのはどうだ?」

「それも競うのに入れてたんだよ…」

「そうか…じゃあ…どうしようもないな」


上手く秀一の元気を出そうと頑張ったが不発に終わってしまった。こうなったら仕方ないが時間が解決するのを待つしかない。


「ねぇねぇまこっちゃん」

「なんだ、どうした海香?」

「こっちも元気なくなっちゃったんだけど」


そう言われた方に視線を向ける。そこには秀一に引けを取らないほど何故か落ち込んでる雲雀の姿があった。


「雲雀さんどうした?さっきまでおいしそうにスイーツ食ってたじゃん。なんかあったのか?」

「誠翔の家で勉強会したって…本当?」

「ああしたよ、クラスの男子と女子に勉強教えてって頼まれて。まあ結局サプライズで現れた秀一が男子に勉強教えたから俺は女子にしか勉強教えなかったけど。だからこれをさっき言った競い合いにしようって思ったんだけど」

「…るい」

「え?」

「ズルい!私だって誠翔の家行きたかった!」

「俺の家行きたかったって、別に俺の家なんて遊べるものテレビゲームぐらいだしこの間だってただ勉強を一緒にしただけだぞ?」

「それが良いんじゃん!」


大きな声で否定したと思いきやまた秀一と同じように黙ってしまった。何だろう、悪いことはしていないはずなのにものすごくいたたまれない気持ちになってしまう。


喫茶店を出た後カラオケにも来たが二人とも歌いこそするが、テストから解放された後に歌うような元気な歌と言うよりはバラードや失恋ソングなんかばっかりを歌い始める。俺と海香はポップな曲を歌うが、二人が歌に気持ちを込めすぎており、逆にこっちが場違いな気もしてくる。


「なあ海香、二人、どうすれば元気になると思う?」

「う~ん秀一君は正直分かんないけど雲雀なら簡単だよ」

「マジかよ⁉教えてくれ」

「良いよ、じゃあ耳貸して」


海香に雲雀の機嫌が直る方法を耳打ちしてもらう。え…?それ…いや、この空気を逃れられるのなら今は仕方ない。


「雲雀さん…そんなに俺の家着たいなら今度俺の家で遊ぶ?」

「本当⁉今聞いたからね!約束だからね!嘘はだめだよ!」

「う…うん、約束」


さっきまであんなに暗かったのに一気に明くるくなった。そんなに高級マンションに入ってみたいのだろうか。とりあえず元気になってくれてよかった。さて、問題のもう一人、…こいつはまあこれでなんとかなるだろ。


「秀一、そんなに俺と競いたいなら今後一回だけいつでも秀一が勝負したい時に勝負してやるよ」

「本当か⁉今確かに聞いたからな!約束だからな!嘘はだめだぞ!」


なんかさっきも全く同じセリフを聞いた気がするがまあいい。


「よし!次俺歌う!」

「その次私!」


二人が元気になったなら今回はこれで良しとしよう。

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