話題の中心と流れ弾
「それじゃあ今から問題用紙と解答用紙を配ります。隣の席と十分に距離を取ってください」
朝のホームルームが終わり、早々に他のクラスの担任の教師が教室に入ってきた。どうやら試験監督はランダムなようだ。
試験監督の教師は一番前の席の人に用紙を配り、後ろの人に渡していく。
「それでは8時50分から9時40分の50分で試験を行う。試験開始時間が来るまで待っていてくれ」
50分まではあと2,3分ある。その間に頭の中で簡単な内容を頭の中で反芻させて復習する。
「3…2...1...試験開始」
試験が開始した。初めに問題の全体を把握しとく時間配分を決める。…よし、このくらいの内容なら俺も良い点数を取れそうだし、真波も縁も赤点は回避できそうだ。ここからは二人の事から自分の試験に対して集中する。
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それから試験は3日かけて行われた。
「止め。筆記用具を置き、一番後ろの席の生徒は回収し前に提出しなさい」
静かにそしてスムーズに一番後ろの席の生徒が回収し提出する。試験監督の先生は答案用紙を回収するとすぐさま教室を後にする。
瞬間教室からは安堵のため息が聞こえ一気に教室から疲れた~や、やっと終わった~のような活気のある
声が広まる。
「いや~やっと終わった!これでようやくバスケが出来る!これも誠翔と秀一のおかげだ!」
「私も!実際はどうか分かんないけど手ごたえはバッチリだよ!」
「二人の手ごたえが良さそうで何より。部活は今日からまた再開するのか?」
「そうそう、身体がなまってて体力が有り余ってるから今日は動くぞ!」
「それは何より。頑張ってくれ」
二人と会話をしていると紬先生が教室に入ってきてそのまま帰りのホームルームが始まる。
「みんなテストお疲れ様!高校初めてのテストで疲れたとは思うからしっかりと休んでね!あとこの後放課後にどこかに遊びに行く人がこのなかにもいると思うけど羽目を外しすぎて問題を起こさないようにしてね。それじゃあホームルームはこれで終わり、みんな気を付けてね~」
ホームルームが終わるとこれからカラオケに行かないだったりボウリングに行かないだったりが聞こえ始める。
「じゃあ部活行ってくる!じゃあな!」
「私も!じゃあね誠翔君!」
「二人とも頑張って!じゃあね」
二人は浮足立ちながら部活に向かっていく。あそこまで何かに打ち込めるのは素直に尊敬する。その二人とすれ違うかのように秀一が教室に入ってくる。
「様子見る限り、あの二人テストの手ごたえ良さそうだったな」
「そうだな、難易度的にも大丈夫そうだし」
「そうと分かれば何も気にすることはねぇ、誠翔!打ち上げしようぜ!」
「そう言うと思って予定空けてたよ、どこ行くかはもう決めてんのか?」
「カラオケで良いんじゃないか?ここら辺なら腐るほどあるだろ」
「じゃあそれで」
打ち上げの場所も決まったところでカバンを持ち秀一と一緒に教室を出る。
「それで?俺ら二人で行くのか?」
「いや、実はもう誠翔含めて誘われててさ」
「俺含めて?誰に?」
「あれに」
秀一はそう言うとAクラスの教室に指をさした。教室の中を見ると何か一つの席をたくさんの人が囲んでいた。
「空先さん、俺達と打ち上げ行こうよ!」
「私達と行こうよ~、他のクラスの人とかも一緒で来てくれたら絶対盛り上がるって」
「ごめんね、実はもう他の人と行く約束してて」
囲まれているのは雲雀だった。
「今から俺あの話題の中心に行くの?絶対嫌なんだけど」
「だって忙しそうでこっちに気付く様子はないし行かなきゃ仕方ないだろ」
「じゃあ俺Bクラスだから秀一お前行けよ、Aクラスのお前が行けばクラス的にも格的にも不思議じゃないだろ」
「俺だって誘われたの振り切ってきたからな。また囲まれちまうよ」
「え~」
穏便に雲雀に声をかけられそうなのは俺しかいなさそうだ。しかし、あの中に入るのは絶対に嫌だ。
どうやってこちらの存在を気付かせようかと考えているとAクラスの一人の女の子が俺に声をかけてくる。
「ねぇ君!噂の三葉君でしょ?良かったら私たちと打ち上げ行かない?三葉君が来てくれたら絶対盛り上がるよ!」
何故か俺も声をかけられてしまった。まずい、どう声をかけるか以前にどうこの場面を切り抜けるかに変わってしまった。てか気付いたら秀一いねぇし、あいつ、いつの間にか逃げやがったな。とんだ流れ弾に当たってしまった。
「ええっと…確かに俺は三葉だけど、俺そんなに盛り上げるタイプじゃないし…もしかして秀一が目的ならつい今の今まではいたけど今はここに居ないって言うか…」
「別に盛り上げるとか良いよ!秀一君がいないことは確かに少し残念だけど秀一君の同じレベルのイケメンが来てくれるだけでこういうのは盛り上がるんだって」
まずい、よく分からないがこの子は何としても俺を打ち上げに連れて行きたいらしい。しかも秀一はいなくても良いときた。意味が分からない。
どうやって断ろうかと頭の中でテストの時の何倍もの速度で頭の中で考えを巡らせた。しかし答えは出てこない。もう助からないと思ったところで救いの声が聞こえてきた。
「ごめんね、誠翔はもう私と打ち上げに行く約束しちゃってるんだ」
ある意味この問題の発端でもある雲雀が声をかけてくれた。
「…なんだ雲雀ちゃんとの約束か~、これじゃあ無理だな。普段首を縦に振ってくれる雲雀ちゃんが今回首を縦に振らなかった理由も納得だよ。じゃあ邪魔しちゃったね、じゃあね」
そう言うと今までとは打って変わってすぐさまその子は離れていった。
「お待たせ誠翔、ここに居るってことは秀一君から話聞いたってことで良いんだよね?」
「あっ、ああ。そうなんだけど話を知ったのは囲まれてるところを見たときていうか、その秀一は今――」
「どうやら問題は解決したっぽいな」
今の今までいなかったはず秀一がすぐ近くにいた
「お前どこ行ってたんだよ。俺一人に問題を押し付けるなんてひどいじゃないか」
「俺も一緒に居たらもっとめんどくさそうになりそうだったからさ」
「雲雀さんもさっきまでみんなに囲まれてたけど大丈夫だったのか?」
「うん誠翔と秀一君と打ち上げの予定があるって言ったらみんな納得してくれたよ」
名前を出すだけで問題が収まる。流石秀一パワーだ。
「じゃあ今度こそ打ち上げ行くか。どこ行くか決めてるのか?」
「それならもう最初に行く場所押さえてるからそこ行こうよ!」
「分かった、じゃあついてくよ」
そうして俺は雲雀についていった。雲雀は電車に乗り、降りた後もしばらく歩き目的地に到着した。
「ここは…」
付いた場所はこの間みんなで訪れた喫茶店だった。喫茶店の中に入ると見たことのある子が一人座っていた。
「やっと来た、遅かったじゃん。何かあったの?」
そこには既に席に座りメニューを持った波風の姿があった。
いつもこの作品を読んでいただきありがとうございます。申し訳ございません。実は今ノロウイルスに感染してしまい、続きをかける状況ではございません。ですのでこれから数日間は続きを出せません。いつも楽しみにしていただけている方々には申し訳ございませんが気長にお待ちください。




