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14/23

青春の味と懐古の味


「今度さぁ、春祭りがあるんだー。うちの大学で。」


五条君が自分で作ったパフェをつつきながら言った。

時刻は15時、いつもならティータイムでそれなりに忙しい時間だ。


今日はTwinkle(トゥインクル)Magic(マジック)の休業日。

月に4日は元々休業日があり、あとは店員の都合と、オーナーの気まぐれ次第。


本日は元々決まっていた休業日に、五条君とレイさんが新作パフェの試作に店に来ていた。

そこに僕とリトもお邪魔している。


「春祭りってなに?」

試作品をご馳走になっていたリトが、口の端に生クリームをくっつけたまま訊ねる。


「んー、文化祭みたいなやつ?…って、リトとアンは学校行った事ないのか。どう説明したらいいかなぁレイさん。」

「文化祭、…まあ、あれだ、学校のみんなでやるお祭りだな。」


「「お祭り。」」


「そう、お祭り。」


"学校"の事は知っている。

この世界のこの日本という国では、学校がたくさんあって、小さい頃からそこへ通い勉強するのだ。

大人になるまでいくつかの学校に通い、それが終わると、それぞれ仕事に就くというのが一般的な流れのようだ。


僕たちは学校へ行った事は無いんだけど、"教科書"は持ってる。

オーナーや黒江さんが用意してくれたものと、レティナティ姉妹のおさがりだ。


今もそれを使って時々勉強する。


そういえば新城さんちの吉春君も、学校へは行かずに家で勉強してるって言ってたな。

"一般的な流れ"とはいえ、絶対ではないらしい。

色んな選択肢、色んな道があるって、いいなぁ。



「お祭りっていうと、そこの神社とか商店街でたまにやってるようなやつ?」

五条君はまた「うーん」と腕組みをしてから「似てるけどちょっと違うかな。来てみる?保護者のお許しが出たら。」と誘ってくれた。


「えっ、絶対行くし!」

「行きたいなぁ。…保護者、って、レイさん?黒江さん?」

僕とリトは同時にレイさんを見た。

今日は黒江さんは来ていない。


「雅がずっと付いててくれるならいいけど。」

とレイさんが応えると、五条君はきっぱりと言った。

「ずっとは無理!俺にも青春ってものがあるんで!」


その言葉にリトは少ししょげて「じゃあ、ダメ?」とレイさんに訊き直す。


「いやー…うん、いいんだけどさぁ…」レイさんは心配そうな顔をしている。

学校ってそんな危険なところなんだろうか?


そこに五条君が提言してくれる。

「レイさん、俺思うんですけど。ふたりにも青春ってものが必要じゃないすかね?」


「ミヤビ、青春て何?」


「青春っていうのは、こう…なんつーか…友情とか恋とかが入り乱れたなんかこう…」


僕とリトは真剣に五条君の話に頷く。けど、説明はそこから先に進まなかった。

言葉で説明するのは難しいみたいだ。


「なんかこう!若さっていうか?ねえ、レイさん?」

「俺に振るかよ。…でもまぁ雅の言う事もわかるっちゃわかる。リトとアンはカルト育ちみたいなもんだもんな…」


「カルトってなに?」


「幼児か!なぜなぜ期か!」リトの様子に五条君がツッコミを入れる。

なぜなぜ期、それは幼児が成長の過程で見せる"あらゆるものに疑問を持つ期間"の事を言う。

最近育児に関する本で読んだ所だ。


なぜ育児の本を読んでいたかというと、吉春君と交流するようになったからだ。

僕は子供の相手をすることは無かったから、少しでも学んでおきたいと思っていた。



「まぁカルトの事は置いといて、だ。雅が案内してくれた場所なら行っていいよ?」

結局レイさんは折れてくれたけど、五条君は「いや過保護か!」とまたツッコミを入れたのだった。


リトはお菓子をくれたら誰にでもついていきそうだし、僕だって人の事は言えない。

なにせ、怪しい人に付いて行ってしまった前例があるわけで…



それでもやっぱり、新しい事を知るのはワクワクしてしまう。

学校。普段は踏み入る事の無い場所。


五条君が通っている、勉強と交流をする場所。


一体どんなところなんだろうか。







後日、黒江さんにも了承を得て、僕らは五条君の通う"天宮(アマミヤ)学院大学"の春祭りに行ける事になった。


黒江さんも何か渋々という感じだったので、リトがまた「なんで!」「どうして!」と問い詰めてみると…

「いや…新城さんも、……吉崎も……あの大学出てるから…」と、言い辛そうに教えてくれた。


学び終えてそこを巣立っても、度々訪れることもあるらしい。

なので、うっかりあの吉崎さんと遭遇でもしないかと心配なようだ。


…吉崎さんはともかく。新城さんは別にいいんじゃないのかな。

「じゃあ新城さんに付いてきてもらったらどうだろ!」とリトも言うので、一応連絡はしてもらったんだけど…


『は?子守りは吉春だけで充分だ。』と断られてしまった。


確かに新城さんにはお世話になりすぎだし。

迷惑かけてばっかりだし。


僕らの面倒まで見てもらうのもいい加減申し訳ない。




そんなわけで、僕とリトは予定通り五条君に"天宮学院大学春祭り"を案内してもらうことになったのだった。







当日まで間があって、リトは毎日カレンダーを眺めて「楽しみだなぁ」なんて言っていた。

僕も内心ソワソワしていた。学校を舞台にした物語の本をいくつか読んでしまうぐらいには。



そうして迎えた春祭り当日。


五条君にTwinkle(トゥインクル)Magic(マジック)の前まで迎えに来てもらって、一緒に大学へ向かった。

電車の最寄り駅はここと一緒だけど、歩くと大分遠いのでバスに乗って向かう。


五条君は車を持っているけど、車で通う事は禁止されているようだ。

それに五条君曰く「通学も青春の一部ってやつだよ。バスとか?通学路とか?そこで何かが起こったりするわけ。やっぱ体験しとかないとね!」とのことだ。


別段何かが起きたわけではないけど、春祭りに向かう人たちが沢山乗って来て賑やかな雰囲気は体験できた。



天宮学院大学前というバス停で降車する。

バスに乗っていたほとんどの人がここで降りた。


人がたくさん居る。

その理由は歩きながら五条君が説明してくれる。

「卒業生や家族とか友達も来るし。あと地域の人も、ここを受験する高校生なんかも来るよ。でかい学校だから、春祭りは3日間やるんだけど、全日こんな感じ。」


迷子にならないように五条君について歩き、大きな門をくぐって、校内地図の前で立ち止まる。

「ここが現在地。俺が通ってるのは芸術学部なんだけど、こっちの建物ね。新城さんもたまに講師で来るんだよ。」

五条君は地図の左側を指差す。


全体図を見るととてつもなく大きい学校だということがわかる。


芸術学部が入っているという建物には3号館と書いてある。

敷地内に建物は8号館まであるようで、目的をしっかりしておかないとあっと言う間に迷子になりそうだ…


「そんで、食べ物の屋台が出てるのはこの辺で…結構人気で売り切れるからもう行く?俺も昼から用事あるしさ。」

「食べ物!お腹空いた!」

リトのお決まりのセリフが出て、僕らは食べ物の屋台が出ているエリアに向かう事になった。




到着したのは中庭。ぐるっと回廊で囲まれた広場に食べ物の店がたくさん出ている。

まだ11時になったばかりだけど、大勢の人が屋台を楽しんでいた。


「人気なのはクレープとか。…ふたりが好きそうなのは…あっ、チョコバナナとかどう?」

「チョコバナナ?パフェの種類?」

「じゃなくて、まあおいでよ。」


Twinkle(トゥインクル)Magic(マジック)のパフェにある"チョコバナナ"とは違うらしい。

僕たち兄弟は首を傾げながら五条君についていった。


「これがお祭りのチョコバナナ、だ!最近は色々トッピングも工夫してるんだよなあ~。」

その屋台に並んでいたのは、チョコレートがコーティングされて、色んなトッピングがされているバナナ。棒に刺さっていて、食べ歩きしやすくなっているようだ。

なるほど、これなら手も汚れないし、よく考えられているんだなあ…。


チョコバナナは1本1本トッピングが変えてある。

コーティングのチョコレート自体も、普通のミルクチョコレート、イチゴチョコレート、ホワイトチョコレートがあって…

カラフルなチョコスプレーやナッツや飴がかかったり、クッキーやスナックが貼り付けてあったりする。


これは選ぶのも楽しい。

けれど少し列が出来ているのでゆっくり迷う時間もなさそうだ。

「うわー!どれにしよう!」リトがはしゃぐのはいつもの事だけど…

僕も心躍るのを抑えられない。

「どうしようかなぁ…!」端から端まで見渡して、僕が選んだのはイチゴチョコレートのチョコバナナ。

ピンク色のチョコレートに、キラキラしたフレーク状の飴、小さなクマのクッキーが付いた可愛らしい見た目。

普段なら選ばないようなものだけど、だからこそ敢えて選んでみた。


自分では作らないし…ここでしか食べれないなと思ったから。


「ちょっと待った!食べないで!撮らせて!」

五条君に引き留められ、僕とリトは持っていたチョコバナナをスマートフォンの前に差し出した。


「映えるわー!」熱心にカメラ音を鳴らす五条君は楽しそうだ。


リトのチョコバナナを見せてもらうと、ミルクチョコレートにマシュマロがくっついていて、そのマシュマロにニッコリ笑顔が描いてあった。

あとはクラッシュアーモンドがまぶしてある…と思ったら、小魚…にぼしが付いてる?!


「どーだ、いいだろー!」「えっ、ねえ、にぼし…」

「これはあれだな、アーモンドフィッシュ的な?ウケる。」

五条君も「珍しい!まじウケる」と笑っている。僕が知らないだけじゃないよな…こういう組み合わせなかなかしないよな…?


リトがにぼしとバナナを一緒に頬張るのを恐々見守ったけど、彼は「うまい!」と笑った。


塩味と甘味が案外合うのはわかってるんだけど。

魚とバナナとチョコレートって…有りなのかなぁ?



僕のチョコバナナは予想通りの甘くて楽しい味と食感。

キラキラした赤色の飴もイチゴ味。クマのクッキーはココア味だった。



「次は何食べる?ミヤビは食べないの?」

「んー、俺は昼の用事が終わってから食べるよ。次は…フランクフルトとかどう?」

「あれな!じゃあ俺アンの分も買って来るよ!」

リトは意気揚々とフランクフルトの屋台へ走って行った。


五条君の昼からの用事はお腹がいっぱいだと都合が悪いらしい。

「芸術学部の伝統なんだけどさぁ。面白いから見に来て?俺絶対てっぺん獲るから。」

と、一枚のチラシを渡してくれる。


そこには"ミスター女神コンテスト!"と書いてある。

ドレスを着た女性が描かれていて…だけど、オヒゲーノさんのようなくるんとカールに整えられたヒゲが生えている。


「…これはどういう…」

僕は困惑して五条君に訊ねると「まあまあ、来ればわかるから!」と笑顔で返された。


そこにリトが元気よく帰って来た。

「なになに?なんか楽しい話?」

僕と五条君の間に入って来たリトの口端にはケチャップが…

我慢できずにかじったな…


リトはかじられていないほうのフランクフルトを「はい、アン!美味しいよ!」と差し出してくれたのだった。




フランクフルトというのは大きなソーセージのことだった。こちらも棒に刺さっていて食べやすい。

ちょっと味が濃くて、ケチャップをかけなくてもいいんじゃないかとも思ったんだけど…五条君の解説によると「無駄な程味が濃いのがお祭り仕様!」なんだそうだ。


確かに、その後食べた焼きそばも"油とソース増量!"という感じだった。



「美味しかったけど…ちょっと一息つきたいよ。」

僕の訴えに五条君は春祭りのパンフレットを眺めて…

「うーん、じゃあカフェとかどう?俺はそろそろ準備に行くからついていけないんだけどさ。2号館に面白そうなのがあるよ。…考古学研究会の"古代カフェ"。」


五条君は僕の持っていたパンフレットに赤いペンで丸をつけてくれて「ここの奥の2階ね。…そんで、俺の出るコンテストはこっちの講堂でやるから!14時からね。」二つ目の丸印をつけて横に『14時!』と書き込んだ。


「んでコンテスト終わったら、講堂の一番前の端っこに居てな。」

「ありがとう五条君、コンテスト見に行くからね。」

「頑張れよミヤビ!なんかよくわからんけど!」


「おう!お前らも楽しんで行ってなー!怪しい人について行くなよ?」

2号館が見えるところまで来ると、五条君は手を振りつつ去って行った。


怪しい人には勿論ついて行かないつもりなんだけど…

…本当に怪しい人って、怪しい人に見えないのかもしれない。というところが悩みどころだ。


僕の心の声を見透かしたのか、リトが「怪しい人かぁ…チョコバナナ10本くれたらついてっちゃうかもな。」と言うので「いやそれは明らか怪しい人だしついてっちゃダメ。」とツッコミを入れておいた。

冗談だろうけど。

リトは純粋で食いしん坊だから、もしかしたら本当についていっちゃうかもしれないと思わせるとこもある。



2号館は中庭よりは空いていて、すれ違う人もまばらだった。建物自体も他より少し小さめだ。

パンフレットを見ると2号館では静かな催しが多い。


展示などが3か所、飲食はこれから行く"古代カフェ"のみだ。


考古学研究会、何を学ぶ所なんだろうか?



2階へ上がると古代カフェはすぐ見付かった。

部屋の前に大きな看板が出ていたからだ。


近くまで行くと、その看板の大きさを更に感じた。

縦長の看板は、僕とリトの背丈ぐらいある。


真ん中に縦に大きく"古代カフェ"と書いてある、そのまわりにビッシリと詰まっているのは日本語ではない文字だ。


「なんかこれ、読めそうで読めないな。文字?だよな?」

リトが腕組みして見詰めるそれは、僕らの世界で使っていた文字に似ていた。


「そうだと思うけど…うーん、読めそうで読めないね…あ、食べ物の事が書いてあるのかな…」

僕もつい、なんとか解読しようとしてしまう。


新城さんの部屋でも似たような文字は見た。

もしかしたら僕とリトが居た世界も、この世界とどこか繋がっていたりするんだろうか。



「いらっしゃいませ?」

看板を眺めて難しい顔をしている僕らに、中に居た人が声をかけてくれた。


その姿を見た僕らは驚いた。僕らが元の世界で着ていたような服を身に纏っていたからだ。

「すごい、服!」

リトが声を上げると、恐らく考古学研究会のその人は嬉しそうな顔をした。

「おぉっわかってくれますか!こちら古代エジプトの衣服でして、手作りなんですよ!」


古代、エジプト。

そういえば前にオーナーが、僕らが元居た世界はエジプトという国に似ていると言っていた。


なるほど、たしかに似たような文化があったのかもしれない。


「毎年違う国のテーマでやらせてもらってるんですが、今年は古代エジプトがテーマでして。あ、こちらの席どうぞ。ハッ!日本語は大丈夫でしたか?」

案内してくれた男性は体躯は大きいものの、まったく圧迫感の無い優しい雰囲気で。とても親切に気を使ってくれた。

優しい熊が神官の服を着ているみたいだ、と思った。


席は店の倉庫でも見掛けたことのある折りたためるであろう机とパイプ椅子だ。

何かイベントの時に使うとオーナーが言ってたっけ。

きっと学校は色んな行事があるからよく使うんだろうな…。


室内は薄暗く、本物ではないけど炎を模した灯りが点いている。

長い机を前に、ふたり並んで座った。


少し神殿を思い出すけれど、ここに居る人達は親切で楽しそうで、なんだか不思議な心地だ。


「メニューは1つなんですけど、飲み物とお菓子のセットです。飲み物は選べますよ。あっちには展示もあるんで是非見てってくださいね。」


「じゃあ俺はブドウジュースください。」

「僕はお茶がいいかな、麦茶で。」


「はーい。お待ちくださいねー。」注文を受けてくれた熊神官な彼が奥に去って行く。

部屋の中がフッと静かになる。


窓はあるけど厚いカーテンがかかっていて、黄色い光だけが室内をゆらゆら照らしていた。


僕らの他には二組のお客さんが居て、その人達は飲食コーナーから離れた展示を眺めている。

何が展示してあるのかな。


古代エジプト、どんな文化だったんだろうか。

僕らが居たあの世界、あの時を、もしかしたら他の誰かも知っていたりするんだろうか。


…女神様は、女神様のままの彼女は居なかったし、ルミさんは僕らの事もあの世界の事もきっと覚えては居ないだろう。思い出す事もないかもしれない。

だけど、他の人はわからない。僕らの世界から他に、生まれ変わったり、移動してきてしまった人が、もしかしたら居るかもしれない。


是非とも思い出話がしたいなんて、そんな事を思うような人生ではなかったし。

名残惜しい世界でもない。



あぁでも…母や、顔も見た事無いけど子供には…娘には、会ってみたかったかな。

ほんの少しだけ。



リトも考え事をしていたのか、黙って灯りを見詰めていた。

何を思っているんだろう。真面目な顔をしている。


「ん、どうした?」リトが僕が見ているのに気付いた。

「ううん、何考えてるのかなって。」


「あーうん、昔の事かなぁ。」

最近のリトらしくない表情。なんだか、大人みたいな。


いや、大人なんだけど。僕もリトも、とっくに大人だ。体だけは。

こちらの世界に来てから、本当に大人だったのは"体だけ"って何度も思った。


僕たちは何も知らなかった。

何も考えてなかった。自分を生きてなかった。

やっと見つけた小さくて仄かな自分というものに振り回されて、彼女を振り回して。


とても幼かった。


それを"昔の事"だなんて。リトも、僕も、心も少し大人になれただろうか。

この世界で皆と過ごして。



そんな風にふたりで静かに思いをはせていると…

にこにこ顔の熊神官くんが戻って来た。

「お待たせしました、古代エジプトのお菓子セットです!」


紙コップに飲み物。僕は麦茶で、リトはブドウジュース。

紙皿に乗ったお菓子は…何か果物が入ったクッキーだろうか?

「こちらのお菓子は古代小麦で作りました。クッキーとパンの真ん中って感じですかね。果物はドライイチジクです。」


「古代小麦、ってなんですか?」

小麦、小麦粉はよく店でも扱っている。

パンやクッキーやパスタ、麺類、揚げ物やシチュー、割となんにでも入ってるイメージだ。

でも古代小麦ってなんだろう?


僕の質問に、熊神官くんは胸を張って説明してくれた。

「その名の通り、古代からそのまま伝わってる麦ですね。いま流通してるのって、歴史の中で品種改良とかされてるんですよ。これは4000年ぐらい前から変わらない麦の粉で作ってます!」


4000年。

古代、というのはずっとずっと前の事。

ずっとずっとずっと昔の世界だというのは理解していたけど…


「4000年って…待って、俺達が今20歳だろ?何回生まれ変わったら4000年?」

「20歳!という事は、200回20歳やったら4000年です!」

熊神官くんは、にっこり笑顔で教えてくれた。

「「200回…」」

僕とリトは呆然と、紙皿の上のお菓子を見詰めた。


僕たちが200回人生をやり直したぐらいの時の中、変わらぬ存在の植物。

とても不思議だ。


「文明は進化しましたけど、歴史とか考古学やってると思うんですよね。人間自体はそんな変わらないんじゃないかなってね。」


「そうなんですか?」


「そうなんですよ、歴史は繰り返すってね。それどころか古いものの方が実は賢かったりするっていうか、便利だったり豊かだったりするっていうか。そういうことも結構ある気がするんです。」


「へぇー…そういうのを勉強するのが考古学研究会?」

リトの言葉に熊神官くんは勢いよく頷いた。

「そう!そうなんですよ!面白いんです!オレの専門はエジプトじゃないんですけど、例えば日本にしたってですね…」

更に熱い語りが続くのかと思ったその時。

「二ノ瀬君、お客さんが食べれないでしょう?お菓子。」

と、熊神官くんの背後から穏やかながら涼しい声。


「あっ、教授!すいませんつい。へへへ、楽しんでいってくださいね!」

注意された彼はまた奥の衝立の向こうへ戻って行った。

僕は別に話を聞いても良かったんだけど…リトは食べたそうにしてたから良かったのかもしれない。


教授と呼ばれた人物も、僕らに微笑みかけると奥へ入って行こうとした。

そこに女性が駆け寄る。

「教授ここに居たんですか!人に買い物頼んどいてどこか行かないでくださいよ。」

「あぁ、ごめんごめん。ちょっと覗いて戻るつもりだったんだけど…」


その様子をなんとなく眺めていた僕だったけど。

背を向けた教授と女性に既視感を覚えた。


そしてあの女性の声。聞いたことある気がする。


どこで…

そうだ、最初にルミさんの所に行った時。


「ミモザに居た人だ。」

「んん?なんて?」リトが口をもごもごさせながら訊いてくる。


「いや、あの人達、ルミさんのお店で見かけたなって。ほら最初に行った時にさ、丁度お店から出て行くところだった…」

「えっほんと?よく覚えてるなぁアン…」


僕らの声が聞こえたのか、教授が僕の方を振り返る。

そして、黒江さんがするみたいに人差し指を唇の前に置いて"静かに"とサインを出してきた。


静かに。そんなに大きな声で喋っては無いけど…

もしかして、あのお店に出掛けたことは秘密だったんだろうか。


僕が教授に軽く頷くと、彼も頷き返してくれた。

そして女性に何か文句を言われつつ、奥へ入って行った。


「なに、俺以外と声じゃない会話するなんて。」

リトの方に向き直ると、弟は少しムッとしていた。

ヤキモチ、かな。


「会話って程じゃないよ、合ってるのかもわからないし。やっぱりリトじゃないと上手くできないよな。…お菓子美味しい?」

僕の言葉にご機嫌は直ったようで、リトは笑顔になって「美味しいよこれ!」と応えてくれた。


麦茶を一口飲んでから、熊神官くん自慢のお菓子を食べる事にする。


食感は確かにパンとクッキーの間といった感じ。

パンより硬いけど、クッキーみたいにサクッとも行かない。

少し湿度があるような、ぎゅっとつまった生地だ。


生地にもほんのり甘さがついてるけど、ドライイチジクのほうが甘い。


生地とイチジクを一緒に食べて、よく噛む程美味しい。

思わず目を閉じて味わってしまう。

「んー、なんかゆっくり食べて美味しい感じ。こういうの久し振りかも。」


「わかる、なんかこれこそ"ゆっくりよく噛んで"のヤツって思う。」

リトも珍しく一口一口ゆっくり食べている。


元に居た世界で食べ物の事はあんまり気にした事無かったけど…

そういえば、こういうお菓子もあったし、パンもあったなと思い出す。

でもこの世界の食べ物みたいに柔らかかったり口に入れてすぐ濃い味がするっていうのも少なかったような。

こんな風によく噛んで食べてた気がする。


「これ蜂蜜っぽい味するね。」

「うん、それっぽい。」


口に入れたらすぐ美味しいと感じるものも好きだけど、たまにはこういうお菓子も食べたいなぁと思った。これはこれで、なんだか"食べてる"っていう実感が湧くというか。



「ふふっ、美味しいでしょう。それ。」

お菓子を味わって食べていると、また涼しい声に話しかけられる。

さっきの"教授"だ。


「二ノ瀬君に聞きました。熱心に看板を見てくれていたそうですね。私の生徒が一生懸命作ったんです、読めましたか?」

「読めそうで読めなかった!なんて書いてあるの?」僕が制する前にリトが応えてしまう。

また余計な事を言う…。

あの文字もきっと古いものなんだろう。そんなのが読めそうだなんて、学生でもないのに。

僕らは何者なんだって思われてしまいそう。


自分達でさえ、自分達が何者なのか満足にわからないっていうのに。


「実はそのお菓子のレシピが書いてあるんですよ。」

「ええっそうなの?読みたい!」リトがガタッと立ち上がる。

レシピ…それは僕も読みたいかも…


「レシピは日本語で書いて差し上げますよ。君たちに勉強してもらうのも楽しそうですがね。」

「やった!…でも、ちょっと勉強したらいける気がする。」

「リト。僕らは日本語で手一杯でしょ。」

「ええ?でも…あ。うん。」途中で気付いたらしい、リトは急に口を閉じてうんうん頷いた。


僕たちの様子を眺めていた教授はずっと口元は笑っていたけど…

目元は、分厚い眼鏡とサラサラの長い前髪でよく見えない。薄暗い室内も相まってなんだか不気味だ。


「古代語に自信があるとは、なかなか有望な子ですね。君は想像力がありそうだ。大切な事ですよ。」

褒められたリトはパッと笑顔になって「そう?へへへ。」と照れている。


人懐っこいのは長所でもあるけど、僕は気が気じゃない。

本当にお菓子くれたらついていっちゃうんじゃないか…


どれだけ周りの人に慕われていても、病院の先生だって大学の教授だって、僕らにとって"悪い人"になり得る。


そう、問題は僕とリトにとって"怪しい人"か、"良い人"か"悪い人"かどうかって事なんだ。


僕はなるべく平静を装っていたけど、雰囲気を感じとられてしまったのだろうか。

「緊張させてしまったかな?怪しい者ではないですよ、私は…」

と、僕に向かって自己紹介をしてくれようとしたところに「山田教授!」と女性の声。


ミモザで教授と一緒に見掛けた、あの女性だ。

さっきも教授に色々文句を言ってたな…ここの生徒さんだったのか。


あの時は仲の良い兄妹か恋人同士だと思ったけど…

いや、もしかして…


僕はふと思い当たった。


ここ数週間読んでいた本。

学園ものラブストーリー。生徒が先生に恋をしてしまうという話だった。


そしてそれは禁忌として書かれていた。


教授が僕に"静かに"と言ったのは、ふたりで出掛けていたことを秘密にしてくれということだったんだろうか?

この女性は教授の恋人?


「もう、若い子に絡まないでくださいよ。山田教授はただでさえ怪しい人なのに…」

「酷いなあ。折角怪しくないよっていう説明をする所だったというのに。」


「えっ、教授って怪しい人なの?」

リトが驚いた顔をすると、僕と教授と女性は3人とも吹き出してしまった。


相手が怪しい人だとしても『怪しい人なの?』って訊いてしまうのが僕の弟だ。

勉強はできるのに、心が純粋で馬鹿でどうしようもない。




それから教授と女性は自己紹介をしてくれて、考古学研究会の事を少し教えてくれた。

山田教授と生徒の紺野(こんの)さん。


古代カフェは大学でお祭りがある度に催してるらしい。


今回のテーマの古代エジプトは教授の発案だそうで…

「だから興味を持ってくれる子が居て嬉しかったんですよねぇ。私の発案の回って何故かあまりお客さんが来ないんですよ。」

「それは教授がマニアックなところばかりテーマにするから…」

「そうですか?最近は流行ってると思ったんですけどねえ、古代エジプト…見てくださいよこの漫画なんかエジプト神話が元になってて」

教授はスマートフォンの画面を紺野さんに見せようとして「あぁもういいですからっ」と断られている。


ふたりはとても仲が良いようだ。紺野さんは一見教授に文句ばっかり言ってるように見えるけど、声に険悪さが無いのだ。

僕がリトに"しょうがないなぁもう"というような感じ。


「ふたりは古代エジプトに興味があるんですか?」と、紺野さんが訊ねてくれて。

リトが余計な事を言う前に、僕は思い切って答えた。

「古代エジプトの宗教に興味があって。」


「ほう!宗教に!」教授が僕にぐいっと近づいてくる。

なんだか嬉しそうだ。好きな分野なのかな。さっき神話とか言ってたし…。


「あ、僕は詳しくは無いんですけど。」

それどころか、避けて通ってきた節がある。関連する本はあまり触れないようにしてきた。

オーナーに僕らの居た世界がエジプトに似てると聞いてから。


少し引いた僕の後ろから、今度はリトが質問を飛ばした。

「ねえ山田教授?神様って居るの?エジプトに女神様は居た?」

教授は一瞬考えるような仕草をしてから答えてくれた。

「ふむ…そうですねえ、居ます。沢山居ます。」


「沢山居るの!?」


「沢山居ますよ。神殿も沢山あります。」


「沢山あるの!?」

僕も心の中でリトと同じように叫んだ。


沢山あるんだ…


「世界はとても広く、時間はとても長いのです。人も沢山居ます。だから神も沢山居るのですよ。」

「人が沢山居ると神様も沢山居るの?」

「そうですよ。神は人の心が視るものなんです。そしてその心で視たものを神として表現するのです。」


「心が。それは『この目で視るこの体に宿すものということ』?」

リトが喋った言葉に僕は凍り付いた。


途中から日本語じゃなくて、僕らの世界の言葉で喋っていた。

元の世界でいう教義を、この世界でどう言えばいいのかわからなかったんだと思う。


でもこの世界の人に僕たちの使っていた言葉が通じた例は今の所無い。

TwinkleMagicの人達も調べてくれたけど、今現在のどこの言葉でも無いかもしれないとの事だった。


そんな言葉を喋るなよ知り合ったばかりの人に。



紺野さんは「えっ?なんて言いました?」と聞き返し、山田教授は…

「そうですね、大体合ってますよ。あなたの神は肉体に宿るのですね?」と言うと微笑んだ。


リトの言葉、理解、してる?


僕が呆然と教授を見詰めていると、

「山田教授ー!オカルトサークルの子が呼んでますよ!」と、熊神官くんの声。


「おや、もうこんな時間ですか。学生以外とこんな話は久し振りで…うっかり楽しんでしまいましたよ。」

教授が腕時計を確認するのを見て、僕もハッとする。

僕もリトもそれぞれ腕時計を付けている。それをふたりして確認すると…


13時40分。


「やばっ!」「五条君のコンテスト!」


僕達は慌てて席を立った。

広い学園内だ、移動にも時間がかかりそう。急がなくては。


「すいませんお引止めしちゃって。ありがとうございました、楽しんで行ってくださいね。」と紺野さんが挨拶してくれて、僕達は「こちらこそ!」と頭を下げる。


そして教授は「あぁ何か訊きたい事があったらまたご連絡ください。今日はありがとう。」と、名刺を差し出してくれた。

それを僕が受け取ると、ミモザで見掛けたあの時のように紺野さんと一緒に去って行った。


怪しい人改め、不思議な人だ。



教授が廊下の向こうに消えていってから、僕は名刺を見た。

そこには"西園寺 怜"と書いてある。


名前。苗字と名前だよな。


ニシ…なんて読むのかな。

しかしどう見てもヤマダとは読めない。


でも皆には山田教授って呼ばれてた。

どういう事なんだろ?



「アン、早く行こ!」

リトに急かされて僕は名刺を鞄に仕舞い、ふたりで早足で講堂へ向かった。


まだまだこの世界には知らない事が沢山ある。

考えるのはまた後にしよう。

今は五条君との約束が先だ。






"ミスター女神コンテスト"の会場、講堂は沢山の人が集まっていた。

なんとか14時には間に合った。


僕達がチョコバナナを食べた時の中庭よりも人が多いかもしれない。


講堂の明かりが落とされ、暗くなると…

前方のステージだけが明るく照らされる。


そして始まったのは…


芸術学部の男子達が、いかに美しい女神になれるかを競うという催しだった!

それでチラシの女性の絵にヒゲが描き込んであったのか。


次々とステージの上に登場する男性が扮した女神たち。

驚いた事にみんなそれぞれにテーマがあり、それぞれに綺麗だった。


始まる前の説明によると…

芸術学部での伝統になっているコンテストで、"己をキャンバスにする"という目的で始まったイベントだったらしい。

なんと30年もの歴史があるとか…。


「2年生、五条 雅。テーマは女神バステトです。」

講堂内の放送で、五条君の名前が響く。


どんな姿なんだろうと、ドキドキしながらステージを見た。


ライトに照らされた五条君は、別人にしか見えなかった。

人でさえないように見えた。何もかもが普段の彼からは想像すらできない。


名前が呼ばれなければ五条君だともわからなかったと思う。


ステージの中央まで歩く姿さえ美しい。

僕達の信仰していた女神様のような衣服を纏っている…もしかして、エジプトの神様なんだろうか。


彼は肌を黒く塗っていた。真っ白な僕達の女神様とは真逆だ。


神様は沢山居る。神殿は沢山ある。

ステージを見詰めながら、教授の言った事が僕の頭の中を巡っていた。





10名の出場者に一般票と審査員票が入り、1時間後に結果が発表されるとの事だった。

それを待つ間、五条君が女神姿のまま会いに来てくれた。

「ミヤビ!超綺麗!」「ほんとに凄い綺麗。」

僕らが口々に褒め称えると、女神から出たのはいつもの五条君の声。

「でっしょ?めちゃ頑張ったよ。」


それから五条君は僕達を連れて、コンテストの控室になっている部屋へ戻った。

少し広めの室内には出場者の女神達が居て、五条君の友達も居て、賑やかだった。


僕とリトは五条君の仲間たちに構いまくられ、次々に話しかけられ、目が回りそうだった。

大分この世界でも話す事に慣れて来たと思ったけど、こう一気に来られると流石に頭が追いつかない。


「ハイちょっと休憩。解散!」五条君の声掛けで、やっと僕らは解放された。

好意的な態度はありがたいけれど、ちょっと疲れたのでホッとした。


「青春、体験できた?」五条君が女神姿のまま、いつものようにニカッと笑った。

僕とリトは「青春って、なんかスゴイね…」「勢いが違うね…」と弱った声で返したのだった。



一息ついた所で、「そういえばこのコンテストさ、新城さんも出たんだよ。」と、五条君が衝撃の一言を発した。

「えええ?!」「女神?あの新城さんが?」

当然僕とリトは驚いた。


五条君だって別人のようだったけど、彼は元から細身で中性的魅力がなくもない。

ただ新城さんは…顔立ちは整っているとは思うけれど、大きくがっしりとした体型をしているし、女性の姿になれるのかというと…それこそ想像できない。


「そうなんだよ、俺も先輩から聞いたんだけど。写真残っててさ、それがめっちゃ綺麗なんよ?そんでついたあだ名が"美神様(ビシンさま)"っていうんだけど。今でも陰で呼ばれてんの。」

「ビシンさま?」

「そうそう、美しい神と書く。あっ、俺が教えたって新城さんに言うなよ?めちゃ怒られるから。」

「俺も美神様な新城さん見たい!その写真ないの?」


「美神様かぁ…」

呟いて僕はふと気付いた事があった。


あだ名。

僕とリトも本当の名前を短くして呼ばれている。それを愛称ともいうけど、あだ名とも言う。


つまり本名とは違う名前で呼ばれるって事なんだけど。


教授も、"山田教授"っていうのがあだ名なのかもしれない。

"美神様"みたいに、何か由来があって"山田"と呼ばれているのかも。



僕達はこの世界に来る前も、来てからも…

きっとほんの少ししか見たことが無かったんだな。

一歩外へ出るだけで、知らない事だらけ。不思議な事だらけ。


本を読むのと全然違うし、人から聞いただけとも全然違う。


これからも色んな事を知りたいし、体験してみたい…



「あっ、そろそろ時間!よーし!行くかな!観客席で見てて!」


五条君が準備を始めたので、僕らは講堂へ戻る事にした。

10分後、ステージ上に現れた五条君は紛れもなく女神で、やっぱり綺麗で。


さっきまで話してた彼は、確かに五条君だったのに。



「ミスター女神コンテスト、優勝者は…48票!五条 雅!」


司会者の声が講堂に響き渡り、女神バステトが前に出る。

その姿、その動きは、確かに女神だった。


この瞬間、もしかして本当に女神が宿っているんじゃないかと思ってしまう。


心で…神は心で視るもの…。




その後、控室で会った五条君は、いつもの五条君に戻っていて。

「お疲れ様!なあメイク落とす前に一緒に撮ろうぜ!んで黒江さんとレイさんに送ろ!あっ、美神様にも送ろ!」と、肩を組んで来た。


五条君の仲間たちもめちゃくちゃに喜んでいた。

きっと今日の為に一緒に頑張ってきたんだろうな。


僕らも少しだけ彼らの青春にお邪魔して、笑顔で写真を撮ってもらった。




帰り道、僕もリトも五条君もクタクタで。

全員眠そうに「楽しかったなぁ」とか「チョコバナナ美味しかったなぁ」とかぽつぽつ会話したり、五条君の撮った写真の画面を見せてもらったりしてバスに揺られて帰った。


五条君はTwinkleMagicの前までしっかり送ってくれて、「今回撮った青春画像、ちゃんとプリントしてバイトの時持ってくる!」と約束してくれて、帰って行った。


青春画像。かぁ。


あんなに年の近い人達と一度に交流したのは初めてだった。

きっとお祭りだからあんなに賑やかだったのかもしれないけど、普段も沢山の人が学校で学んでいるんだろうな。


「アン、青春楽しかったなあ。」

「そうだね、またやってみたいなぁ青春。」

「いいね!どうやったら青春なのかよくわかんないけど、またやりたい!」

「確かに、青春の定義ってなんだろうね?」

家が近いとなると、それまで眠そうだったリトは途端に元気になった。


「今度黒江さんにも訊いてみよ。あっ、レティとナティは?歳が近いからわかるかもよ?」

「ええ?どうかなぁ。」


僕もつられて、ちょっと元気になる。

ふたりで笑いながら我が家のドアを開けた。





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