これから覚悟しててね!
数分間バスケをしている誠翔にほれぼれとしていたが、今の私には誠翔と同じ委員会に入るという使命がある。そうして私は教室に戻った。
「雲雀遅かったね~、あ!さては告白でしょ~」
「違うよ、先生に呼ばれてた事を教えてくれただけ」
「ふ~ん。まぁそういう事にしておきますか」
告白されたという事は肯定しなかった。彼にはまだまだこれからがある。変に肯定して噂を広げない方が彼のためになるだろう。
私は話を終え、秀一君を探す。良かった。今度は席にいた。
「秀一君さっきはありがとね」
「全然いいぞ、もし俺達が座る場所なかったときはその時は頼むぞ」
「うん。ところで一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」
「どうした?答えられることなら答えるぞ」
「やっぱり秀一君ってさっき言ってた友達の誠翔君と一緒の委員会はいるつもりなの?」
「あ⁉そうだった!聞くの忘れてた。しまった。今から聞きに行くか?いやしかしもう授業が始まってしまう」
彼は色々と考え始めてしまった。しかし彼も知らないとすると判断材料がない…困った。だけど誠翔の事だから一番人の役に立てる委員会に入りそうだからその委員会を探そう。
「まぁ誠翔の事だから絶対一番人の役に立つ委員会に入るだろ」
彼も私と同じ結論に至ったようだ。不安要素が大量にあるが、しかたない。
そうして少し不安な気持ちで午後の授業を受け、委員会決めの時間が来た。
「それではこれより朝告知していた通り委員会決めを始める。これからおおよその委員会の役割と仕事内容を伝える。その中から自分が希望したい委員会を絞っておいてくれ。規定で一つの委員会に男女一人ずつしか入れない。希望してない委員会に決定したとしても責任をもって取り組んで欲しい」
そうして先生は一つ一つの委員会の詳細を説明していった。どの委員会もやりがいがありそうで、誠翔がどの委員会を希望するかの予想があまり建てられなかった。
「そして最後に学年委員会だ。この委員会はクラスの学級委員に所属し、主な活動としては行事などでクラスをまとめる、他の委員会との連携、行事の運営の協力など様々な活動がある。因みに、学級委員は他の委員会とは違い普段は各学年ごとで活動する。私がこの委員会の担当をする」
全ての委員会の詳細が発表された。正直、誠翔がどの委員会を選ぶのかを絞ることは出来なかった。しかし、一番ありえそうなのは学年委員会だった。しかし、以前の誠翔なら迷いはなかったが、今の誠翔の性格で学年委員会を選ぶかは正直分からない。
「それでは、これからの進行は学年委員会にお願いする。という事で最初に学年委員会を決める。ではまずは男子でやりたい人挙手してくれ」
流石Aクラスといったところか。複数人が挙手をしている。その中には秀一君の姿もあった。
「複数人いるか。では話し合いやじゃんけんでもいい。だれか一人に絞ってくれ。では男子が決めている間に女子の方を決める。やりたい人は挙手してくれ」
正直、これが正解かは分からない。でも、秀一君が選んでいる点からも、一番可能性が高い気がする。さらに仕事内容の一つの他の委員会との連携という点から、最悪誠翔が違う委員会を選んだとしてもそこでかかわりを持てるかもしれない。その点から私は挙手をする。
「女子は空先一人か。では女子は決定だ」
運よく女子で希望したのは私だけだったらしい。男子はどうなるのだろうか?そう思い振り返る。
「じゃあ行くぞ。じゃんけんポン。…しゃあ!俺の勝ち!」
「どうやら男子も決定したようだな。では男子の学年委員会は最上だ」
…秀一君凄い。そうして私は黒板の前まで移動する。
「女子の方は雲雀か。よろしく!」
「よろしく秀一君。委員長と副委員長どっちが良い?」
「正直どっちでもいいけど…じゃあ俺が委員長やる、それでもいいか?」
「分かった。じゃあ私黒板に板書するから進行お願い」
「わかった」
流石はと言ったところだろうか。特に問題も起こらずに終えることが出来た。
「よし、全部の委員会が決まったな。学年委員の二人ともありがとう。特に今日はこれと言った報告はないため今日はこれで解散とする。皆気を付けて帰るように。学年委員会は今日の放課後に全クラスと顔合わせがある。このまま生徒会議室に向かって欲しい」
どうやらこれから会議があるようだ。…思ったよりも早く答え合わせが出来そうだ。
「じゃあ雲雀、生徒会議室に行くか」
「うん。遅れたら悪いしね」
そうして私たちは生徒会議室に向かう。生徒会議室の扉を開けるが、まだだれも来ておらず、私たちが1番最初のようだった。待っている間秀一君と少し会話をする。
「秀一君さっきのじゃんけん後出ししてたでしょ?それも普通誰もとらえられないような他の人が指を出し始めたあたりで」
「バレた?凄いな、誠翔以外に初めて指摘されたよ。でもどうしても勝ちたくてさ」
「多分私もおんなじ立場ならそうしてたと思うから誰にも言わないよ」
「サンキュー、助かるよ。ていうか主席合格の噂だったりじゃんけんの話含めて雲雀さんもただ者じゃないね」
何気ない会話をしていたら段々と他のクラスも集まってきた。誠翔のいるBクラスの女子も来ていたが、男子の方はまだ来ていなかった。
更にしばらく待っていると、また扉が開いた。
そこには私が待ち焦がれていた男性、誠翔の姿があった。
やった!私は前世どれだけの徳を積んだのだろう。本当に運が良い。
「誠翔~やっぱりお前も学年委員会か!学年委員会選んでよかったぜ」
「もともとやるつもりはなかったんだよ、でもくじ引きで負けて学年委員会に決まっちまったんだよ」
「なんだそうだったのか。まぁでも結果俺にとってはラッキーだったから何でもいいや」
誠翔と秀一君が話している。ずっと会いたかった誠翔が目の前にいる。でも、なんで誠翔は私の事を見ないのだろう。もしかして気付いていないとか?いや、それは確実にない。誠翔と違って私は小学生時代と比べてあんまり変化はない。更に先ほどから見こそはしないが明らかにこっちに意識を向けている。だから誠翔は私には気付いている。そんな事を考えていると誠翔がBクラスの女の子と話し始める。
「ねぇねぇ、誠翔君ってあの最上君と仲いいよね。高校はいる前から知り合いなの?」
「中学校の時からの仲なんだ。だれとでも仲良くするいいやつだよ」
「じゃあ空先さんとも知り合いなの?」
「いや初めて会うけど…どうして?」
衝撃を受けた。誠翔は意味の無いような嘘はつかない。しかし、今誠翔は確実に嘘をついた。理由は分からないけど、何故か誠翔は私から遠ざかろうとしているようだ。
どうしてそんなことするんだろう…
頑張って理由を考えているところに頼中先生が声を上げる。
「AクラスからEクラス全クラスがそろったな。ではこれより学年委員会の顔合わせ兼第一回学年代表会議を始める」
会議が始まってしまった。けれども私の頭はあまり回らない。自己紹介などもあったが、いつも通りにはできなかった。まとまらない頭で挨拶を聞いていると誠翔の番が来た。
「Bクラス副委員長、三葉誠翔です。皆さんを手助けできるよう頑張ります」
苗字が一色から三葉になってる、苗字変わったんだ~………!なんだ最後の微笑みは⁉あんな顔見せられたら誰でも惚れちゃうでしょ!あんなの反則だよ!ほらもう周りの女子皆顔を恍惚とさせちゃってるじゃん⁉まずいこのまま行動を起こさなかったら誠翔に彼女が出来ちゃう!
ヤバい…ドキドキして心臓が持たない…。もう何も起きないでくれ~!
紆余曲折あったが、無事?会議も終わり、皆が帰宅し始めた。
「縁、もう外も暗いし途中まで送っていこうか?」
ズルい!あの子誠翔に呼び捨てされてる!でも心配している誠翔も性格こそ変わったけどそういう人のために動こうとするところは相変わらず変わってなくてカッコいい。
どうしよう。結局誠翔と同じ委員会にはなれたけど、一回も話せなかった。
「誠翔帰ろうぜ。今日は俺がマンションまで送ってくよ」
「分かった。じゃあとっとと帰るか」
!。もうこのタイミングしかない。逆にここを逃したらもい一生機会が巡ってこないかもしれない。
「…私もついて行っていいかな?もう外暗いからついて行ってもいい?」
「もちろん。誠翔も良いよな?」
「…もちろん。夜中に女性一人だけじゃ危険だ」
このチャンスを逃してはいけない。なんとしても一気に関係を深めなくては。誠翔が私から逃げられないように。
「じゃあやっぱり先に寮に向かうか。秀一、それで良いよな」
「私がお願いしてる立場だから誠翔のマンションが先で良いよ!」
「…名前」
「さっきの自己紹介もちゃんと聞いてたし、秀一君呼び捨てにしてるから私も呼び捨てでもいいかなって…ダメだった?」
「もちろんいいよ。じゃあ行こうか」
やった~!ただ呼び捨て許可されただけなのに信じられないくらいうれしい!てかなんだその許可の仕方⁉やっぱりたらしとか小悪魔じゃない⁉
そうして私たちは帰路に就いた。
やっぱり、帰宅中何度も話などを振ってみたが、相槌自体はうってくれるが、会話はしてくれなかった。ただ、私は会話をしていて少し危機感を持った事がある。どうやら、中学時代の誠翔は誠翔自身は否定しているが、ものすごくモテていたらしい。今日の朝の登校や、先ほどの自己紹介などでも誠翔の持て要素がこれでもかと言うほど出ていた。
好きな人との時間というものは残酷であっという間にマンションについてしまった。マンションはセレブが住んでそうな高級そうなマンションでとても驚いた。
「じゃあ今日はありがとう。二人とも気を付けて帰ってくれ」
このままの関係では誠翔に逃げられてしまう。ここは畳みかけなければ。
「あ、そうだ!まこと、別れる前に連絡先交換しようよ!」
「良いよ。はいこれQRコード」
「ありがと!」
やった!断られたらどうしようかと思ったけど、交換できた!
そして私たちは寮に帰った。
今日一日で様々なことがあった。今日一日で信じられないくらい進歩があった。このまま少しずつ事を進めて行ってもいいかもしれない。しかし、私は決意した。そして私は踵を返し、誠翔がエントランスをくぐる前に間に合うように駆け足で誠翔のもとに向かう。勢いあまって誠翔にぶつかってしまう。
誠翔がどうして私の事を避けようとしているのかは分からない。誠翔が今私の事をどう思っているのかは分からない。でもこっちは小学校のときから今までずっと誠翔の事だけを考え、この時を待っていた。だから誠翔、私はあなたの考えなんて知らない。どんな手を使ってもあなたの口から正体を明かしてもらう。そしてその時は今度こそ一番伝えたかった言葉を伝える。
「まこと、どうしてかは知らないけどあなた私を避けようとしてるね。でも残念だけど無駄だよ。何故かって言うと私、あなたの事気に入っちゃったから。これから覚悟しててね!」
そうして私は覚悟を伝え、駆け足で帰路に就く。




