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第十八章  月子の想い

街を散歩して逢ったあなたは わたしの父のような表情をしていた

その表情に 隠された想いと違った心の中は 必死にわたしを守る気持ちで満ちあふれていたのね

透明人間はわたしの仮の姿 それでもそれが 私の本当の姿だった

あなたと同じように 誰からも見られたくない気持ちがわたしにもあった

あなたは自分をみすぼらしい男だと言ったよね

あなたは あなたはそんなわたしの心に 恋という種を蒔いていたのよ

そして そしてわたしも あなたの心に恋という種をこっそりと蒔いたの

月の光が栄養となって 小さな芽が満月の夜に頭を出したの

良かった あなたの心に恋の花が咲いてくれたから

わたしの気持ちを受け入れてくれたあなたがいたの


父と同じように爪を汚し ひたすら仕事をするあなたに わたしは惹かれたの

貧素な弁当だって素敵でした

あなたがわたしに内緒にしていたこと わたしには言えないと秘密にして 心の中にしまい込んでいたことを

本当は わたしは知っていたの

あなたが透明人間になって わたしの職場に来ていたこと だってあなたの匂いがしていたから

あなたの汗と油の匂い わたしの傍にいたのだと わたしは気付いていたのです

でもね わたしを気遣っているあなたの気持ちが 無言のあなたを見てわかったの


わたしの過去を聞いて あなたはわたしに浴衣をくれた 七夕の夜の天の川のような模様の わたしに似合う浴衣をくれた

二人で眺めた月夜の空に ひとつ流れ星が見えたよね

わたしは内緒で祈ったの あなたと一緒にいたいですって

あなたが歌ってくれた 「見上げてごらん夜の星を」

わたしの心の深いふかい場所まで染みてきた

涙が止まらなかった 初めてのキスも嬉しかった


二人で行った初旅行 恋人なのか夫婦なのか わたしはどちらでも良かった だってあなたと一緒だから

でもできれば恋人が良かったな

だって 恋愛真っ只中の恋人だったでしょ そう 露天風呂では恋人だったもの

そしてあなたはわたしを守ると約束してくれたのに みんなを助けてこの世から去った

誰が あなたが助けたと知っているの? あなたの命は 大勢の人の命と交換したの?

あなたは本当の透明人間になってしまった わたしの前から消えて 月の光で輝く 虹の向こうへ行ってしまった

あなたはわたしに呼びかけ 話してきたね 本物の虹になるって

わたしの傍でいつも輝いて 周りにいるからって

本当は 本当は わたしも消えて一緒に行きたかった

傍にいてくれると約束したのに だからわたしも消えて良かったのに

ねぇ 月虹は本当に 人を幸せにしてくれるの?

わたしは わたしは あなたを想っているからね

虹の橋をわたしは渡るの あなたの心と繋がる橋を


お願い わたしに宿ったあなたとわたしの 生命の宝ものも守って 

わたしたちの息子にあなたのことを話したわ

あなたのお父さんとお母さんは 月虹でつながっているのよって

あなたにも きっとお父さんの月虹を見ることができるからって

いつも…… いつまでも…… わたしはあなたを愛している……

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