試験前日
今度は俺自身が使っていた今回の文系テストの予想問題と中学1年生の問題集を渡す。
「今度はそれを解いて、文系の方は別に出来た時に連絡してくれれば良いから。数学はここの分野を解いて」
「え⁉何で中学1年生の問題集?」
「さっき解いていた理系科目、解答してるところがほとんど中一レベルの問題だった。正答している部分がギリギリ半分超えてるぐらいだった。てことは中一レベル、言ったら基礎中の基礎が出来てないってことだ。数学なんかは小学校1年生からずっと地続きに繋がっている。だから今高校レベルを解説しても理解できないんだよ」
「確かにそっか…じゃあ理系が苦手でラッキーだったってどういう意味?」
「それは簡単、数学は文系に比べて暗記が極端に少ないから。例えば数学が出来るけど文系の教科が出来ないときって、数学なら公式のここが間違ってるだったり説明できるけど文系って暗記が多いじゃん?暗記の場合覚えやすいように語呂合わせとかで教えることは出来ても、結局暗記はその人の向き不向きだから教える側が頑張ってもどうしても結果につながらないことが多いんだよ」
「そんなもんなのかな?」
「多分今の説明理系科目が苦手だからピンと来てないでしょ?でもそれは今数学が出来ないからそう思うだけで数学が出来るようになればなんとなく分かるようになるから」
「そっか、分かった!どっちにしろあたしは誠翔君を頼るしかないから勉強あるのみだね」
「あともし分かんない問題があったらこの参考書使って。それでも分かんないときはいつでも声掛けてね」
縁はありがとうと一言感謝をし黙々と問題を解き始める。
そういえば秀一と真波はどんな感じだろうか、少し様子を見る。
「は~なるほどな、この文法ってこういう事だったんだな~」
「そうそう、じゃあ次は長文読解やってみようか」
元々心配はしていなかったが、どうやらあちら側も問題はないようだ。俺はとりあえず自分の仕事が終わったことを確認し自分のテスト勉強に取り掛かる。
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「誠翔君ここ教えて」
「え~とね…ここはyに代入する値がこの値じゃなくてこの値だね」
「結構頑張ったけどまだまだだな~。この方法に縋るしかないけど本当に大丈夫なのかな~」
「使ってる公式だったり解く方向は間違ってないから大丈夫だよ。最初よりも確実に成長してるよ」
勉強を始めてだいぶ時間が経過した。もう外もすっかり日が落ちている。
「今日はもう外も暗いし良い時間だからここまでだな」
「は~疲れた~…こんなに勉強したの初めてかも~」
「秀一達もそろそろ帰る準備しとけよ」
「わかってるよ~」
そうしてみんな帰りの支度をし始める。
「誠翔君この問題集と参考書持って帰ってもいい?」
「もちろんいいぞ。分かんないところがあればメッセージ送れよな」
「ありがと!」
皆が準備を終えた玄関まで向かう。
「じゃあみんな気を付けて帰れよ。何か忘れものあったら連絡するよ」
「誠翔君今日はありがとね!」
「こっちこそ、今日は楽しかったよ」
そうしてみんなの背中を見送る。
部屋に戻り部屋の掃除をする。もともとあまり汚されておらず、帰りにそうじをしていってくれたため片付けるものなんてほとんどない。掃除機を少しかけるぐらいだ。
お風呂にお湯をためながら晩御飯を作る。今日は人に教えるという普段とは違う頭の使い方をしたためおなかがすいている。多めにご飯を作った。
お風呂もゆっくりと浸かり今日一日の疲れを取る。
お風呂から上がりスマホを確認すると早速縁から今日渡した文系科目の採点と理系科目の分からない問題の解説のお願いのメッセージが来ている。今日結構長時間勉強した後だってのに凄いやる気だ。
俺は髪を乾かした後コップに飲み物を注ぎ、机に座り採点を始める。
…うん、文系科目に関してはこのくらいとれていれば大丈夫だろう。毎日復習していれば高得点も狙える。問題の理系科目もまだ目標点には程遠いが縁のやる気を見れば十分に間に合わせることが出来るだろう。やはりスポーツ推薦枠とはいえ進学校だ、中学校の評定などがあまりにも低すぎれば入学は出来なかっただろう。物覚えが早いため優秀だ。
「採点したよ。文系科目はもうばっちりだ。心配いらない。何ならこの調子で予習復習すれば高得点を狙えると思う。理系科目に関してもこの調子で続ければ大丈夫だよ」
メッセージを送るとすぐに連絡が返ってくる。
「本当⁉良かった、じゃあこの調子で頑張るからサポートお願いね!」
「任せてくれ、せっかく頼ってくれたんだ。最後までサポートするよ」
縁とのやり取りを終え俺も自分の勉強を少し始める。もともと今日は教えながら自分も勉強をしていたため十分に勉強をしていた。軽く復習するぐらいで良いだろう。
30分くらい勉強をし今日は眠りについた。
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勉強会をして暫くして朝、学校に登校すると真波と縁が机を囲み勉強をしていた。
「おはよう、朝早くから偉いな」
「おはよう誠翔。今は部活休みだからな、寮だと捗らなそうでな」
「あたしも同じ」
朝早くから教室で勉強する、やはりスポーツ推薦で入ってきた人はそれだけ自分のやっている部活が好きなようだ。
「頑張るのもいいけどあんまり根詰めすぎて体壊さないようにな。部活でもそうだと思うけど練習で出来ても本番で出来なかったら意味ないから」
「分かってるよ。そう言うのは部活で俺含めて起こすことがあるから身に染みて理解してる」
「誠翔君朝早くから悪いんだけどここ教えてくれない?」
「いいけどちょっとお手洗いに行ってくるからその後で良いか?」
「もちろん!待ってるね」
そうして二人はまた勉強に集中し始める。この二人には何としても目標点数を取ってもらいたいものだ。
トイレに向かう途中に登校してきた秀一と出くわす。
「おはよう誠翔!」
「おはよう。そういえば昨日は俺縁の事しか見れなかったけど真波はどうだったんだ?」
「集中して聞いてくれるからすぐに覚えていったよ。この調子でいけば確実に目標まで届くな」
「なら良かった、この調子でサポートしてあげてくれ」
「任せとけ」
そうして会話を終え秀一は自分の教室に入っていった。
それから二人は、毎日の放課後や隙間時間などを見つけては少しずつ勉強をし、着実力を付けていった。そして試験前日に迫った。
「はい、出来たから採点お願い」
「どれどれ」
俺は縁から理系科目の問題を渡され採点に移る。
「うん!このくらいできていれば確実に大丈夫だよ!」
渡していた問題集は今回のテスト範囲の基礎と簡単な応用を使用するものだった。少し、間違いやケアレスミスなどはあったが、一番最初のレベルと比べればものすごい進歩だった。
「本当⁉やった~この調子で試験本番も頑張るよ~」
「今日は軽く復習するくらいで早めに寝ておいてね。何回も言うようだけど本番で力を発揮できなきゃ意味ないから」
「分かった!じゃあ今日は早く寝るよ!恩返しはテストの結果で見せるよ。じゃあね~!」
縁は駆け足で寮に帰っていった。真波の方も反応と秀一から話を聞く限り問題ないだろう。
元々テストはただの学校行事の一つと言う考え方で好きでも嫌いでもなかったが、今回はいつもと違うため少し楽しみだ。
「俺も今日は早めに寝ておくか」
家に帰りいつもよりも早めに晩御飯やお風呂などを済ませ就寝し明日に備える。




