勉強会開始
「は~い皆さ~ん、もうそろそろテストがはじまるからしっかりと復習するようにしてくださいね!スポーツ推薦枠の人も一般入学の人に比べたら救済があるとはいえ、点数が低すぎると進級できなくなるから気を付けてくださいね!」
高校に入学して約一カ月が経っただろうか。紬先生が帰りのホームルームでもうすぐ初めてのテストが始まることを告知した。
「そうか~もうそんな時期か、誠翔は普段から予習復習してるっぽいから大丈夫だろうけど、俺は部活三昧だったからヤバいかもな」
「真波って普段先生にあてられても普通にこたえられてるからあんまり心配しなくても良いと思うけどな?しかも先生も言ってたけどスポーツ推薦枠は救済措置あるって言われてるからそんな焦んなくてもいいと思うけどな」
「正直進級がやばいほど頭が悪いわけではないんだけど、赤点を取ると補講とか追試合格とかしなきゃ練習に参加できなくなるんだよ。ここ結構強豪だから一日部活休むだけでも結構ヤバくて」
「そうなのか大変だな…そういえば前言われた通り、俺なんかでよければ勉強教えてやろうか?力になれるかは分かんないけど」
「本当か⁉バスケもちょうど今日から休みだからじゃあ放課後頼むよ!」
「話は聞かせてもらったわ!」
放課後一緒に勉強事が決まったところで縁が話に入ってきた。
「お、なんだ?もしかして支倉も俺に勉強教えてくれるのか?」
「逆よ逆、あたしも勉強教えてもらいたいのよ、あたし陸上だけしてきたから勉強知識なんて全くないのよ。このままじゃ赤点回避どころか進級も危ういわ」
学年委員を積極的に希望したから、あまり頭が良くないのは意外だった。
「じゃあ縁も真波と一緒に教えるよ、どこで勉強する?やっぱ図書室とか自習室か?」
「いや、テストシーズンはすごく混むって噂だし、誠翔第一教えている声で他の人に迷惑かけちゃうだろ」
「そうか…じゃあ俺んちは?おれ訳あって寮じゃなくてマンションに住んでるんだ。大したもん出せないし、もちろん二人が俺んちでもいいって言うならだけど」
「本当かよ!一番いい自習室じゃん!」
「あたしも異議なし!」
「じゃあ決まりだな、それじゃあ二人の心配な教科教えてくれ。そこからどう教えるか考えるから」
「俺は英語かな」
「あたしは理系科目全般」
「分かった。じゃあ俺は先に帰ってるから後でマンションの住所送るよ。マンションで待ってる」
俺は二人に別れを告げマンションに帰る。一応最低限のもてなしを出来るようにマンションに帰る前にコンビニにより、お茶とお菓子を買っていった。
家に帰って20分ほど経った頃だろうか、スマホから電話が鳴った。真波からだった。
「なぁ誠翔、一応マンション着いたんだけどさ…本当にここであってるんだよな?」
「反応的に多分、てか絶対あってる。今エントランスのドア開けるからそのままエレベーターで20階まで上がってきて。で、2030号室のインターホン鳴らしてくれ」
「わっ、分かった」
飲み物やお菓子、コップを並べ待っているとインターホンが鳴る
「よう、よく来たなってなんだ秀一も来たのか。連絡してくれればよかったのに」
「誠翔と帰ろうと思ってBクラス向かったら一緒に勉強するって聞いてな、こういうのはサプライズが大切なんだよ」
「よく分かんないけどどうぞ、はいって」
特に緊張しなくてもいいが真波と縁は少し気圧されている。
「誠翔…お前お金持ちだったんだな」
「そうだね…あたしたちとは住む世界が違うみたい、これ…場違いな気もするけど一応お菓子」
「わざわざ悪いな、ありがとう。あと別にお金持ちじゃないぞ、何ならビンボーだったから最初高校来るつもりなかったし。このマンションは俺の両親の知り合いが持っていて持ってるマンションの空き家を貸してあげるって言われたから借りてるだけ。俺も最初気圧されて落ち着かなかったから」
「そっそうだったのか…何だか誠翔は大変な人生を歩んでいるな」
「まあ普通の人よりは大変だと思うよ」
三人をテーブルに座らせ教材を開く。
「そういえば俺だけじゃなく秀一もいるしマンツーマンで教えるか」
「なんだよ俺には教えてくれないのかよ」
「お前俺より頭いいだろ、何を教えればいいんだよ」
一瞬秀一が駄々をこねるがすぐに教える立場に戻る。
「それで?実際支倉と真波どっちがやばいんだ?」
「ヤバいで言ったら縁の方かもな。真波は英語だけだけど縁は理系科目全般だって」
「なるほどな…じゃあ俺が真波、誠翔は支倉に勉強を教えよう」
「縁の方が教科多いし秀一が縁の方教えた方がよくないか?」
「いや、絶対に俺が教えるよりも誠翔が教える方がいい」
「そうか?じゃあ分かった」
誰がどちらに教えるかの分担を決め、勉強に取り掛かる。
「という事で俺が教えることになった。秀一より頼りないと思うけどよろしく」
「そんなこと全然ないよ、よろしくね」
「最初に確認したいんだけどどれくらいの点数が取りたいんだ?」
目標とする点数。この点数によりどのくらいのペースでどのくらいの難度の問題を教えるかが変わる。
「ん~、やっぱり最低条件は赤点回避かな~。部活に参加できないって言うのは本当に避けたい。後できることなら平均点とまではいわないけど近い点数は欲しいかも」
「なるほど。…よし分かったじゃあ取り合えずこの問題集のこのまとめって書いてあるページ解いてみて」
そうして俺は中学三年生レベルの問題が乗ってある文系理系全ての問題集を渡す。
「とりあえずどのくらいの知識を持ってるのか知りたいからやってみて」
「分かった、ちょっと待ってて」
そうすると縁は黙々と問題を解き始める。運動部に入っているだけあって目標のために集中することは得意のようだ。赤点回避しなければ部活に参加できなくなるのだからなおさらだろう。
「よし、出来た…けど…」
30分ほど経過したところで数学を解いていた俺に声をかけてくる。そして縁から問題集を受け取る。
「ありがと、今から丸付けするから待ってて」
どれどれこれは、…なるほどな。
文系科目に関しては申し分なくほとんど8割9割解けている。しかし、理系科目である数学や化学は半分以上が空白で埋めている問題もギリギリ正答率が半分を超えているぐらいだ。
「確かに理系科目は酷いありさまだけど文系科目に関しては申し分ないな」
「正直私もここまでひどいとは思わなかった…やっぱり間に合わないのかな…」
「いや?別にそんな事ないぞ。何なら理系が苦手でラッキーだったよ」
縁はその言葉を聞きとても驚いた顔をしてこちらを見る。