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家族のお好み焼き


『他の人に言ってはダメ。繰り返して、3回言って、小さな声でいいから…』


女神様の声だ。

そうだ、女神様が眠ったかと思ったら、急に手を掴まれて…


お告げでもあるのかと、囁き声を聞いたら…

何か呪文のようなものを唱えろって言われて…


『ク…ナガ…ノ…シベ…カエ…』


あぁよく聞こえない。なんだっけ。


でもあの時、確かに…俺はその言葉を、言われた通りに3回言った。


思えば、あれは…

あれは俺達の世界の言葉じゃなかったかもしれない。


そう、どちらかと言えば…今居る此処の。


…日本語っぽかったような…









―――ポッポーポッポー


目覚まし時計の音で今日も目が覚める。

久し振りに女神様の夢を見た…


一時期毎日のように夢に見ていたのに、今ではたまに見る程度だ。



欠伸をして、伸びをして、ベッドから降りる。

クーラーはつけていないのに涼しい。


朝と夜が涼しくて、もう夏じゃないんだなぁと感じる。



カーテンを開ける。

と、外は明るい。


なぜなら、俺が起きたのはいつもの4時とか5時とかじゃないからだ。

仕事がある日は5時半には店に行く。

今日はTwinkle(トゥインクル)Magic(マジック)はお休み。

オーナーや黒江さんやレイさんが…なんか、俺とアンのお祝いをしてくれるそうで…


なんのお祝いかっていうと…

俺達が苗字を貰うお祝い、だ。





夏に海に行った時、俺とアンはルミちゃんから聞いた。女神様の気持ちを。

結局あの後、何回か会っても彼女は女神様の記憶を思い出す事は無かった。

だけど確かにあの時、俺達は女神様の気持ちを聞いた。


女神様が助けたかったのは、俺達だったんだって。

とっても逢いたかったんだって。


そんでやっと逢えたっていうのに、今度は俺達がここを去ってしまうなんて、そんなのはもう意味がないよな。

俺とアンは話し合うまでもなく合意し、黒江さんに改めて"ここで生きていく"と伝えに行った。



黒江さんはそれを聞いて、泣いてくれた。ホッとして涙が出たんだそうだ。

心配して怒ってくれたり安心して泣いてくれたり、こんなに想ってくれて、俺達は幸せ者だなぁって改めて思った。


だから、俺達が名乗る苗字も、黒江さんに考えて欲しいってお願いした。





今日はその考えてもらった苗字を貰って…

俺達個人の連絡先、そう、スマホを贈呈してもらえるのだ。


なんだか一人前になる気分で、嬉しいし、ドキドキする。





アンは今朝まで仕事だったから11時ぐらいまで寝かせておく事にして…じゃあ俺も一緒に寝坊しようと思って、結局目覚ましかけた10時30分まで寝てた。

もう、俺の目覚まし時計の鳩の声じゃ、アンは起きない。最初の頃は起きてたけど、慣れちゃったみたいだ。


去年の今頃はまだお店には出て無かったな。

でもこの世界には慣れてきて…この部屋も馴染んできて…


そういや、この時計。秋頃に貰ったんだっけ。


俺は手元の目覚まし時計をしみじみと眺めた。

そしてベッドの上から部屋を見渡す。


俺達の前には、レティとナティが住んでいたというこの部屋。

白を基調としているけど、明かりは暖色で、雰囲気が柔らかい部屋だ。

カーテンはレイさんが選んでくれた青色。ベッドから降りると足元には黒江さんがくれた薄緑のやわらかいマットが敷いてある。


俺もアンも、女神様も…もう、あの神殿には戻らない。

リトラビアでもアングレルでもなくて。女神様でもなくて。


きっと新しい3人で生きて行くんだな…




「おはよう、リト…」


物凄く眠そうな声がしたから、兄のベッドを見ると…

こっちを向いてはいるものの、まだ寝転がったままのアン。

おはようって言ったくせに、目は開いてない。


「…起きてる?」

まだ寝てるんじゃないかと思って、問い掛けると、数秒後「んー…」と曖昧な返事。

俺は自分のベッドから降りて、寝惚けてる兄をつつきにいく。


「なぁー、お腹空いたよーアンー。」

おでこをツンツン突くと、兄の眉間に皺が寄る。


「んんっ…もー…さっき食べたでしょ…」

「食べてないよ?!」


ゴハンを食べる夢でも見てたんだろうか…。




それから結局11時過ぎにアンも起きて、朝ご飯代わりにオレンジジュースをふたりで飲んだ。

『12時には来てね。』って黒江さんに言われてたから、割とギリギリな感じで身支度をして…


俺達は皆が待つカフェTwinkle(トゥインクル)Magic(マジック)に向かった。







「おっ、ちゃんと来た。」

裏口から入ると、2階に上がる階段の前にレイさんが居た。

手には大きいトレー。その上にボウルと…調味料と…なんか色々乗せている。


「あれ、レイさん2階行くの?」

「今日はな、上でやるんだ。オーナーのご希望。」


俺とアンは顔を見合わせた。

パーティー的なものを2階でやるなんて珍しい。


2階は休憩室。コタツ机が1個あって、座布団とか、仮眠用のベッドとか、本棚とか、テレビがある。

そんで休憩室の隣は店の倉庫部屋。


大きなテーブルは無いから、皆で集まる時はお店のスペースを使う事が多いんだけどな…。




アンと一緒に2階に上がると、オーナーが誰かとスマホを覗き込んで一生懸命何かやっているところだった。

忙しそうだから声を掛けるのを待っていると、後ろから上がって来た黒江さんが気を使ってくれる。


「オーナー、アンとリト来たよ?」


「はっ!よう来たな!こっちおいで!」

やっと気付いたオーナーは、俺達に手招きした。


「なんか頑張ってるみたいだったから…」

「すいません、すぐ声掛けなくって。」


「遠慮なんて覚えてもて…大きくなったなぁ…」

何故かオーナーは感動しているようだ。

大きくなった…成長したってこと?


確かに去年の俺達だったら、何かしてるから後にしようとか、そういうのもあんまりわかんなかったかもしれない。


オーナーの傍に行くと、床には何かの説明書が広げてあって…一生懸命やってたのは、俺達に使わせてくれるスマホの設定とかだったんだってわかった。

そしてオーナーの隣に居たのは、初めて会う人で…

「あっ、この子な、リトとアンの色んな手続きをしてきてくれた子。(はるか)の親戚や。」


川上(かわかみ)葉月(はづき)です。よろしく。」

軽く頭を下げて挨拶してくれた人。

多分俺達と同じか、少し上ぐらいの歳だろうか…

女性?男性?どっちだかわかんない、なんだか綺麗な人だ。


俺もアンも、なんか呆けた声で「よろしくおねがいします…」と返す。


それを見てオーナーが「あははっ!葉月に見惚れとるん?」と笑う。

見惚れてる、うーん、それもあるかもしんないけど…

新城さんの親戚っていうから、何か不思議な力でもある人なんだろうか?


なんだか不思議なものを感じる。


「あかんでぇ、リト。そんなに見詰めたら…葉月の彼氏はヤキモチ妬きやでぇ。」

「えっ!あ、ゴメンなさい。あんまり綺麗だから。」

彼氏、ってことは女性なのかな。


「正直過ぎるわリト…アカンでそんな事、女にほいほい言ったら。」


「俺、女じゃないからいいんじゃないの。」


葉月さんの発言から数秒して、俺もアンも思わず「「えっ!?」」と声を上げた。

女性じゃなかったのか。

じゃあ男性?でも彼氏?そういうこともあるのか。


「女じゃないっていうのは違うやろ?女でもあるんやろ?(しい)と一緒やんか?」

愛海(あいみ)ちゃん!!」

オーナーの言葉に、黒江さんが珍しく大きな声で割って入ってくる。


俺とアンは、オーナーと黒江さんを交互に見る。

事態が呑み込めない俺。

アンはちょっとわかってるみたいだけど"どうしていいかわかんない"って感じ。


「余計な事言わないの!そっち終わったなら料理手伝って!」

「あらら、ゴメンてー。言ってなかったんやな…。」

「言う必要無いでしょう…、もー。ごめんね、葉月君。大きな声出して。」

「いえいえ。あ、そうだ黒江さん前に欲しいって言ってたやつ持って来たよ。」


黙って聞いていると、話は他に逸れたようで…。

葉月さんと黒江さんは1階に降りていった。


オーナーは俺達の方に「ゴメン、忘れて!今日はお祝いやし!」と笑いかけた。

その後すぐに1階と2階を行き来していたレイさんが「なになに、喧嘩でもしたん?」と入ってきて、俺達は取り敢えず首を振っておいたのだった。


ここで俺が『なんで?』とか『どうして?』とか突っ込んだら、多分いけないやつだ。

またオーナーに『アカンでぇー』って言われてしまうだろう。





それから俺とアンは、『今日は働かなくてヨシ!』と座らされ。

皆が準備するのを少し眺めていた。


休憩室には、いつものコタツ机に加えて、背の低い折り畳み机がふたつ出された。

コタツ机には大きなホットプレートが乗せられている。


「と、いうわけでやな。今日のお祝いは、お好み焼きパーティーです!」


一通り準備が出来たであろう所で、オーナーが高々と宣言する。


「おぉー…」と、俺とアンは拍手した。


黒江さんも下から戻って来て、忙しそうに動き回っていたレイさんも座布団に座った。


「アンとリトの苗字発表から行きたいとこやけど、まずはお好み焼きを焼きます!時間がかかるしな!」

言うと、オーナーは俺とアンをホットプレートの傍へ招いた。


「今日は特別になんでも好きなの入れていいんやで…肉か?餅か?コーンか?チーズもあるで…」

オーナーはフッフッフと笑いながら、銀色のトレーに乗った魅力的な具を見せてくれる。


「これが生地?エビとかはもう入ってるんですね。」

アンが大きなボウルを覗き込む。


お好み焼き自体は食べた事がある。レイさん式のやつと、外で食べたやつ。

今日の生地はオーナーが母親から受け継いだレシピで作ってあるらしい。

「まぁお祝いやから、冷凍じゃなくって生のエビとイカ入れたったけどな!」

どこか自慢げに胸を張るオーナー。

俺とアンの為に、いい材料を使ってくれているようだ。


生地にはお好み焼き粉と玉子と、沢山のキャベツ、それからエビとイカ、決め手はたっぷりの長芋のすりおろし。


「私はあんまり実家好きじゃなかったけど、お好み焼きだけは実家のが一番美味しいって思ってる。」

オーナーはホットプレートに生地を乗せながら呟いた。

その顔はなんだか優しい。


実家は好きじゃない、か。オーナーも家族と色々あったんだろうな。


それでも、家を離れてからも作っちゃうお好み焼き…。

美味しい記憶は、オーナーの中で優しい思い出なのかもしれない。


食べるのが楽しみだなぁ…。


好きなものを乗せていいって言われたので、俺もアンもコーンとチーズを選んだ。

「若干そんな気がしてた。」と皆笑った。



それぞれに好きなものを乗せて、一旦ホットプレートには蓋が被せられた。


「さて、じっくり焼いていくで。…と、ここでお待ちかねの、苗字発表や。」

オーナーは黒江さんに目配せをした。


俺とアンはちょっと緊張して、黒江さんを見る。

黒江さんはふたつ茶色い封筒を取り出すと、俺とアンにひとつずつ渡した。


「開けて?」


黒江さんに促されて、俺とアンは封筒から1枚の色紙を取り出した。

そこには大きく立派な字で"三笠 リト"と書いてある。


「…さん…?なんて読むの?」

なんて読むのかわからなくて、俺は首を傾げる。

「さん…と、…かさ?ですか?」

横からアンの声。


かさ?


「よく読めるな、アン。」

笠地蔵(かさじぞう)、の笠かなって。」


「おぉ、アン賢いなぁ…。」感心するオーナー。

「大きくなって…。」さっきのオーナーみたいな事を言うレイさん。


「そう、カサ。(さん)は、ミって読むよ。読み方はミカサ。」

黒江さんが答えを教えてくれる。


三笠(みかさ)

俺はもう一度色紙を見直した。


三笠(みかさ)


「由来は何なんですか?」

今日は俺が"なんで?"って言う前に、アンが訊ねた。


「色々考えて悩んでたんだけど…。そしたら、ふと思い出してさ。夏に海に行ったでしょう?その帰りに君たちが並んで傘を差して帰って行って…。」

海に遊びに行って、夜の海で女神様の気持ちを知って…そして帰って来た時の事だ。

ルミちゃんを駅まで送って行こうとしたら雨が降って来たんだよな。


「君たちの後ろ姿を見てた時、あぁなんかここから始まるのかなって思ったんだ。…君たちはこれから一緒の道を行くとは限らないけど、3人で歩いたことを忘れてほしくないなあって思って、3つの傘で、三笠にしたんだ。」


「ええっ、一緒だよ!これからずっと!3人一緒!」

俺は思わず叫んだ。


黒江さんは「ふふっ」と笑って、レイさんは「そうだよなぁー。」と優し気に呟き…

オーナーは「リトはやっぱりまだ子供やなぁ。」と笑顔で溜め息を吐いた。


アンはというと、困ったような嬉しそうな、なんともいえない顔で「ずっと一緒だよ。」と俺に言った。




それから、お好み焼きはレイさんに見事にひっくり返され…またしばらく待つと、美味しそうにフワフワに焼き上がった。


「三笠アン、三笠リト、これからもここでいっぱい美味しいもの食べ!今日はおめでとう!かんぱーい!」

オーナーのお言葉を頂戴して、皆で乾杯した。

飲み物はオーナーが持って来てくれた、お好み焼きに合うというワインだ。


俺もアンもそんなにお酒は飲まないようにしてるけど、今日は特別。

『今日は家族のお祝いだから1杯は皆で同じのを飲もう』って、オーナーが言ってくれたんだ。


そのワインは葡萄!って感じの味だった。

甘くはないけど、濃い味。大きな葡萄を皮ごとかじっているような。

確かにこれは、お好み焼きの甘いソースと合うのかもしれない。


オーナー式のお好み焼きはというと…

ちょっと焦げたチーズ、ぷりぷりしたコーン、トッピングも勿論美味しかったけど…

なによりやっぱり生地が美味しかった。


キャベツが甘くて、フワフワして、軽い感じ。だけどエビもイカも入ってるから、食べ応えはある。


小さめに焼いたこともあって、何枚も食べれそうに思えてしまう。


「次は何乗せる?」

乾杯の後すぐ、レイさんは次のお好み焼きを焼き始めて…

俺は美味しいお好み焼きを頬張りながら、次の美味しいお好み焼きに想いを馳せたのだった。






結局俺はお好み焼きを6枚食べた。

お腹一杯になったけど、レイさんがデザートに梨を剥いてくれて…それは別腹ってやつだ。


しゃくしゃく気持ちいい音をさせながら、爽やか味の梨を食べる。


美味しいなぁ、梨…もしかしてこないだミモザで食べたマチェドニアに入れても美味しいかも…

次の土曜日にはルミちゃんのお店に行こうかな…

そうだ、スマホも貰ったから、連絡先を交換しに行かないと…


「ふふっ、リト嬉しそうだねぇ。ルミさんの事考えてるの?」

突然に耳元で黒江さんの声。

「えっ!わ、…えっと…」

俺は慌てて座ったまま後退る。


そんなに嬉しそうな顔しちゃってたのかな俺。

と…それより…

「黒江さん…めっちゃ酔ってる?」

「んっ?えーなに?聞こえない?」

と、また寄って来る黒江さん。

いつも垂れ目だけど、もっと垂れ目だし。

顔ピンク色だし。

いつも囁き声みたいな喋り方だけど…いつにも増して…なんていうか…


「こらこら、リトに絡まないの。酔っ払いめ。」

レイさんが後ろからがっしりと黒江さんを抱えると、仮眠用ベッドにずりずりと引きずっていく。


良かった…。なんだか、変な気持ちになるとこだった…。

いや、なんだよ変な気持ちって…!

自分にツッコミを入れてから、ふと俺は気になった事をオーナーに訊いてみる。


「ねえ、オーナー。俺どうしても確認しときたい事があるんだけど…」

「おう!なんでも訊きや!」

オーナーもちょっと酔っ払っていつもの1,5倍陽気になってる。


俺は黒江さんに聞こえないように、小さな声で訊ねた。

「あの…この世界だと、男の人が女の人って事は、よくあるの?逆もある?」


「へっ?」

オーナーは一瞬固まる。

瞬きもせずに俺を見詰めて、それから「ふっ!ははっ!あははは!」と爆笑した。


「あー、さっきのな!葉月と椎のことやんなぁ?あれは特殊なケースやで。最も、心だけは別やけどな?」

「そうなのかぁ…。でも心だけは別って?」

「んー、何をもって男っていうか女っていうかって難しいやん?体はさ、まぁいうたら一目で分かるけど…。葉月と椎はな、体が男女混合やねん。心はどっちかというとふたりとも男じゃないかなあ?」

俺は頷きながら話の続きを聞く。


「で、心っていうのは見えないやろ?分からんし。こう、心が男だったり女だったりっていうのは、必ずしも体と一致しないんじゃないかなって事!よくあるとは言わんけども、そういう事もあるで。」


「はぁー、なるほど…じゃあ俺も、もしかしたら女の子かもしれないんだ!」

「えーいやぁ私が思うに、リトは男ッポイけどなぁー…」

「リトは男でしょ…」

アンまで追随してくる。


何をもって男っていうか女っていうか難しいって言ったくせに。


しかし男らしさとか女らしさってなんだろうな?


よくわかんないけど…うん、まぁ、取り敢えず…

「ルミちゃんはきっと女性だよね…」


ぽつりと声に出てしまう。


と、オーナーとアンが一緒に吹き出して笑う。

「なんや!彼女が彼だったらどうしようって話か!」

「僕は好きならどっちでもいいと思うけど…ふふっ!」


「なんで笑うんだよー!?」


ふたりに笑われて、焦る。

そんなにおかしいこと言ったかな?


でもふたりとも俺に同じ言葉を返した。

「何を悩んでるのかと思ったら、好きな人の事だったのが可愛くって」だって。



…好きな人の事…

そういえば、アンも焦ってたな。

ナティとそういう…なんていうか、イチャイチャしてるって言われて。


恥ずかしがってたけど、俺もやっぱり、そういうアンが可愛いと思ったかも。


アンはいつも冷静でしっかりして居ようとしてくれる。俺が頼りないから。

でも、そんなアンが、隠せない気持ちっていうかそういうの見せてくれると…


なんか嬉しいし。

可愛いなぁなんて、思っちゃうんだよな。



あれ。でもアンは…

もし、アンがナティと家族になったら…

Twinkle(トゥインクル)Magic(マジック)から離れていってしまったら。


…俺は?


いや、俺だって…

ルミちゃんと…


でもそしたら3人では…



「どうしたん、リト。しょんぼりして。」

「笑い過ぎた?ゴメンねリト。別にからかってたわけじゃないんだよ。」


「ねえ、俺…いつまでアンと家族で居られるのかなぁ…」


兄は目を瞬かせて俺を見た。

そして「ずっとだよ?ずっと家族だよ?」と言ってくれる。


でもなんだか俺はモヤモヤしたままだ。


そこにオーナーが、俺の肩に手を置いて語り掛けてくる。

「あんなぁ、リト。さっき椎が言ったやろ?別の道を行くかもしれないけど、って。別の道を行っても、家族は家族やし。物理的に距離が離れる事があっても、気持ちが傍に居ればええと思うよ?」



「家族ってのはな、血の繋がりでも、物理的事実でもないねん。気持ちよ?私とあんただって、もう家族でしょうが?あんたがどこに行っても、私はあんたのお姉ちゃんよ?」



「まぁ苗字もらった日に、苗字が違ってもーなんて言うのアレやけどね。」と、オーナーは笑って締めた。


俺は嬉しいやら、何に悩んでいたのかわからないやら、涙が出てきて。

「うんっ…ありがとお…」

ちょっとぐすぐす言いながら、愛海オーナーにお礼を言って。


また梨をかじった。


「おいしいいいい…」


「泣くのか食べるのかどっちかにしなよ、もう。」

アンは俺にタオルを差し出してくれて、オーナーは「おぉよちよち。」って俺の頭を撫でた。




やっぱり俺はまだ、子供かもしれない。








次の土曜日は、アンと一緒にルミちゃんのお店に行こう。

ミモザで美味しいランチを食べて、自分で連絡をとれるようにして…



そうだ、パフェも食べたいし。

回転寿司とかも行きたいな。

お祭りも行きたい。

キャンプもしてみたい。

うちにも遊びに来てくれるかな…


ルミちゃんはもう、したことある事ばっかりかも。

でも、一緒に行きたいな。



3人で…





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