05
「待っててください、すぐに助けます。」
私たちはすぐに溺れていた人の救助に向かったのでした。
私たちは運河の上を漂っていた人たちの救助を続けました。
そして漂っていた人たち全員の救助を完了させました。
「ぜえぜえ。ありがとうございます。助かりました。」
私は溺れていた人に尋ねました。
「どうしたんですか?まさか船の事故ですか?」
その人が私に言いました。
「違います。突き落とされたんです。」
私は驚いて聞き返します。
「突き落とされた??誰に??」
その人はこう言いました。
「ゼスタ王太子にです。」
「私はリアナに突き落とされました。」
「どういう事ですか??」
私たちは助けた人たちから話を聞きました。
どうもゼスタとリアナは騎士団長のルーカスさん達を王城に追い返してしまい、王城に帰る手段がなくなってしまったので水上バスを奪おうとしたそうです。それでゼスタは水上バスに乗っていた人達に降りろと命令したそうですが、乗客のみなさんはそれを拒否したそうです。するとゼスタとリアナはあろう事か船に乗っていた人々をどんどん運河に突き落としていったというのです。
事情を聞いた私とロベルトは呆れかえるのでした。
「何やってるんだ??あいつらは。」
「呆れてものも言えません。まさか乗っていた人を突き落とすなんて。どうもゼスタが命令してルーカスさん達を王城に缶詰にしているようですが。」
「これはかなりまずいぞ。王国騎士団は王都にある運河の警備や負傷者の搬送や船の運航管理などいろんな業務を行っている。その王国騎士団が王城に缶詰となると、」
「実質的に王都ミルスの機能は麻痺したも同然ですね。」
「しかもゼスタが先に出している通行規制のせいでただでさえ交通網は混乱している。」
今王都ミルスはとんでもない状況にさらされている事に驚いて、そしてゼスタとリアナに心底呆れかえりました。
とはいえ肝心の王国騎士団が動けないとなると一体どうすればいいんでしょうか?
するとロベルトが私に言いました。
「ルーテシア??俺に考えがある。俺に任せてくれないか?」
私はロベルトに尋ねました。
「この王都の混乱状況をなんとかできるんですか?」
ロベルトが私に言いました。
「ああ恐らく何とかできるはずだ。」
ロベルトがそこまで言うのなら、私の返事は決まっています。
「分かりました、お任せします。」
するとロベルトは船に搭載されている魔導通信機を使い回線を開いたのでした。
すぐにロベルトの仕事仲間と思われる船頭さん達が通話に出てきました。
「どうした?ロベルト??」
「すまないが、みんな手を貸してくれないか?」
「手を貸す??」
「ああ、もしかしてこの混乱を収束させるのに手を貸せって事か?」
「ああ、そうだ。」
「俺たちもこの混乱を何とかしたいとは思ってるんだが、今は動きずらいんだよ。」
「なんでだ?」
「交通規制に関してはゼスタ王太子が命令を出してるんだ。それに逆らう事になってしまう。それでみんな二の足を踏んでるんだよ。」
「それならもう手を打っておいた。」
「ロベルト??どうするんですか?」
私はロベルトからその案を聞きました。
「こうすれば心配する必要もないだろう。」
私はそのロベルトの案に感心して言いました。
「なるほど、それはとてもいい考えです。」
船頭のみなさんもロベルトの意見に賛成しているようでした。
「ああルーテシアさんの言う通りそれは名案だ。」
「分かった、俺たちもすぐに手を貸す。ロベルト俺達は何をすればいい?」
ロベルトは的確な指示を船頭さん達に出していきました。
「リコ、マルト、タブラカは水上を走り回って、突き落とされた人がいないかの確認。そしてもしいた場合は救助を行ってくれ。ゼスタ達が面白がって突き落とすのを続けているかもしれないからな。」
「分かった。」
「リンシドとボリデは運河の運航整理を頼む。」
「了解。」
「他の船頭は全員で足止めされてる都の人々を運んでくれ。最優先は負傷した人々の聖堂への搬送だ。」
すると船頭さんの一人がロベルトにこう言いました。
「ロベルト??王都中の人を運ぼうとしたら、もっと船頭がいるだろう。俺たちで他の船頭達にも協力してくれるように頼んでみる。」
ロベルトがその人に言いました。
「頼む。大した事はできないが可能な限り礼はするとみんなに伝えてくれ。」
「そんな必要ねえよ。みんなロベルトには普段から助けられているからな。ロベルトへの借りが返せると思ってみんな動いてくれるさ。」
ロベルトが船頭のみんなを強く励ましました。
「よし!!みんな王都の運命は俺たちに委ねられている。だけど大丈夫だ!!俺たちなら絶対に成功させられる!!みんなで王都を救おう!!!」
船頭さん達が力強くロベルトに答えました。
「おう!!!」
そしてロベルトは魔導通信機の回線を閉じたのでした。
ロベルトが力強く私に言いました。
「さあ、俺たちもすぐに始めよう。」
「えっ??はい??そうですね。」
私は恥ずかしく思いながらロベルトを見ていました。
私は彼の立ち振る舞いを驚いて見ていました。
ロベルトは本当に見違えていました。
毅然と対応して的確な指示をみんなに出していました。
私の心の中にはまだ幼い頃のロベルトの姿がありましたので、とても心が動いてしまいました。
ロベルトはこんなにも頼もしくなっていたんですね。
私はそんな彼をつい見とれてしまっていました。
ロベルトは私を一緒にいたいと言ってくれました。
私もロベルトと一緒にいたいです。
あなたと一緒にこれから先の人生を歩んでいきたいです。
心からそう思いました。
私はそう思いながらロベルトの手を強く握りました。
「どうした?ルーテシア??」
私はロベルトに言いました。
「あっいえなんでもありません。行きましょう。」
私とロベルトと一旦仕事を中断するとすぐにケガをした人の搬送を始めました。
船頭さん達の呼びかけによって多くの船頭や商船がロベルトに協力してくれたのでした。
ロベルトの迅速な行動によってゼスタのふざけた行いによって完全に麻痺していた王都の機能はその日の夕刻までに完全回復したのでした。
このロベルトのすばらしい行動に船頭や王都民達からはもちろんの事、貴族達までもがロベルトの行動を大きく称えて絶賛の嵐が巻き起こったのだった。
もっともこのロベルトへの絶賛の嵐に怒り狂っている二人がいました。
そうゼスタとリアナでした。