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雲の上と草の根~実は高スペックなことを本人だけが知らない~  作者: あかかど


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再会

「諸君よくこの私立天稟てんぴん学園に入学してくれた。この天稟学園に入ったからには是非とも学業、部活動や学校行事に力を入れて様々な事を学んでほしい」


 学校の役員であろう人が熱く祝辞を語っている。入学式のお約束だ。


 しかし普段の私なら違っただろうが、今この学校に誠翔がいないと分かった私には全く心に響いてこない。これなら確率は低いだろうが、長期休みに誠翔が生まれた地に旅行しに来る可能性を賭けて地元の公立高校に進学すべきだったかもしれない。


 周りの皆はAクラスに入って凄いだったり、これで将来安泰だねだったり色々な事を言ってくれたが、ハッキリ言ってそんなことはどうでもよかった。良い企業、大学に入ることはどんなに環境が悪くても本人の頑張り次第でなんとかなる。しかし特定の人と再会するというのは結局限界が来てしまうからだ。


 ダメだ、これから高校生活が始まるって言うのにどうしても思考をいい方向に持っていく事が出来ない。


「それでは最後に新入生代表挨拶」


 そうこう考えているといつの間にか最後の新入生代表挨拶まで来てしまっていた。


「新入生代表、最上秀一(もがみしゅういち)さん」


「はい!」


 元気な返事と同時に周りから少し湧いたような黄色い声が聞こえる。


「あの人すっごくカッコいい!モデルさんとかかな?友達になりたいな!」

「信じられないくらいのイケメンだ...一目ぼれしたかも...」

「顔がものすごく綺麗で頭もいい、やっぱり完璧人間って存在するんだな」


 そこまで湧くほどのイケメンか、誠翔には到底及ばないだろうが少し興味がある。そうして顔を上げる。


 あれ?あの人は確か。壇上に目を向けるとそこには見たことのある人が立っていた。


「春の息吹が感じられる今日、私たちは高校に入学いたします―――」


 なんだ、入試トップの人はあの人だったんだ。はぁ、あの人が誠翔って声さえ吐かなければ今頃私はここに居ることはなかったのに。


 あの人は一ミリも悪くはなく、一方的に期待し、一方的に落ち込んでいる私が100パーセント悪いのだが、やはり少し恨んでしまう。


 少し物思いに耽けていると、周りから話し声が聞こえた。


「でもでも本当にすごいのがここからで、実は最上君以外にもう一人全教科満点で試験を突破した人がいるって噂だよ?」

「え~うそ?本当に?じゃあ何で一緒に新入生代表挨拶してないの?」

「それは分かんないけど...」

「じゃあ信憑性薄くない?」


 実際全教科満点で試験を突破した人間はここに居る。だからってそんなことは私にとっては些細な事だし、言って回るようなことはしない。


「あ!でも名前は知ってるよ!名前は確か空先雲雀(そらさきひばり)って言う名前だったはずだよ!確か...ほら!あそこに整列してる美人で可愛い人!」


 そんなことをせずとももう名前も割れていた。いったいどこから広まったのだろうか。しかし、美人で可愛いと言われた部分に対しては少し誠翔に近づいた気がしたため少しうれしいから良しとしよう。


「新入生代表、最上秀一」


 気付くと既に新入生代表挨拶は終わっていた。それから閉式の言葉で入学式は幕を閉じ、集団で移動し始め私は自分のクラスである1年Aクラスの教室に入った。


 しばらく席に座り待っていると年齢は40代後半くらいだろうか、髪などがしっかりとセットされておりいかにも仕事が出来そうな男性の先生が教室のドアを開け入ってきた。


「皆さん、入学おめでとう。私の名前は頼中龍貴(よりなかたつき)。これより1年間この1年Aクラスの担任を務める。よろしく頼む」


 厳しそうな雰囲気だが、とても頼りになりそうな先生だった。もしも困ったことがあったら頼りにしよう。


「ではこれからの予定だが、これから配布物を渡し、その後は予定では自由時間だか、毎年この時間は自己紹介を行っているため自己紹介の時間とする。自己紹介が終わったら次に全クラス合同のレクリエーションをする。またレクリエーションでクラスには学校からまぁそこまで凄いものではないがお菓子類の商品がある」


 そうして先生は連絡事項を伝えると教壇の上に置いてあった資料をテキパキと手慣れた手つきで配り始める。資料配布も終わり、自己紹介の時間がくる。


「それではこれより自己紹介を始める。出席番号が前の人から順番に進めていく。名前、出身中学校、趣味、目標の順番で発表してくれ。では1番の生徒から始めてくれ」


 そうして自己紹介が始まる。自己紹介は本当に大切だ。その人と関わるときにおいて、自己紹介で聞いたことを覚えておけばそれから関わるときスムーズに物事を運ぶことが出来る。自己紹介はその人その人の個性があり、聞いていて楽しい。そしてあっという間に私の番が来た。


「初めまして!空先雲雀です!出身中学校は高星中学校です。趣味は読書から、ゲーム、運動も大好きです!目標はとりあえず皆と早く仲良くなりたいです!みんなの助けになりたいので、困ったことがあればいつでも話してください!」


 自己紹介も無事に終わった。周りの反応から察するに、何とか好印象を与えることが出来たようだ。


 それからまた少し自己紹介を聞いていると、新入生代表挨拶をしていた人の番が来た。


「俺の名前は最上秀一!出身中学校は白詰中学校です。趣味は友達と一緒に遊ぶことです!目標は皆みたいな大層な物じゃないけど楽しい高校生活を送りたいです!みんなよろしくね!」


 周りの反応は中からは惚れ惚れとしたような声も聞こえて、ただの自己紹介なのに明らかに特別な物だった。そうして、無事全員の自己紹介が終わった。


「全員の自己紹介が終わったな。ではこれよりレクリエーションの準備をする。準備が終わるまでクラスの親睦でも深めてくれ」


 そう言うと先生はレクリエーションの準備に取り掛かった。そのタイミングと同時にクラスの女子の何人かが私の近くに近寄ってきた。


「雲雀さんこれからよろしくね」

「仲良くしてね」


 どうやら仲良くしようと思い声をかけに来てくれたらしい。


「もちろんだよ!これからよろしくね!雲雀で良いよ!」

「ありがとう!」


 入学初日でもう話せる人が出来た。これは幸先がいいかもしれない。


「…ねぇ雲雀。噂で聞いたんだけど、最上君と同じで入試トップだったって噂本当?」

「本当だよ。でもまあ新入生代表挨拶は気分じゃなかったから辞退したんだ」

「そうだったんだ。すごいね!」

「ふふ、ありがとう」


 そういえばもう一人の入試トップの最上君はどうなのだろう。そっちに目を向けると私と同じように人に囲まれている。私と違うところと言えば囲んでいるのが男子というところだろうか。いや、女子の中にも彼を伺っている子がいる。すごい人気だ。


「よし、準備が完了した。みんな席に戻れ」


 皆が席に戻り、そしてレクリエーションが始まった。レクリエーションの問題自体は難易度自体はそこまで高くなく、皆楽しく解けた。ただ、何問か最上君と私以外のみんなが解けない問題があった。でもそんな時こそ協力して私がみんなの手助けをして問題を解き、楽しんだ。


「それではこれより結果発表をする。おめでとう、君たちAクラスは満点で1位だ。次にBクラスは一問ミスで2位、C組は―――」


 そこまで難しい問題があったとは思えなかったが、どうやらAクラスとBクラスを除き、他のクラスは結構間違えたようだ。


「では今日の学校はこれまで、明日からは授業が始まるからみんな筆記用具等は忘れずに。それと明日から部活動の見学も始まる。興味のあるものはぜひ参加してくれ」


 そういうと頼中(よりなか)先生は教室を後にした。


「じゃあ雲雀また明日ね!」

「うんまた明日」


 そんな事を話していると教室の扉の方から男子の会話が聞こえる。


「おい秀一、せっかくだし一緒に行こうぜ」

「悪いな、Bクラスで友達が待ってるんだ!じゃあまた明日」


 そうして最上君は嵐の様に去っていった。スゴイ、廊下から黄色い歓声がが響いてくる。…?何だろう、更に黄色い歓声があがった。少し間があったため何かがあったのだろう。


 色々あったが、私は生徒玄関を出て待っているであろう両親を探す。二人は校門のすぐそばにいてすぐに見つけることが出来た。


「お父さんお母さんお待たせ!」

「雲雀、制服似合ってるわよ!」

「高校入学おめでとう!」

「ありがとう頑張るね!」

「これから寮ではあるけど独り暮らしだから頑張ってね!何か足りないものがあったらお父さんとお母さんすぐに準備するから。そうそうあそこで記念写真を撮りましょう!」

「ありがとう、分かった」


 そうして私たちは記念撮影をする場所に移動する。行列が出来ていたが、そこまで時間はかからないだろう。幸い2,3分で私たちの番が来た。そしてカメラマンが写真撮影を開始する。


「じゃあ撮りますよ~。3...2…1...―――」


 これからもう0.数秒で写真が撮られる。しかし、私の顔は記念写真には全く適さない顔をしているだろう。しかしそんなことは今はどうでもいい。あそこで駆け足気味に校門を出ている男性…そしてよく見たら隣で一緒に下校している最上君。


(あれ~()()()のやつどこにもいないな~)


 もしかしたら、いや…私が見間違うはずがない…だってずっと会いたかったんだから。あれは


 誠翔…!

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