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アラカン派遣探索者は意外とヤれる  作者: あおおに


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7/10

金曜日の出来事

 そして、金曜日。

 月曜日の初オーク戦から苦しめられていた筋肉痛もマシになり、俺はダンジョンに来ていた。

 まずはロッカールームで、クリーニング済みのボディースーツに着替え。

 俺は全体的には細みなのだが下っ腹だけぽっこり出てるので、ボディースーツを着るとお腹が少し苦しい。イケオジになる為にも、お腹は引っこめたいところだ。

 なお、髪の毛はまだ大丈夫だ。白髪が多め。

 しまりのない表情のせいで、ボディースーツ姿が似合っているとは言い難い。


 着替え終わると、早々にダンジョンに向かう。

 パーティーだと集まってからもミーティングと称してグダグダやってたりするみたいだが、ソロだとフットワークだけは軽い。

 そして、いつものルートでゴブリンのいる草原エリアを抜ける。

 ルートは、スマートゴーグルに記憶されており、視界にきっちり道案内が表示される。なお、表示外の方向に進めば、また別のモンスターのいるエリアにたどり着くだけだ。必要があれば、他のエリアに向かう事もあるかも知れない。


 でも、今はオークだ。

 1対1でやれる中では、比較的やり易くて実入りが良い相手だ。

 荒れ地エリアに着くと、心持ち身を低くして、オークを警戒する。オークに先手を取られる事だけは、避けたい。

 あんなパワータイプに金棒で殴られたら、どう考えてもただでは済まない。


 しばらく進むと、いたいた、巡回でもしてるっぽいオークが1体。

 周囲に他のオークがいない事を確認するや、俺は【縮地】つきチャクラムを放った。

 例によって、顔面を切り裂かれてオークが狼狽える。うまい具合いに、こいつは金棒まで手放してくれた。チャンスもチャンス。俺はオークに駆け寄ると、脳天にメイスを叩き落とした。

 ガツンという手応えとともに、オークの身体から力が抜ける。


 俺は数歩距離を置くと、周囲に意識を飛ばしながら、目の前のオークの身体が自壊して行くのを見守った。

 ダンジョンのモンスターは生命を失うと、その肉体がボロボロになって形を失うのだ。

 しばらくは正体不明の残骸が残るが、それもいつしか消えてしまう。

 なお、肉体が残骸になっても綺麗に残っている物があれば、それがドロップアイテムだ。

 今回は、青黒い魔石と精力剤の小瓶がドロップした。幸先が良い。


「これは、引っ越しもいけるな。不動産屋に予約入れようかな」

 10万ぐらいの家賃でも余裕そうだ。前の会社にいた頃は、それぐらいの家賃のマンションに住んでいたので、元の生活水準に戻る事になる。

 真桃ちゃんが入り浸ってくれるかなと、ついつい鼻の下が伸びてしまい、慌てて表情を引き締めた。

 今はオーク狩りの真っ最中だ。にやけている場合ではない。


 それからも次々とオークを狩り続けた。

 割と広い範囲でソロのオークが回遊しているので、獲物には困らなかった。運が良い事に、競合する探索者もいなかったし。

 夕方までかかって、その日は魔石が13個に、初級ポーションが2本、精力剤が3本も取れた。いくらになるんだ、これ?そしたら、スマートゴーグルが即座に計算してくれた。視界の隅に出る「984,000円」の文字。


 ひえっ。これは、予想外だ。1日でここまでの成果が出るとは。

 村松氏も喜んでくれるだろう。俺をダンジョンに誘ってくれた担当を思い出す。

 しかし、こんなお金、何に使おう。

 メイスも新しくするとして・・・あ、そうだ。ハンドガンが買えるな。もしもの為に、強力なのが欲しい。

 クルマは、地下都市(ハーミット)じゃいらないしな。


 などと余計な事を考えていたせいで、気付くのが遅れた。

「ぐらあぁっ!!」

 先に野太い咆哮が聞こえた。

 そして、視界に入る、振り上げられた金棒。

 肝が冷える。避けられるタイミングではなかった。


 重い風切り音とともに振り下ろされた金棒は、しかし空を切った。

 俺はオークから5メートル程離れた場所から、それを見ていた。

 【縮地】が起動したのだ。

 俺は手順通りにチャクラムをオークの顔面に投げてから、【縮地】メイスを叩き込む。

 呆気なくオークは倒れ、金棒をドロップした。





 砂漠エリアまで戻ると、俺は自然と真桃ちゃんを探していた。

 いつもの一角にいる真桃ちゃんを見つけ、ホッとする俺。

「あ、オジサン、ボディースーツ買ったのね。それに、それはオークの金棒?」

「ああ、うん」

「オジサン、オークまでいけるんだ・・・って、どうしたの?また、怪我でもしたんじゃ?」

「いや、何でもないよ」


 しかし、真桃ちゃんは怒ったように、じっと俺の目を見つめて来る。

「なんか、おかしいよ?顔色も悪いし」

「ちょっと疲れただけだよ。それより、今日はこれでチャクラムを作ってよ」

「ホントに大丈夫?無理しちゃダメよ?」

 真桃ちゃんは金棒を受け取ると、「重っ!」って文句を言いながらチャクラムを5枚作ってくれた。


「じゃ、行くわよ」

「え?」

「そんなカオしてるオジサン、一人にさせられないでしょ!」

 荷物を畳んで立ち上がる真桃ちゃん。

 こういう展開を期待と言うか予想はしてたけど、彼女にここまで心配されるとは思っていなかった。オークに殺されそうになった一幕が、そんなに俺の態度に出てるのだろうか。




 ダンジョンを出て、一時的に真桃ちゃんと別行動になり、派遣の事務所でドロップアイテムの売買手続きを行う。

 1日で100万からの収穫に驚く事務のお姉さん。

 が、「三烏様、身体の方は大丈夫ですか?」と心配の声をかけられた事には、驚いた。いや、本当に俺の様子はおかしいらしい。

「ありがとうございます。ちょっと疲れただけですから」

 なんだか心の中でお姉さんに頭を下げながら、俺は事務所を出た。


 シャワーと着替えを終えると、真桃ちゃんがとっくに仕度を終えて待っててくれていた。

 今日もフード付きのパーカーで顔は隠し気味だが、デニムのホットパンツから形の良い脚が思いっきり露出している。

「さ、行きましょ」

 ためらいなく、俺の腕にしがみついて来る真桃ちゃん。二の腕にしっかりした圧力の塊が押し付けられ、心臓が不整脈を奏でそうになる。

 端から見れば完全に援交の有り様だろうが、俺は気にせずにデート気分に浸る事にした。


 その日は、新たに見つけた海鮮居酒屋に入り、ひたすら飲んだ。

 真桃ちゃんがまた泥酔しない様にしてやるべきだったのだろうが、俺自身が酔いたい気分だったのだ。

 基本的に、俺は酔うのが好きではない。外出先で眠くなったり注意力が散漫になるのがイヤなのだ。でも、今日はいつもと違う気分だった。とにかく酔って、心の隅に凝った恐怖心を払拭したかった。

 そんな俺に、真桃ちゃんも何も聞かずに付き合ってくれた。





 んで。

 目覚めると、自分の部屋のベッドだった。

 いつもの寝る時のスタイルで、Tシャツとボクサーブリーフだけのリラックスした姿だ。

 ただし、同じベッドの中に、Tシャツと下着のパンツ姿の真桃ちゃんがいた。

 いや、何もしてないよ?

 ホントだよ?

 多分・・・。


 俺が動揺したのが伝わったのか、真桃ちゃんも目を覚ました。

「えーと、その、何もなかった・・・よね?」

 俺がおそるおそる問うと、真桃ちゃんの顔が耳まで真っ赤になった。

「え、ちょ、その反応は・・・?」

「い、いえ、な、何もなかったです・・・よ?」

 そう返事しながら、目が泳いでいる真桃ちゃん。そして、なぜか両手のひらで胸の高まりを覆っている。


 なんとなく、昨夜俺がしでかした事に予想がついて、げんなりする。

 が、彼女には悪いが、ここは何もなかった事にしておいた方が良さそうだ。

「そ、そう?だったら、良かった」

 俺はベッドを出ると、とりあえずコーヒーを淹れた。途中でボクサーブリーフ姿のままだと気付いたが、あえてそのままで通した。

 

 真桃ちゃんにコーヒーを渡すと、「ありがとう」と素直に受け取った。

 さすがに下半身は掛け布団で隠しているが、上半身もTシャツ1枚きり(・・・・)なので、非常にエロい。自分がアラカンである事を忘れそうになるぐらいに、エロい。

 俺は必死にコーヒーの方に視線を向けると、今日の予定を口にした。

「実は、今日は午後から不動産屋に行く気なんだ」


「え、引っ越すの?」

「ああ、収入的には余裕そうだから、もう少し良い部屋に移ろうかと」

「一人でオークを狩れるんですもんね。それは、そうした方が良いかも。

 あ。私も不動産に付き合って良いの!?」

「うん。どうする?若い女の子の意見も聞いてみたいっちゃ、みたいかな?」

「行く行く!ちゃんと私好みの部屋にしてもらわないと!」


 ――そして、午後。

 俺と真桃ちゃんは、地下都市の一角にある不動産屋に足を運んでいた。ガラス張りの店内はやけに明るく、場違いなほど清潔感がある。探索者向けの店らしく、壁には「防音・耐衝撃構造」「魔力干渉対策済み」なんて物騒な文言が並んでいた。


「いらっしゃいませ。ご予約の三烏様ですね」

 出て来たのは、妙に笑顔の眩しい男性スタッフだった。三十代半ばくらいだろうか。いかにも“デキる営業”という雰囲気をまとっている。


「今日はご予算10万円前後でお探しとのことで」

「ああ、はい。そのくらいで――」

「えー?オジサン、それだと狭くない?」 横から真桃ちゃんが口を挟む。

「ほら、オーク狩りできるんでしょ?もっといいとこ行けるじゃん」

「いや、でもだな……」

「ですよね!」

 営業が食い気味に乗ってきた。


「最近はソロで成果を上げる方も増えてまして、皆さんワンランク上の物件を選ばれる傾向にあるんですよ。安全性も高いですし」

「ほら!安全大事!」

 なんだこの連携。軽く背筋が寒くなる。


 それから案内されたのは、最初の条件から明らかに逸脱した物件だった。

 広いリビングに、独立した寝室。キッチンは三口コンロで、風呂は追い焚き機能付き。おまけに防音性能が高く、夜中にトレーニングしても問題ないらしい。


「こちら、月額21万8千円となっております」

「いやいやいや、高い高い!」

「でもオジサン、昨日100万近く稼いだんでしょ?」

「それはそうだけど、毎日そんなに上手くいくとは限らないし――」

「平均で見れば問題ありませんよ」

 営業がすかさずデータ端末を見せてくる。


「三烏様の昨日の成果から推定しますと、月収は――」

「ちょ、ちょっと待て!」

 だが、真桃ちゃんはすでに窓際に立ち、外の景色を眺めていた。


「ここ、いいなあ。明るいし。オジサンの部屋、今ちょっと暗いもんね」

「……まあ、そうだな」

「でしょ?あと、ここなら私も来やすいし」

「……っ」

 その一言が、決定打だった。


「……じゃあ、ここで」

「ありがとうございます!」

 気付けば契約書にサインをしていた。


 店を出たあと、俺はしばらく無言で歩いた。頭の中で、冷静な自分が「やらかしたな」と何度も呟いている。

「オジサン、元気ない?」

「いや……ちょっとな」

「大丈夫大丈夫!稼げばいいんだから!」

 軽く背中を叩かれる。

「それにさ、新しい部屋、楽しみじゃない?」

 そう言って笑う真桃ちゃん。


 ……まあ、確かに。あの部屋に彼女が遊びに来る光景を想像すると、悪くないどころか、かなりいい。

「……頑張って稼ぐか」

「うん!オークいっぱい倒そ!」


 こうして俺は、家賃20万超えの部屋を背負うことになった。

 オークの金棒より、よほど重い一撃だった気がする。

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― 新着の感想 ―
AIの度合い?を減らしたとありましたが、何となくですが、淡々としていた前作に比べてこちらの方が描写的にも良い感じな気がするなぁ
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