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雨、星降りて  作者: 野菜
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第七章 溶ける、雪

あかねは病院で父親と話していた。


「修一郎が大学合格したの聞いた?」

「ああ、昨日修一郎が来て直接聞いたよ。あいつが教育学部に入るのはまだ信じられないけどな」

「前に言った修一郎を助けてくれた女の子がいるって言ったでしょ。その子が修一郎が入る大学の教育学部だったから、影響を受けたのかも。体育専攻なら、サッカーもスポーツも続けられそうだし・・・。そういえばね、その女の子、花香って言うんだけど、うちでバイトしてくれることになった。緋依と優も一緒に働いてくれるって」

「そうか、それは良かった」

「パパも早くよくなってよね・・・。今度、花香と修一郎連れてくるから一緒に話そうよ」

「そうだな・・・」


***


花香と修一郎は夜行バスに揺られていた。二人は冬休みに旅行に行く計画をしていて、修一郎の提案で、長野のスキー場に行った後、富士見台高原ロープウェイからの「日本一の星空」を眺めることになっていた。

だんだんと夜が明けてきて、バスには朝日が少しずつ差し込んでいた。修一郎の隣で眠っていた花香の頭が修一郎の肩に寄りかかっていた。修一郎は眠れずにいて、イヤホンで花香に教えてもらった冬の曲のプレイリストを聞いていた。バスは何度もトンネルを通り、そのたびに雨が降ったり、雪になったり、晴れていたりと天候がころころと変わった。


スキー場で二人はスノーボードを楽しんだ。修一郎は簡単にやってのけたが、花香はずっとこけてばかりいて、2人はそれで笑いあった。疲れた二人は、滑走路を降りて山のふもとの子供たちがいるエリアで雪だるまをつくってあそんでいた。修一郎が間違って花香の雪だるまを壊してしまうと、花香は仕返しに修一郎に雪玉を軽く投げつけた。修一郎も笑って雪玉を投げ返した。


「雪ってたのしいね」


花香がそう言って、修一郎はうなずいた。二人は真冬にスキー場で食べるソフトクリームが一番おいしいと言って、ソフトクリームを頬張った。


夜になると二人でロープウェイに乗った。

空を見上げると、一面に星空が広がっていた。

修一郎は鞄からカメラを取り出した。星空を眺めていた花香は修一郎の方を向いて微笑んだ。星空は何度も見ているのに、花香の後ろの雪原を照らし、輝く星空はいつもよりきれいに見えた。


***


花香と修一郎は大学終わり、いつものハンバーガーショップにいた。


「修一郎君、入学おめでとう。まさか同じ大学になるとは思わなかったけど、嬉しいよ」

「俺がここまでこれたのは、本当に花香さんのおかげです。ありがとうございます」


修一郎は花香にお礼を言った。


二人が店を出るころ、外には雨が疎らに降っていた。二人は傘をさして別々の方向に歩きだした。


少し歩いて二人はお互いに立ち止まった。


「次もまた・・・」


どちらから言うでもなく、花香と修一郎は言った。


「この場所で」

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