悪い居心地
朝、少し早めに目が覚めて意識を冴え渡らせるためにカーテンを開ける。
なんていい天気なのだろうか。それに比べて俺の心はなんて曇っているのだろうか。
理由は単純、昨日一日中何か解決策がないかを考えていたが、結局いい案どころか妥協案すら見つからなかった。そして結局考えるのをやめ、ゲームの世界に逃げ込んでしまった。しかし、そのおかげで進められなかったゲームがとてもよく捗った良しとしよう。いや、良しとしなければ体がもたない。
せっかく早く目が覚めたんだ、今日は少し早めに学校に登校しよう。そうと決まれば学校の準備をしよう。
そうして俺はいつも通りの準備をしマンションのエントランスを出て学校に向かった。
やはりまだ早いだけあって学校に向かっている人は少ない。最近は何だかあわただしい時間が多かった気がする。なんだか心が穏やかになってくる。
そんな事を考え、学校の敷地に着くとグラウンドや体育館から掛け声やたくさんの足音が聞こえる。恐らく運動部の朝練だろう。こんな朝早くから精が出るな。そんな事をボケっと考えながら生徒玄関に向かい、上履きに履き替える。
教室に着くと既に何人かの生徒が自分の席に座っていたり、会話を楽しんでいる。
昨日は特に勉強をしなかったので少し復習をしよう、そう考え教材を取り出したところでスマホに電話が来た。予想通り秀一からだった。応答ボタンを押し、通話を開始する。
「もしもし。誠翔?お前マンションから出てこないけど寝坊か?」
「なんだ迎えに来たのか。悪い、今日は早めに目が覚めたからもう家出て学校に来てる。わざわざ行ってもらったのに悪いな」
「なんだそうだったのか。じゃあまた学校でな」
そう言うと通話が切れた。改めて勉強を始めようとしたところで次はスマホからメッセージが届いた通知が来た。だれから来たのか確認したところ、どうやら雲雀からのようだ。
「誠翔おはよう!今私途中まで登校してるんだけど良かったら途中から一緒に登校しない?」
どうやらまた登校のお誘いのようだ。
「おはよう。悪いな、実はもう学校に到着してるんだ。気を付けて登校してくれ」
「そうだったんだ。じゃあまた学校で!」
雲雀とのやり取りも終え、ようやく勉強に取り掛かる。まだ高校が始まったばっかりで簡単な物しか習っていないためすぐに復習も終わるだろう。
勉強に取り掛かり数十分が経ったところで教室に入ってくる生徒も増えてきた。
「誠翔おはよう、朝から勉強か?偉いな」
「おはよう、真波。お前も朝から練習凄いな」
「サンキュー。しかし勉強か、俺はスポーツ推薦で来ただけあって勉強は全然だからな。テストが近くなったら勉強教えてくれよ」
「良いよ、俺なんかでよければいつでも聞きに来いよ」
そのまま話の流れでバスケの話やゲームの話などの雑談を先生が来るまでした。ホームルームでは特に連絡がなく、すぐに授業に入った。
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4限の授業を終え、お昼休みに入った。腹も減ったし食堂に行こう。今日はラーメンにしてみようか。そんな事を考えているとスマホにメッセージが入った。秀一からだ。
「今日も学食行くだろ?席取るために先に向かってる」
どうやら秀一も学食のようだ。俺も学食に向かう旨を伝えメッセージを返す。
学食に向かいラーメンの食券を買い、ラーメンを受け取る。そうして秀一の座っている席を探す。
「誠翔、こっちこっち!」
秀一の声が聞こえ、声が聞こえた方に振り替える。そこには秀一がいた。しかし、イレギュラーなことに雲雀も相席していた。いや、Aクラスからの目線にしてみればレギュラーなのだろう。少し座りたくなかったが、ここで座らなければ麺が伸びてしまう。その結論に至ると、俺はすぐに席に座った。
「誠翔はラーメンにしたんだね美味しそう!」
「前回はカレーにしたから今回は違うのにしようと思ってね」
「それより誠翔、どうして今日朝早く登校することを教えてくれなかったんだ!俺は寂しく一人で登校したんだぞ!」
「別に学校でいつも会うんだから登校ぐらい別でもいいだろ」
「私も誠翔と一緒に登校したかった」
何でこいつらは一緒に登校したがるのか、学校に行けばいつでも会えるのに。ラーメンを啜りながら二人の愚痴を聞き流す。また、昨日の雲雀の行動から少し身構えて会話を続けていたが普通の会話しかしなく、バレそうな雰囲気も今のところはない。後半からはリラックスして会話をする事が出来た。
しかし、居心地が悪い。それは、この二人のせいではなく周りの視線だ。それもそうだ。この二人は顔面偏差値が異常なほど高い。ましてや秀一に関しては新入生代表挨拶もしたのだ。1年生だけでなく上級生からしても注目の的になるだろう。その中にAクラスでも何でもない顔も能力も不釣り合いなBクラスの人間一人。何故あの中にこんな人間が混じっているのだろうと言う目になるのも不思議ではない。これはとっとと食って消えるのが良い。ちょうど少し学食の値段が高いと思っていたし、これを機に弁当を作り始めるというのも良い。
「ごちそうさま。じゃあ俺次体育で体育着に着替えなきゃいけないから行くわ」
「食うの早いな。よくやけどしないな」
「まこと、体育頑張ってね。怪我しないようにね~」
「それと誠翔、下校の時は一人で帰るなよ」
分かったと返事をし、その場を離れる。
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それじゃあ今日はここまで!みんな気を付けて帰ってね!
学校も終わり席を立つ。そうして俺はAクラスに秀一を迎えに行く。Aクラスの教室に着いたはいいもののどうしよう。やはりほかのクラスと言うだけあって入りずらい。よく秀一はBクラスにあんな感じで毎回入ってこれるな。メンタルの出来が違う。そんなこんなで悩んでいるうちに秀一がこちらに気付きバッグを持ち俺の方によって来る。
「なんか話してたっぽいけどいいのか?」
「ああ大丈夫。もともと誠翔と帰る約束だしな」
「そうか、じゃあ行くか」
生徒玄関に行き、内履きから外靴に履き替え秀一の住んでいる寮に向かう。
「明日から休みだよな。誠翔はなんか予定あるか?」
「いや特にない。最初はバイト探ししよかなって考えてたけどなんかこの学校校則で夏休みとかの長期期間しかだめらしいからな。だからゲームとか勉強かな」
「じゃあせっかくこんな都会に来たんだ!どっかあそびにいこうぜ!」
外出か。確かに前までずっと勉強漬けだったし行くのもいいかもしれない。何よりここら辺の店を見れば長期バイトを探すときの良い参考になるかもしれない。
「良いぞ、どこら辺に行く?何時集合にする?」
「集合時間はまあ9時くらいでいいだろ。どこ行くかはぶらぶら歩きながら決めようぜ」
「じゃあ集合は明日俺が寮に向かう」
「分かった。じゃあまた明日な!」
そうして秀一を寮に見届けた。久しぶりの外出に少しわくわくした気持ちを胸に秘め、マンションに帰った。
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