08
ゼスタとリアナの顔は一気に青ざめていきました。
リアナが震えた様子で国王様に尋ねました。
「私が水魔獣ボルフの刑??嘘ですよね国王様??」
ゼスタも震えながら国王様に尋ねました。
「そうだ、冗談だよな??親父??」
国王様は二人に冷たく言い放った。
「冗談ではない。準備が整いしだい執行するつもりだ。」
国王様はルーカスさんに言いました。
「ルーカス、明日までに執行の準備を整えるのは可能か?」
ルーカスさんが国王様に言いました。
「はっ恐らく問題ないかと。」
国王様が大きな声で宣言されました。
「では明日ゼスタとリアナの水魔獣ボルフの刑を執行する。」
水魔獣ボルフの刑というのは、木製の壊れやす檻に受刑者を入れて、それを人工池の水面の上に吊るしておきます。
そこに狂暴な水魔獣で知られるボルフを魔法の笛で呼び寄せて、ボルフに木製の檻ごと受刑者を食べさせるという恐ろしい刑なのです。
この十年くらいは水魔獣ボルフの刑を宣告された人はいなかったと聞いていたんですが、今回ゼスタとリアナはスバルト王国最高刑である水魔獣ボルフの刑を受けたわけです。
ロベルトが笑みを浮かべながらゼスタに言いました。
「厳しい処罰がくだったのはお前たちの方だったな。」
私もゼスタに言いました。
「ちゃんとこれまでの事を反省してくださいね。」
ゼスタは納得できない様子でロベルトに尋ねました。
「おい?おかしいだろう??俺様は王太子なんだぞ??なんでその俺が水魔獣ボルフの刑になるだ??」
ロベルトはいまだに反省していないゼスタにこう言いました。
「ゼスタ??お前がやりたい放題やっていたからであろうが。完全に自業自得じゃないか。」
ゼスタが涙目でロベルトに尋ねてきました。
「待ってくれ??なんでだ??なんで俺たちにこんな嫌がらせをするんだ。」
ロベルトがゼスタに言いました。
「そんなものルーテシアを困らせたからに決まってるだろうが!!それにこれは嫌がらせじゃない、お前自身がルーテシアや他のみんなへ行った事への贖いをさせているだけだ!!」
ゼスタがロベルトに言いました。
「あのバカ女のために動いてたっていうのか。」
ロベルトは怒りに震えた様子でこうゼスタに言いました。
「なんだと??今なんと言った。」
それを感じたゼスタはすぐにロベルトに言い直しました。
「すいません。ルーテシアの為に動いていたって言うのか?」
ロベルトがゼスタに言いました。
「そうだ、ルーテシアを困らせたお前たちが許せなかった。それだけだ。」
ゼスタがロベルトに言いました。
「なあロベルト??俺たちの減刑を親父に頼んでくれないか、俺も悪いところがあったかもしれないが、ルーテシアにも至らない点があっただろう??これはお互い様というやつじゃないのか?」
するとロベルトが大声でゼスタに言ったのだった。
「なにがお互い様だ!!いいか!!ふざけた理由でルーテシアに婚約破棄を突き付けたゼスタお前が100%悪いに決まってるだろうが!!」
手錠をかけられたリアナが私に話しかけてきました。
「ルーテシアさん?国王様に私を助けてもらえるように言ってもらえませんか?」
私はリアナに言いました。
「何を言ってるんですか?リアナあなたがゼスタをそそのかしたのが事の発端でしょう。ゼスタがやっていた悪事に進んで加担していたみたいですし、罪を免れていいわけがありません。」
するとリアナはロベルトに話しかけてとんでもない提案をしたのでした。
「ねえ?ロベルトさん?私を助けてくれませんか?助けてくれるならかわいい私があなたの妾になってあげますよ。」
でもロベルトはこう答えてくれました。
「悪いが断らせてもらうよ。」
リアナは少し困った様子でロベルトに尋ねました。
「なんでですか?」
ロベルトがリアナに言いました。
「君は絶対に裁かれるべきだと思うし、心が汚い君のような女性とは関わりたいとは思わない。それになにより俺には心に決めたルーテシアがいるからな。」
リアナ焦った様子でロベルトを誘惑したのでした。
「待ってください、こんなにかわいい私の誘いを断るんですか?そんなのもったいないですよ??私を妾にしましょうよ??ねえ??」
ロベルトはこれを一喝してくれました。
「だから必要ないんだ。」
リアナはロベルトに言いました。
「水魔獣ボルフの刑なんて嫌なんです。私まだ死にたくないんです。」
ロベルトがリアナに言いました。
「君は自分のやった事に対してちゃんと償いをしなければならいんだ。」
するとゼスタがリアナに尋ねたのでした。
「おい??さっきから何を言ってるんだリアナ??俺を愛してる君は他の男に言い寄るなんてダメだろう?」
ですがリアナはこうゼスタに言ったのでした。
「えっ??ゼスタもうあなたの事なんかこれぽっちも愛してませんよ??」
ゼスタが驚いた様子でリアナに聞き返しました。
「なんだって??」
リアナは悪びれる様子もなくこう言い放ちました。
「だってあなたもう王太子じゃなくなったし、もうあなたを愛する意味がないじゃないですか?」
ゼスタが驚いた様子でリアナに聞き返しました。
「それじゃあリアナ?君は俺が王太子だから近づいてきただけなのか?」
リアナは平然とゼスタに言いました。
「そんなの当たり前じゃないですか。」
「そんなー!!」
するとゼスタはあろう事か私に話しかけてきたのです。
「なあルーテシア??話があるんだ??」
私はゼスタに冷ややかに言いました。
「なんです??いまさら??」
ゼスタが私に言いました。
「俺が悪かった。この通りだ、リアナはバカでクズの最低の女だった。あんな女にそそのかされた俺が愚かだった。やり直さないか??」
ゼスタが必死に私に言いました。
「これから心を入れ替えて君の為にがんばるから。なっ?いいだろう??やり直そう??」
私は冷ややかにゼスタに言いました。
「もう無理ですよ。ゼスタあなたがひどい人だって言うのが良く分かりましたから。もうあなたと共に歩む事はできませんし、したくもありません。」
ゼスタが涙目で私に懇願してきました。
「なあ頼むよ、やり直そう。それで親父に俺を減刑するように頼んでくれよ??」
私は冷たく言い放ちました。
「ですから無理です。あなた元王太子なんですし自分のやった事を少しでも悔いたらどうなんですか?」
私がゼスタにそう言い終わると、ゼスタとリアナの二人は衛兵達によってすぐに地下牢に引きずられていきました。
そして次の日ゼスタとリアナは海に面している王都ミルス近くの人工池へと連れて来られていました。
私とロベルトもその人工池やってきていました。
人工池の高い場所に設けられている展望エリアにたくさんの人達が集まっていました。
そしてゼスタとリアナは刑の執行のために用意された木製の檻にそれぞれ閉じ込められたのでした。
そしてゼスタが入っている木製の檻とリアナが入っている木製の檻が大きな滑車のついたクレーンによって吊るされると、クレーンに吊るされる形で二人の檻はゆっくりと人工池の上に移動していきました。
そして二人の檻は人口池の水面上に吊るされる形になっていました。
騎士団長のルーカスさんが宣言をしました。
「ではこれより水魔獣ボルフの刑の執行を行う。」
そしてルーカスさんが笛を奏で始めたのでした。
とても心地の良い演奏が続くと、人工池の水面が急に騒がしくなったのでした。
「ブガー!!!」
大きな獣の雄たけびをあげながら水魔獣ボルフが水面に姿を現したのでした。
とても巨大な青いいかつい魚が大きく水面を飛び跳ねながらゼスタとリアナの檻へと近づいていきました。
水魔獣ボルフが飛び跳ねている光景を見たゼスタとリアナは震えあがっていました。
ゼスタが大きな声で絶叫します。
「ヒエー!!!頼む引き上げてくれ!!」
リアナも大きな声で叫んでいました。
「まだ死にたくないです!!引き上げてください!!!」
するとリアナはこう言いだしました。
「そうだいい事を思いつきました!!ゼスタだけ処刑するっていうのはどうですか?私の分の罪もゼスタに受けさせるんです。ゼスタが私の代わりにボルフに食われますから、私の檻だけは引き上げてください。」
ゼスタがリアナに大声で怒鳴りつけました。
「ふざけた事言ってるんじゃねえぞ!!リアナ!!お前が食われればいいだろうが!!」
リアナがゼスタに言いました。
「私はかわいいから死んじゃダメなんです。だからあなたが食い殺されてくださいよ。」
ゼスタがリアナに言いました。
「はん、このゼスタ様の方がリアナより価値がある人間なんだ。リアナが俺の代わりに食い殺されなければいけないんだ!!」
リアナが大声で言いました。
「そんな事を言わないでください!!このゼスタが全て悪いんです!!!殺すならこのゼスタだけを殺してください!!!」
ゼスタが大声で言いました。
「俺はこの女に騙されただけなんだ。殺すならこの女だけにしてくれ!!!」
リアナが大きな声でゼスタに言いました。
「もう!!黙ってくださいよ!!」
ゼスタも負けじと言い返しました。
「テメエこそ黙りやがれ!!!」
すると突然ガシャーンとすごい轟音と共にゼスタの姿が消えたのだった。
たくさんの水しぶきが吹き上がっていたのだった。
水魔獣ボルフが海面から現れてゼスタを檻ごと食らったのだった。
水魔獣ボルフのそしゃくによってゼスタは木製の檻ごと粉々にされて食われてしまったのだった。
水魔獣ボルフが大きく水面の上を飛び跳ねた。
そしてリアナの顔面にゼスタの赤い血しぶきがかかったのだった。
リアナはパニックに陥ったのだった。
「いやあああ!!!!いやああああ!!!出してください!!!出してください!!!」
リアナは大声でパニックになっていました。
そして次の瞬間ガシャーンとという轟音と共にリアナの姿も消えたのでした。
そしてたくさんの水しぶきが吹き上がったのでした。
今度はリアナが水魔獣ボルフに檻ごと食い殺されたのでした。
こうしてゼスタとリアナの処刑は完了したのでした。
そしてルーカスさんは別の曲の演奏を始めました。
すると水魔獣ボルフはそのまま海へと帰っていきました。
こうしてゼスタとリアナの処刑が完了したのでした。
それから半年後
私は船上の一室でその時を待ちわびていました。
すると扉をノックする音が聞こえました。
「ルーテシア??準備はできたかい。」
ロベルトの声が外から聞こえてきました。
「ええ、ロベルト、もうドレスを着終わりましたから、中に入ってきてもいいですよ。」
私がそういうと扉が開いてロベルトが部屋の中に入ってきました。
私を見たロベルトが顔を赤くして私に言いました。
「ルーテシア、とっても綺麗だよ。」
私もロベルトに言います。
「ありがとう、ロベルト、あなたもとっても凛々しいですよ。」
ロベルトが私に言いました。
「俺の求婚を受けてくれて、本当にありがとう。」
私がロベルトに言いました。
「私の方こそ婚約破棄された身でしたからね。こちらこそありがとうです。」
私はロベルトの求婚の申し出を受けたのでした。
あれから国王様はミディア公国に留学中だった次男のライオネ様を呼び戻して王位継承をなさるつもりのようです。
そして私は今日晴れてロベルトと結ばれる事になったのです。
ロベルトが私に言いました。
「でもまさか船上ウェディングをしたいと言ってくるとは思わなったよ。」
私がロベルトに言いました。
「私達は船乗りですし船上ウェディングがピッタリだと思ったんです。」
するとロベルトはうなづきながら私に言いました。
「確かに俺もルーテシアも船と共に歩んできたからピッタリだね。」
「ねえロベルト?」
「なんだい?ルーテシア??」
私はロベルトに言いました。
「私を幸せにしてくださいね。」
ロベルトも笑顔で言ってくれます。
「ああルーテシア、絶対に君を幸せにするよ。」
すると船の船長さんが部屋の外からこう言ってくれました。
「船長でございます。ルーテシア様、ロベルト様!!式の準備が整いました。最上階のオープンデッキまでご案内致します。」
私とロベルトはそのまま船長さんの案内でオープンデッキまで登ってきました。
「会長に就任した時よりも緊張するな。」
「私だって緊張してますよ。」
オープンデッキまで上がってくると、潮風の心地よい風が私の横を吹き抜けていきました。
空は遥かかなたまで青く晴れ渡っており、私たちの新しい一歩を祝福してくれているようでした。
オープンデッキには式場の設備が用意されており、お父様や騎士団長のルーカスさんやマルゲイド元工房長さらには国王様などの招待客の方々が拍手をして私達を祝福してくれました。
私達は彼らに祝福されながらオープンデッキの先端へと向かいました。
先端の場所では神父様が私達を待ってくれていました。
そして私達は緊張の中で結婚式が始まりました。
そして結婚式が順調に進んでいき宣誓の時を迎えました。
「ロベルト・カースター汝はルーテシア・ハーマイルを妻とし生涯彼女を愛する事を水の女神アクレディス様に誓いますか?」
「はい、誓います。」
「ルーテシア・ハーマイル汝はロベルト・カースターを生涯に渡り支え愛する事を水の女神アクレディス様に誓えますか?」
「はい、誓います。」
「では指輪の交換を。」
そしてロベルトが私の指に指輪をはめてくれました。
私もロベルトの指に指輪をはめました。
指輪の交換を確認した神父様が私たちに言いました。
「では誓いの口づけを!!!」
ロベルトが唇を私の唇に近づけてきます。
私は目を閉じてロベルトの唇を待ちました。
心臓はドキドキしていて、かなり恥ずかしくもありました。
そしてロベルトの唇が私の唇と交わりました。
私はロベルト深い口づけを交わしました。
私はそっと目を開けると、恥ずかしそうにしているロベルトの顔を見つめました。
私も顔を赤くしている事でしょう。
私たちは口づけを終えました。
そして神父様が大きな声で言われました。
「今この船上において二人は夫婦となった。この二人の新たな門出に盛大な拍手を!!!」
オープンデッキに座っていた方々が一斉に立ち上がって大きな喝采が起こりました。
「おめでとう。」
「おめでとうございます。」
こうして私はロベルトとの新しい船出を始めました。
END