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雲の上と草の根~実は高スペックなことを本人だけが知らない~  作者: あかかど


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告白?

 私は寮に帰り、自分の部屋で色々と考えた。


 まず初めに、あれは本当に誠翔だったのか。この答えは、間違えなく彼は誠翔だ。この私が見間違うはずがない。次になぜAクラスではないのかだ。誠翔がこの高校受験を受けたのにAクラスに落ちたとはどうしても考えられない。次に誠翔の見た目についてだ。私の知っている誠翔は最上君みたいな元気系だったが、どちらかと言えばおとなしめの見た目になっていた。


 考えることは色々ある。しかし何よりも一番大切な事がある。それは


「どうやって誠翔に近付こうか」


 ずっと恋焦がれてきた相手だ。話しかけたいとはいえ、いきなりは無理だ。心臓が持たない。


 答えは簡単。誠翔の友達であろう最上君と知り合いになる。そうすれば確実に誠翔に近付ける。そうと決まれば今日は早く寝て明日に備えよう。私の気持ちは入学式のときとは違い希望に満ち溢れていた。


 朝、目を覚まし学校の準備をする。そして普段以上にしっかりと手入れに気を付ける。


 今日必要な道具を持ち、寮を出る。普段通りなら学校に行くというのは重い足取りになるが、今日は足が軽かった。周りに誰もいなかったらスキップでもしてしまいそうだった。


 学校に着き生徒玄関に入ろうとする。その時に女性の黄色い悲鳴が聞こえた。その声を聴いた瞬間、今日の私の目的である最上君が来たのだろうと思い、振り返った。


 そこには誠翔と最上君がいた。しかし、最上君の姿は私の視界には入ってこなかった。


 そこには誠翔がいた。確かに私の記憶の中には元気な誠翔の姿しかない。しかし目の前にいる誠翔は元気というよりはクールで大人っぽい。


 一目見た瞬間にさっきまで考えていたAクラスにいない理由、見た目、性格。そんな些細な物がどうでもよくなってしまった。


 かっ、カッコよすぎる…。


「ねぇ、あそこにいるの新入生代表挨拶してた人だよね?かっこよくない!」

「私彼の隣の人の方がタイプかも!ちょっと話しかけてみよっかな?」

「相手にされないからやめときな~」


 その声で一気に現実に引き戻される。


 周りの会話に耳を澄ませると、最上君と同時に誠翔に対してもカッコいいと言う声が聞こえてきた。なんなら誠翔の方が多いかもしれない。あんなにかっこいいのだ、話題にならない方がおかしい。私は誇らしげになるのと同時に焦りを覚える。


 このままではまずい、しかし今会うのは気持ち的にもっとまずい。そうして私は駆け足でAクラスの教室に向かい自分の席に座る。


「雲雀おはよう~…?どうしたの?朝からそんなに顏赤くして、走って来たの?」


 昨日話に来てくれた女の子の一人、波風海香(なみかぜうみか)が話しかけてきた。


「いっいや!別に⁉」

「そう?」


 まずい顔に出てしまっているらしい。急いで落ち着かせなければ。


「あっ見て、秀一君来たよ。いや~朝から雲雀と同じくらい人気だね~」

「私彼と違って新入生代表挨拶してないからそんな人気じゃないんだけど」

「またまた~謙遜しちゃって~。それ本気で言ってる?」


 今日の私の目標はどうにかして彼と面識を持つことだ。そして誠翔と繋がる。


 しばらく今日のプランを練っていると頼中先生が教室に入ってきた。


「おはよう。今日から授業が始まる。皆真剣に取り組むように。今日の予定だが、今日の最後の授業に委員会決めをする。皆どの委員会に入りたいか考えておくように」


 そう連絡事項を伝えると先生は教室を後にする。


 委員会、これはチャンスだ。恐らく最上君が入ろうとする委員会に誠翔も入ろうとするはずだ。何が何でも最上君の入る委員会に入らなくては。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 あっという間に授業も終わり、お昼休みがくる。今この時間が最上君と関わりを持つ最大のチャンスだ。そうして私は最上君の席を見る。しかしすでにそこに最上君の姿はなかった。


「雲雀、食堂行ってみようよ!美味しいらしいよ!」

「うっうん。分かった、行こっか」


 海香を含めたクラスメイトが声をかけてきた。いきなりプランが崩れてしまったがこういう時こそ冷静に、まだ時間はある。


 食堂に行くと既に人であふれかえっており、この食堂の人気ぶりが窺えた。もしかしたらもう座れる席はないかもしれない。


「あそこにいるの秀一君だよね?席空いてそうだし相席させてもらおうよ!イケメンとごはん食べたらおいしさもアップしそうだし!」


 その理論はよくわからないけど相席させてもらえそうならそうしよう…あそこにいるのは誠翔⁉誠翔と一緒にご飯が食べれたらたとえそれがゲテモノ料理でもごちそうになる。しかしまだ心の準備が出来ていない。


「ちょっと海香聞きに行ってくれない」

「?。なんで?みんなで一緒に行こうよ」

「ごめんちょっといけない。お願い」

「なんかよく分からないけど分かった」


 そうして海香は誠翔たちに相席をお願いしに行く。


 少し遠くからその席(ほとんど誠翔)を窺う。!。今一瞬期のせいかもしれないけど誠翔と目が合った気がする!どうしよう、今変なところないよね。


 手鏡を見て前髪などを確認する。


「お待たせ~。相席いいって。行こ?」

「うん」


 心臓がどきどきする。誠翔はどんな反応をするだろうか。意を決して誠翔のいる席を見る。しかしそこには先ほどまで確かに存在していたはずの誠翔の姿はなかった。


「あっあれ?誠翔は?」

「誠翔?もしかして秀一君がさっきまで一緒にご飯食べてた人の二人のどっちか?彼らなら今ご飯食べ終わって帰ったけど」


 私は慌ててあたりを見渡したが、どこを見ても誠翔の姿がなかった。


 仕方なく私はとぼとぼと昼食のカレーを買い席に座る。いや、ここで最上君と仲良くなればすぐにまた再開できる!


「最上君相席ありがとね!」

「全然いいよ。秀一で良いよ」

「じゃあ秀一君で。秀一君は友達と遊ぶこと好きなんだっけ?さっき一緒にご飯を食べてた友達はどんな人なの?」


 世間話をし、秀一君と仲を深める。そして同時に誠翔の情報を得る。まさに一石二鳥だ。


「誠翔の事か?誠翔はものすごく良いやつだよ。あまり目立ってはやらないけど、常に人の事を考えて人助けをするし、頭もいいし運動神経もいいし、性格もいいし、俺は今でもあいつがAクラスに入れなかったのが何かの間違えじゃないかって思ってるよ」


 その情報は私の知っている誠翔と合致していた。しかし、やはり雰囲気だけは小学生時代とは違う。


「雰囲気からして、秀一君と誠翔君って雰囲気とか明るさとか全然が違うけど、どうやって仲良くなったの?」

「…元々は俺以上に明るいやつだったんだよ。ただなんだろう、段々周りでは気付かないくらい暗くなっていって、ある日を境に急に暗くなったんだ。ただそれが悪いとは思わないし、明るくはなくなっても誠翔は誠翔だった。ただもしかしたら暗くなった原因は…いや、せっかくおいしいご飯食べてるんだし、暗い話は無しにしよう。とにかくあいつは俺以上に凄いし良い奴だぞ!」


 周りの反応は秀一君よりすごいっていうのは盛りすぎなんじゃなどの声があった。またまだ入学して2日目なのに秀一君がもう告白されたのなどの高校生らしい会話もしていた。ただ、私の頭の中は誠翔が暗くなった理由だった。私が会えなかった間に何があったのだろう。


 昼食も食べ終わり、教室に戻ろうとしたところ、初対面の学生に声をかけられた。


「空先さん。いきなりですみません、少し時間よろしいですか?」

「?。はい、良いですよ」


 私は皆と分かれて彼についていった。彼についていくと向かった先は体育館裏だった。


「空先さん!いきなりですみません!一目ぼれしました。僕と付き合ってください!」


 途中から少し察していたが、やはり告白だった。私の答えはいつもと変わらない。


「ごめんなさい。気持ちは嬉しいけどあなたとは付き合えない」

「…そうだよね。ごめんね、入学してすぐなのに。付き合ってくれてありがとう」


 そういうと彼はその場から去っていった。


 彼が去った後、その場は静寂に包まれた。何回経験しても告白を断ることはなれない。その時近くからたくさんの足音やバスケットボールのドリブル音、バレーボールのラリー音が聞こえた。体育館の中からだった。そういえば、昼休みは体育館で遊べるんだっけ。


 私はなんとなしに体育館の中を覗いてみた。


「ハァハァ、誠翔、お前本当にバスケ未経験者か⁉」

「小学生の時助っ人ぐらいなら」

「それでこのディフェンスかよ…クッソしつこいな」


 そこには誠翔がいた。ものすごい激しい動きなのに汗を一粒もかいていない。その時の誠翔は小学生の時の誠翔とクールでかっこよく少し大人の色気を持った誠翔を併せ持ったような見るものすべてを虜にするような魅惑な笑顔をしていた。


 誠翔!いきなりですみません!ずっと前から好きでした。私と付き合ってください!


 私は心の中でそう叫んだ。

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