夏のお出掛け家族のSA
「ねえルミちゃん、今度外に遊びに行こうよ。3人で。」
ある土曜日。
僕らはルミさんのお店"ミモザ"に来ていた。
今日の定食は"とうもろこしご飯の夏野菜ハヤシライス"だった。その美味しい昼食を食べ終わり、デザートを食べていたら…珍しく店内のお客さんが僕らだけになった。
そしたら、ルミさんが僕らの席に来てくれて…
お互い近況報告会をして…
そこでリトのこの発言である。
ルミさんは言われてすぐ「いいよ!」と返事して…それから、
「いいけど、どこに?」
と訊き直す。
リトは勢いで言ったのか、
「それはこれから考える。」
と応えた。
僕もルミさんを誘うなんて聞いてなかったし、ただ呆然と見守ってしまった。
3人でっていうなら事前に相談してくれよ…。
隣で溜め息をついても気にする事無く、リトは機嫌良さそうにデザートの最期の一口を食べ終わり…
「これ美味しい!また食べたいなぁ!」とルミさんにリクエストしている。
僕の前に置かれている綺麗なガラスの器には、まだそのデザートが半分は残っている。
色とりどりのフルーツが食べやすい大きさにカットされて、甘いシロップの中に輝いている。
「なんだっけこの…マ……なんだっけ?」
「マチェドニアね。」ルミさんはクスクス笑いながら答えてくれる。
「リトはフルーツが好きなんだねぇ。」
「好き。ルミちゃんは何が好きなの?」
「えー、私はねぇ…」
ふたりの会話を眺めながら、僕は少しだけぬるくなったシロップとスイカを口に入れる。
甘くて爽やかで、美味しい。
季節はもう夏だ。今日みたいな暑い日にピッタリのデザートかもしれない。
思えば僕らが元居た世界…元居た場所はかなり暑かった気がする。
こんな風に涼む手段もあまり多彩では無かったし。
神殿に居た時は快適といえば快適だったんだけど…やっぱりそれは生きる為の快適であって…
暑いからこその楽しみなんて、考えもしなかったな。
「アンも気に入ってくれたんだねぇ、よかったよ。」
いつの間にかルミさんが僕の方を見てニコニコしている。
僕は相当嬉しそうにマチェドニアを食べていたらしい。
フルーツは好きだし、確かに美味しいけど。自分の思っている事がリト以外にバレるのってなんだか恥ずかしい。
最近、感情が顔に出てしまうなぁと自覚している。
それはなんの影響なのか…心当たりが無いわけじゃない。
まだ、リトにも話してない事だ。
「あつーい、冷たいのあるかなぁ」
「すいませーん、4人なんですけど」
「あっ、いらっしゃいませー!」
時刻は14時をまわっている。外は一番陽射しが厳しい時間帯かもしれない。
顔を手で扇ぎながら、男女グループが来店した。
僕らと同じ年頃だろうか。
そういえば、今は夏休みというもので、観光地に若い人が多いのだとレイさんに聞いたばかりだ。
若い人…僕らぐらいの歳だと、どこで何をして遊ぶものなんだろう?
「ゆっくりしてってね。」
ルミさんは僕らに笑いかけると、お客さん達の接客へ去って行った。
僕は丁度空になったガラスの器をぼんやり見詰める。
そこにリトがなんだか心配そうに話しかけてくる。
「アン?デザートおかわりする?あっ、今日のおやつ蒸しパンあるみたいだぞ?」
僕は別にデザートを食べ終わってショックを受けてる訳じゃないんだけど…。
多分おやつ食べたいのリトだし。
けど、今日のメニューにある"チーズとコーンの蒸しパン"の魅力には抗いがたいのも確かだ。
「じゃあリトが蒸しパン注文して、僕に一口頂戴?」
「いいよ!じゃあ2個注文して、食べれない分は俺が食べてやるよ!」
確かにその方がリトもいっぱい食べれていいかも。
我が弟ながら賢いなあ。と思いつつ、ルミさんを呼ぶリトを微笑ましく眺めたのだった。
そして、結局リトはほぼ4個の蒸しパンを食べ、僕は温かい紅茶をおかわりして…
カフェタイムで混んできたミモザを後にした。
お会計の時に『遊びの相談はこっちに連絡してね!』と、ルミさんに連絡先をもらって。
「あぁ、これはアプリから連絡するやつだねえ。」
書かれた連絡先が数字ではなかったので、帰って黒江さんに相談した。
するとどうも僕らには扱えないものだったらしく。
「ほら、お店のスマホで使ってるでしょ。KAINっていうアプリ。あれの連絡先だね。個人同士の連絡にも広く普及してるんだよ。」
「えー、じゃあ俺達はどうやってルミちゃんに連絡したらいいの?」
リトが心底残念そうに肩を落とす。
すると黒江さんはそんなリトを見ながら考えるような仕草をして…
「今回は僕のスマホから連絡してあげるけど…次回からは自分達で連絡が取れるようにしてあげる。そろそろ個人用に持たせてあげたいなって思ってたし。」
「えっ!すっ、スマホ持たせてくれるの?」リトは前のめりに黒江さんに近付く。
僕は「大丈夫かな…?」と心配の声を上げはしたけど…内心嬉しい。
「ちゃんと使い方を改めて勉強すれば大丈夫。あー…でも、その前にね。…確認したい事が、ひとつあるんだ。」
急に真面目な顔になり、黒江さんはいつもの囁き声からさらに声を落として話した。
「ふたりは…もう、前の世界に戻る気は無い?」
「「えっ?」」
僕とリトはきっと同じ表情をしたと思う。
今そんな事を訊かれるとは思わなかった。
前の世界に戻る気と言われても…
戻るという考えなんて無かった。
そもそも僕らはあの世界であの時、死んだんだ。
けど…なんの怪我もなく、健康な状態でここに来た事を考えると…
このまま戻れるということも、有り得なくはないんだろうか?
例えば、僕らが死んだ瞬間、ではなく。もう少し前とか…。
ここで目が覚めた時のような、まだ傷一つない体の時だ。
もしそんなことができたなら…
僕らはあの可哀想な女神様を助ける事ができるんだろうか?
「元の世界に戻ったりできるの?」
リトも同じ事を思ったんだろうか、もしできるなら戻りたいとほんの少しでも思ったのだろうか。
「無事に戻れるかはわからないけどね。それについては遥に訊いて?…個人用の連絡手段は、君たちがこちらの世界で生きて行くんだと決めたなら、僕が手配してあげるよ。」
黒江さんは、僕らがすぐに『戻らない』と言うと思っていたんだろうか。
ちょっと寂しそうな微笑みを浮かべた。
僕は…多分リトも、今のここが大好きだ。
TwinkleMagicが大好きだし、ここが僕らの居場所で、家だと思ってる。
黒江さんもレイさんも、オーナーも、僕らの家族だ。
五条君も、レティもナティも、吉春君も、ルミさんも、大切な友達。
だけど…
あの世界の、あの時の、女神様を…
置いて来てしまったような気持ちがずっとある。
もしもあの白い手を取って、外の世界へ連れ出せるなら…
3人であの場所から逃げ出せたなら…
それが、できるなら…
僕も考え込んでしまって、3人で居た休憩室は静まり返った。
その沈黙を破ったのは、わざとらしいぐらいに元気なリトの声だった。
「黒江さん!俺ね、もう一個教えて欲しいんだけど!」
「えっ?あぁ、うん、なに?」
「夏って、どこで遊ぶもの?!」
黒江さんはポカンとリトを見詰めてから、「ふふっ」と笑った。
「そうだね、夏ねぇ。海なんかいいんじゃない?」
海。
黒江さんの一言がキッカケで、僕らは海に行く事になった。
それをレイさんに話すと、「えっ?お前ら泳げるの?」と心配され、その言葉で僕らは海は泳ぐものと初めて知り…
「泳がなくていいじゃない、海辺で遊べばいいんだよ。」という黒江さんの言葉はもうリトには届かず。「海!水に入って遊ぶの?やりたい!」とはしゃぎまくり…
おまけに、新城さんの絵画教室に行った時に、吉春君に「今度海に行くんだ!」と話してしまった結果…
当日になってみれば、何故か"みんなで海に遊びに行く"ということになってしまっていた。
「えーっ、オレはリトと一緒がいいぞ!?」
吉春君の元気な抗議が響く、TwinkleMagicの店の前。
車が2台、狭そうに停車している。
リトの青春が気になるオーナーも加わって、結局総勢9人。
海まで車で行く事になり、五条君と新城さんが運転していってくれることになった。
リトと一緒がいいとわめいていた吉春君は新城さんに回収され、リトはというと「お前は雅の方へ行け。」と追い払われた。
僕も五条君の車へ行こうとすると…
新城さんに「お前はこっち。」と引っ張られる。
「えっ、なぜ?」
「たまにはお兄ちゃんの居ない環境にしてやらんと、成長しないだろ?」
そういうと新城さんはニヤリと笑った。
五条君の車には、オーナー、ルミさん、リト。
新城さんの車には、吉春君、レイさん、黒江さん、それから僕が乗り込んだ。
目的地の海まで2時間程かかるらしい。
そんなに長い間リトと離れていたら、僕がソワソワしてしまいそうだ。
無事にみんなが車に乗り込み、陽射しが眩しくなってきた朝。
海へ向けて僕らは出発した。
最初の30分は、僕と一緒に窓の外を通り過ぎる車を眺め、ナンバープレートで算数遊びをしていた吉春君。
段々と欠伸が多くなっていき…ついに眠ってしまった。
吉春君が眠ると、車の中はフッと静かになる。
助手席には黒江さんが座っていて、後ろに僕を真ん中にして吉春君とレイさんが座っていた。
リトはどうしているだろうか。
また余計な事を言ってしまってなければいいな。
でもオーナーが居るから上手くフォローしてくれるかな?
黙って車に揺られていると、やっぱりリトの事ばかり考えてしまう。
弟の傍に居て、成長できてないのは僕の方かもしれない。
静かになるといつもリトが話題を振ってくれる。落ち込むと笑わせてくれる。
リトがいつも傍に居るから、僕は"しっかりしたお兄ちゃん"で居られるだけなんだ。
「なぁ、アン?」
ふと、レイさんが話しかけてくる。
何故か緊張したような面持ちで。
「あのさ。お前最近、…変わった事あった?」
「えっ?変わった事?」
変わった事。なんだろう。
すぐには思い付かず、首を傾げてしまう。
「…いやその…ナティシアが。うるさくて。お前にスマホ持たせろって。」
そう言われてやっと、"変わった事"が思い当たる。
庭でキャンプして…それから…
ナティが僕に恋をしていると知って、僕も彼女に魅かれていると気付いて。
あの後も双子姉妹は2度程TwinkleMagicに顔を出した。
だけど、僕の気持ちはナティに言ってない。リトにも言ってない。
彼女に魅かれているとも、好きだとも。
でもナティシアの方はレイさんには打ち明けているのだろうか?
「なんだヤキモチか?お兄ちゃん?」
運転席からからかうような声。
「違うし!遥だって妹の事心配になるだろ!」
「うっせーわ。」
そんな言い合いの横で、黒江さんがボソッと呟いた。
「そういえば全員"お兄ちゃん"だったね…」
そうか、黒江さんは弟が居たんだったな。とても可愛がっていたんだって言ってた。
少なくともここに居る兄達は、弟妹の事が大切で、大好きなんだろうな。
離れてるとつい考えちゃうのは、僕だけじゃないよな。
「ふふっ」
僕はなんだか嬉しくなって、笑ってしまった。
それからまた30分程走っただろうか。
目的地まで丁度あと半分ぐらいの所で、僕らはサービスエリアというものに降り立った。
車でこんなに長距離移動する事は無かったので、こういう所にも来た事がなかった。
五条君の車から降りたリトは、僕の所に一目散に来ると思っていたんだけど。
なんだかルミさんと楽しそうに話していたりして。
安心したような、寂しいような。
しかし、父親の『吉春ー、サービスエリアだぞ。』の一声で飛び起きた吉春君が僕の手を引っ張ってくれたので、その寂しさは紛れた。
「アン!行くぞ!ここにはアレがあるんだ!」
「アレ?ってなに?」
僕は行き交う車に気を付けながら、吉春君とサービスエリアの建物に向かった。
中にあった吉春君の目当てとは、"フードコート"だった。
ショッピングモールのフードコートよりは狭いけど、品揃えは豊富で、この土地ならではのメニューもあるみたいだ。
「父!オレは唐揚げとうどんと肉まんとソフトクリームが食べたいぞ!」
「…うどんな。朝ご飯だぞ?わかってんのか?」
元気な吉春君の要望に、新城さんは呆れ顔だ。
時刻は朝8時頃。
出発前に各自軽くは朝ご飯を食べてるけど、そろそろお腹が空かない事もない。
吉春君程は、元気に食べれなさそうだけど…
リトは吉春君と同じぐらい食べたがりそうだな。
そうだな、きっと…この特製牛丼とか…
僕がオススメメニューの看板を眺めていると、うしろから「リトはコレ好きそうだなぁ。って、思ってる?」と黒江さんが顔を出した。
「えっあっ、へへ…」
図星を突かれてちょっと恥ずかしくて、僕は照れ笑いをする。
リトは五条君グループで先にトイレに行ってるみたいだ。
「弟が大人になっちゃうと、ちょっと寂しいよねぇ。」
黒江さんも一緒に看板を眺める。
自分の弟の事を思い出しているのか、ちょっと切ない表情だ。
「…黒江さんの弟って、どんな人?」
「え?うーん。そうだね、本が好きで。珈琲が好きで、チョコレートが好きで…真面目だったかな。」
「あはは、黒江さんと似てますね。」
「そう?あー、そういえば、そうだね。ふふふ。」
黒江さんも、本が好きで、珈琲が好きで、チョコレートが好きだ。それに、真面目。
「顔は全然似て無かったよ。アンとリトみたいには、息も合わないしさ。優しくしようとしても上手くいかないし、相談しようとしてもめんどくさがられてさ。仲は悪くなかったけど。」
「そうなんですか。…でも、僕も、最近ちょっとリトとズレてきた気がするかも…」
「そっかぁ、ふふ。お互い自分の世界ができてきたのかもねぇ。」
黒江さんは優しい顔で微笑んだ。
自分の世界か…
こんな風に、別々に行動する事が増えて、別々の事を思って…
離れて行っちゃうのかな。
でもそれが、自分の世界を持つって事なんだろうか。
また寂しい気持ちになりかけた所で、それを察してか黒江さんは僕の肩に手を置いた。
「アン、あっちにパン屋さんがあるよ?行ってみない?」
ちょっとご飯や麺や揚げ物は重いなぁと思っていた僕は、その提案にすぐ頷く。
「いいですね!」
吉春君が新城さんにソフトクリームをせがむ声を背で聞いて、僕は黒江さんとパン屋さんの方へ向かったのだった。
パン屋さんに入ると、そこにレイさんも居た。
レイさんが持ったトレーの上には既に4つほどパンが乗っている。
「ちょっと、レイ。買い過ぎ。」
「あっ、いや、椎の分だよ?食べるだろ?チョコデニッシュ。ウインナーパンもあるぞ。」
レイさんは黒江さんの好物をよくわかっている。
お店が休みの日には、一緒に出掛ける事もよくあるみたいだし、誰の目から見ても仲良しで"家族"って感じがする。
「アンは?どれにする?」
レイさんが手にしたトングをカシャカシャ言わせて訊いてくれる。
…そっか、僕の分も一緒にトレーに乗せてくれるんだな。
いいな、なんか。家族に入れて貰ってる感じ。
「僕は…うーん、じゃあ、コレ。」
「おっ、いい趣味!」
「あははっ可愛い~!」
僕が選んだのは、動物の形をしたメロンパンだった。
パン屋から戻ると、新城さんと吉春君はテーブルについていて、リト達も丁度注文を終えて戻ってきたところだった。
「わあっ!アンのそのパン可愛いね!恐竜かな?」
ルミさんが僕がテーブルに置いたパンを見て歓声を上げる。
丸いメロンパンに長い首と、短い手足がついている。何かの動物…と思ってたけど、恐竜、そうかなるほど。
「なんか美味しそうに見えてね。ルミさんは何か買ったの?」
「うん、私はお蕎麦食べるんだ。リトはねえ、凄くいっぱい頼んだんだよ。」
笑いながらルミさんが教えてくれたリトの"朝ご飯"は、僕の予想を軽々超えた量だった。
特製牛丼、唐揚げカレー、わかめうどんといなり寿司。
みんなが食べ終わるまでにその量食べる気なの?って、思いながら、眺める。
僕も、ルミさんも、吉春君まで、つい見惚れる食べっぷり。
「ほら見てないで食べな。」
新城さんが吉春君に注意する声で、僕もハッと我に返る。
僕の手には丸いメロンパンの部分を半分かじられた恐竜。
それから追加で買ってきたヨーグルトドリンク。
どっちもお腹に優しい感じがして、美味しい。
甘いメロンパンをかじって、ヨーグルトドリンクを飲むと少し酸味があって爽やかで。
なんだかホッとする。
みんなの朝ご飯を見回すと、個性が出るなぁって思う。
それぞれに違うものを食べている。
オーナーはコロッケとプリン。五条君は親子丼。
新城さんは吉春君と一緒にうどんと唐揚げとご飯のセットをわけて食べている。
レイさんは黒豆パンとカレーパン。黒江さんはウインナーパンと珈琲。
「あれ、黒江さんチョコのやつは食べないんですか?」
「まだ僕には早いんだよ。朝おやつに10時頃食べる。」
「朝弱いなぁ椎はー。」
「もー、愛海ちゃんに言われたくないよ。」
黒江さんは店の外ではオーナーの事を"愛海ちゃん"と呼ぶ。
黒江さんとオーナー、それから新城さんは、TwinkleMagicの創設者なんだよな…。
あの場所がどうやってできたのか、その物語をいつか聞いてみたいな。
それから…
なんとリトもみんなに合わせて食べ終わって、全員でごちそうさまをして…
各自トイレに行ったり飲み物やお菓子を買ったりして、一息つく。
そしてまた二手に分かれ、車に乗り込んでサービスエリアを後にした。
車に乗る時、チラっとリトを見ると、リトもこっちを見ていた。
そして弟は、ふたりだけのサインで僕にこう言った。
『アン、好き!』
僕はビックリして返事しそこねた。
普段そんな事言わないのに。
リトも、僕も、きっと楽しいけど。
やっぱり離れてると寂しいって、ちょっと思ったのかな。とか。
僕もリトも、大人になって、神殿みたいな場所に縛られているわけでもなくて…
離れ離れにされても、もう追いかける事もできて。
むしろ今、同じ目的地に遊びに出掛けてる。
女神様の生まれ変わりの、ルミさんにも会う事が出来て。
本当に幸せ。
だけど…
…だけど……
あの女神様の心は。
想いは魂は…どうなったんだろう。
『ふたりは…もう、前の世界に戻る気は無い?』
窓の外を流れる眩しい景色を見ながら、僕の頭に何度もその問いが繰り返し浮かぶ。
こんな幸せな世界から、前の世界へ…
正直、怖い。
…女神様、貴女の心は、今どこに居るんだろう…。