「調達」
「あー、お腹空いた。」
陽も落ちたころ、男はそうぼやいた。
「今日は起きてから何も食べてないしなー。はぁ……冷蔵庫まで探しに行くか。」
そう言って男は怠そうに身だしなみを整える。
「さすがに冷蔵庫に行くのにこの汚さじゃダメだからな。念入りに綺麗にしてと。」
多少は綺麗になった男は、ゆっくりと自分の部屋から出ていく。
「いいか、俺よ。絶対に見つかるなよ。あぁ、絶対にだ。」
男は壁に沿って、息を潜めながら進んで行く。
冷蔵庫までの旅は順調だった。大きな障壁もなく、見つかることもなかった。
「へへっ。辿り着いたぜ。さてと、宝物庫とご対面〜。」
冷蔵庫の中には男の大好物であるチーズが置いてあった。
「いやー、分かってる。やっぱりこいつが1番美味いんだから。」
手早くそれを冷蔵庫から取り出し、扉を閉めることも忘れて帰り道を辿る。
しかし、男は行く手を阻む不穏なシルエットを見かけてしまった。
「おいおい、あいつは俺の天敵様じゃねぇか。見つかったらチーズどころの話じゃなくなっちまう。どうにかして部屋に戻らねば。」
男は無い頭で必死に考えた。
「え、無い頭?馬鹿にしてるのかナレーション!」
男は"無い頭"で必死に考えた。
「いやー、ご主人様も分かってる。普段の飯は不味いけど、たまにこんなご馳走が転がってくるのだから。」
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