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遠乗り 1


 

 レティーナに…正確にはリィシュのもとに遠乗りに出掛けませんかとクレイルからの誘いがあった。


 もちろんレティーナに断るべくもなく、是非にと返事をした。



 約束の日は快晴だった。


 朝から出掛ける準備をしていたレティーナはリィシュの姿でしばし装いに頭を悩ませる。

 遠乗りというからには王城からそれなりに離れた場所だろう。


 結局、リィシュの容姿によく似合う、ピンクのドレスを選んだ。行き先が判然としないため、なるべく軽装で行くことにした。


 準備を終えると丁度エルシアン家の前に王家の馬車が到着したようだ。


 クレイルはそつなく家主に挨拶すると、リィシュ姿のレティーナに手を差し出した。


 前回は緊張しすぎてまともに見えていなかったが、クレイルの手は長い指がすらっとして、こんなところまで美しいのね、と妙に感心してしまった。


 レティーナはクレイルのエスコートに応じて、いかにも豪奢な馬車に乗り込んだ。


 馬車の向かいに座ったクレイルはさっとレティーナ…もといリィシュの姿を一瞥して、軽装で来てくれて良かった、と話した。


 ついでに、普段と違う装いも新鮮で可愛らしいですね、と綺麗な笑みとともに臆面もなくのたまう。


 言われたレティーナは顔が赤くならないように、誉められたのはリィシュのこと、リィシュの外見!と必死に言い聞かせる。

 そして内心でこの人、案外罪作りね…天然たらしなのかしらと疑ってしまう。


「どこに行くんですか?」


 赤くなる頬を誤魔化すようにレティーナは尋ねるが、クレイルは微笑むだけで教えてくれなかった。


 街を外れ、芝がが張った開けた場所で馬車を降りると、今度は直接馬で移動する。


 馬での移動はなだらかな山道に入っていった…のはいいが、またしてもレティーナは内心の葛藤と戦うはめになる。


 前にレティーナ、後ろにクレイルで騎乗し、当然ながら二人は密着状態だった。


 背中を覆う広く厚い胸板に、声を掛けられると耳元で直にその吐息まで感じてしまい、その度に奇声を呑み込む。


 後ろから支えてくれる手の温もりと力強さまで伝わってきて、レティーナの思考が度々ショートしかけたのだった。


 とりあえずその時のクレイルとの会話は一切覚えていない。



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