02
さてこれからどうしましょうか。
とりあえず私は実家であるアルヴァンヌ伯爵邸のあるルアーヌ島に戻ろうと思い、水上バスの停留所へと向かいました。
王国内の移動には船が基本であり、王国内に住む人々の為に水上バス(移動用の船)がたくさん整備されていました。
私は近くの水上バスの停留所へとやってきました。
水上バスの停留所では船を待つ人々が二十人ほど待合室で待っていました。
私は停留所の横にある待合室でロアーヌ島行きの船が来る時間を待つ事にしました。
すると停留所の所に船が一隻やってきたのでした。
ですがだれも立ち上がってはいないので、定期運航されている水上バスではないなとすぐに分かりました。
案の定外に停泊している船は水上バスの船ではなく貨物船のようで何か荷物を積んでいるようでした。
たぶん積み荷が少ないから、目的地が合う人を乗せようとしているのだとすぐに分かりました。
貨物船でも荷物をそんなに積んでいない場合は、一緒に目的地まで乗せて行ってくれる事はよくある事でした。
すると待機所の前に男の人がやってきてこう言いました。
「この船の目的地はルアーヌ島だ。一緒に乗っていきたい者は乗ってくれて構わない。この船に乗りたい者はきにせずに外に出てきてくれ!!」
私は立ち上がり待機所の出口へと向かいました。
どうやらルアーヌ島に行きたいのは私だけのようで私だけが立ち上がっていました。
私が待機所の扉を開けて外に出るとそこには知った顔がありました。
幼馴染のロベルトでした。
彼は鮮やかな金色の髪と青い瞳と整った顔立ちで私を見つめていました。
私はロベルトに尋ねました。
「ロベルト??なぜここにいるのですか?」
ロベルトが爽やかな笑顔で私に言いました。
「伯爵様に新型の魔導エンジンを納入しに行く所さ。」
そして私はロベルトの船に乗せてもらいました。
ロベルトの船は小型船で船の後方にたくさん荷物を積んでいました。
私は操縦席の隣の席に座りました。
ロベルトが操縦席で船を操作して、船が出発しました。
私がロベルトに言いました。
「そうかもう新型エンジンの量産が始まってるんですね。」
「ああ、新型は魔法石の消費を半分以下にできる優れものだ。」
ロベルトはマルゲイド工房という魔道具工房で働いています。
その彼はかなり前から新型の魔導エンジンの開発に取り掛かっており、一週間ほど前にロベルトは新型魔導エンジンの開発に成功していたのでした。
「でもロベルトが通りがかってくれて助かりました。」
「ルーテシアが来ると分かってれば工房の船で出迎えたんだけどな。ところでルーテシア??なんで伯爵家に戻るんだい?王城にいなくていいのかい?」
「いえ実は。」
私はこれまでの事をロベルトに話しました。
ロベルトが驚きながら言いました。
「なんだってゼスタの奴に婚約破棄されただって??しかも婚約破棄された理由がそんなふざけた理由だったのか??」
「はい、それで伯爵家に戻るところだったんです。」
「ルーテシア、君は間違っていない。間違っているのはゼスタとリアナの方だ。」
ロベルトは完全に私の味方をしてくれました。
「くそ!!ゼスタの奴??ルーテシアを困らせるような事をしやがって。自分からルーテシアに婚約破棄をするなんて信じられない。」
ロベルトはすごく私のために怒ってくれているようでした。
すごく恥ずかしくなってきたので、私はこう言いました。
「ロベルト、私のために怒ってくれてありがとう。でももういいんです。正直ゼストとは別れてよかったと思っていますから。」
ロベルトは私に尋ねました。
「そうなのかい。」
私は思っている事をそのままロベルトに言いました。
「はい、ゼスタと私では考え方がかけ離れすぎていて、正直もう彼にはついていけませんし、一緒に歩みたいとも思えないんです。ですから婚約破棄をしてくれてよかったすら思っているんです。」
すると彼は怒るのをやめて穏やかな笑みをこぼしました。
「ならいいんだ。」
ロベルトが私に尋ねました。
「それじゃあ実家に戻ってどうするつもりだい?」
「疲れたので少し休ませてもらうつもりです。その後はお父様の水運の仕事を手伝おうかと思っているんです。」
「水運の仕事を??確かにルーテシアが手伝ってくれれば大助かりだけど。」
「そうか今はロベルトが水運の事業を任されているんですよね。」
「ああ元はマルゲイド工房とアルヴァンヌ伯爵家との共同事業だったけど、伯爵様は俺を信頼してくれて水運事業をすべて任せてくれたからね。」
「だけどいいのかい?心身ともに疲れているだろう?ゆっくり休んでても全然構わないんだ。」
「ありがとうございます。たしかに疲てはいるんですが、屋敷の中にいても塞ぎこんでしまうだけだと思うので、それだったら船を操縦してる方がいいと思うんです。気分転換にもなりますし。もちろんロベルトのお邪魔でなければですが。」
「邪魔だなんてとんでもない、ルーテシアと一緒に水運の仕事ができるなんて大歓迎だ。」
そのまま私は実家があるルアーヌ島へと到着しました。