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8.ドラァァァゴン(巻き舌)

 「さて、いよいよミラーレだぞ。」


 警備している冒険者がぽつりとつぶやくと同時に私が乗っていた馬車は稜線を超えた。


「お嬢ちゃん、前に来てみてみなよ。ルクレ公国一番の町、ミラーレが一望できるぞ。」


 御者のおっちゃんのお言葉に甘えて私は御者台に身を乗り出した。


「わぁ……」


 すご。とりあえず一言。

北海道とか京都みたいな計画都市なのか十字に重なった大通りを中心に細い街並みがいくつも出来ている。

そして何よりの特徴と言えばやっぱり町の外回り。

高い建物が町を囲うように出来ている。


「外回りの建物は何ですか?」

「あぁ目敏いね。この建物は防衛のために作られた町なんだよ。」

「防衛のため?」

「その通り。あそこの建物を境界に魔物や人間どもが入ってこれないようにするのさ。」


 なんで人間?って思ったけど考えてみればこの人たち魔族だったな。


「人間から守るってことはここは国境になっているんですか?」

「まぁそういう事になるな。人間どもの国と線引きをするってのはずいぶん腑に落ちないっつう所はあるがミラーレは交通の要所であると同時に重要な砦だ。」

「ちなみにルクレ公国はどこら辺からだったんですか?」

「そうだな……二日前に着いたイリル村、あそこの近くを流れる川が国境線だ。」


 そんなに経っていたとは。

私はちょっと驚きながら馬車に揺れていた……


「ヴァレン・ディ・ミラーレ!」


 ヴァレンディ……なんだって?

私が困惑しているとメロウさんが馬を寄せて教えてくれた。


「この町は閉鎖的な町だから方言があるのよ。さっきのは『ようこそ』って意味ね。」

「交通の要所なのに閉鎖的なんですか?」

「敬語禁止。」

「あっ、閉鎖的なの?」

「交通の要所だからよ。防衛のためにずっと閉じこもっていてその時に形成された文化が今でもあるの。」

「……一体何年間籠城を?」

「そうねぇ……ざっくり三百年。」

「さ、三百年……」


 そんだけあればそりゃあ方言もここまでぶっ飛ぶ訳だ。

私はそんなことを思いながらドルーのおっさんと衛兵が話している様子を見ていた。


 その後二分ぐらいで町の中に入ることが出来た。

どうもさっきの衛兵とドルーは顔見知りだそうでほぼ顔パス。

私は報酬をもらって町を探索することにした。


「リーアちゃん!」

「うわぁ!メロウさん!?」


 さてどこに行こうかと考えているとメロウさんが後ろから飛びついてきた。


「一人で街歩き?」

「えぇ、その予定でしたけど。」

「じゃあ、一緒に行こうよ!」

「あー、そうしますか。」

「あと敬語は禁止ね。」

「うぐっ……気を付ける。」


 そんな感じでなぜかちょっとテンションが高いメロウさんと一緒に街を巡る事になった。


「いやあ助かったよ。普段あのパーティだと女子は私一人だけだから困ってたのよね。」

「何か困ってた?」

「寂しいじゃん?」


 分かんねぇ。

私は適当に相槌を打ちながら町中をフラフラしていた。


「あっ、ドラゴンの演習をやるらしいわよ!リアちゃん、行きましょ!」


 メロウさんが掲示板を指さして提案した。

というかやっぱりいるんだな、ドラゴン。

やっぱり西洋風のあれなのかな?


「ドラゴンって他の都市にもいたりするんじゃないの?」

「いいえ、ドラゴンがいるのはこのミラーレだけよ。」

「王都とかでも普通に飼いならしているんだと思い……思ってた。」

「ドラゴンはとってもプライドが高い生き物なの。ドラゴンに乗れるのはこの町の竜騎士だけよ。」

「竜騎士?」

「そう、人間の王ノーガロド=ルクレ公爵と、ドラゴン、竜族とも呼ばれるけどその長スピファ。その両方から認められた騎士の事。」

「なぜルクレ公国の王だけ?」

「ルクレ公国の初代王アルヴィス=ルクレが当時の長を助けたからと言われているわ。それ以来、長は彼ら一族に敬意を表して竜と対等な関係を結び、その二者に認められた者を竜騎士として他にはない武力として彼らの平和を守るためと言われているわ。」

「ほえー。」

「一応結構感動系のお話だからちゃんと聞いときなさい。」

「と言われましても長を助けた経緯を聞いてないから何とも……」

「忘れちゃったわ。」

「……そうっすか。」

「ちなみに竜族が相応しくない王と判断したら竜騎士のシステムもその代では止まる事になっているわ。」

「まさかのストライキ!?」

「ストライキって?」

「いや、こっちの話!」


 人間の王も大変だな……

ドラゴンにストライキされる竜騎士も大概か。


「ってことは竜族に相応しくないって判断された王は退位するんですか?」

「基本的には竜族に再び認められるために様々なことをするわね。飲みに来た竜族の長の飲み代を代わりに払ったりとか竜族から出た半端者を始末したりとか。」


 すげぇギャップ。


「ちなみにどっちも認められたらしいわ。」

「それでいいのかよ。」


 そんなことを話しながら歩いていると広場に行き当たった。

どうもここでドラゴンの演習をするんだとか。

なんか富士総合火力演習みたいだな……

地元の人はもちろん冒険者らしき人も結構いる。

中にはお弁当や屋台の料理を持参しながら見ている人もいた……ってやっぱり富士総火演じゃん。


「皆様拍手でお迎えください!ノーガロド公爵です!」


 司会者がそう叫ぶと民衆が歓声を上げた。

と同時に空に影が差した。


「ほらリアちゃん!上を見ないと!」

「上?」


 いわれるがままに上を見る。

デカい竜が空を舞っていた。

いやいやデカすぎでしょ!?


「広場に着陸できるの?」


メロウさんに訊ねてみる。


「ノーガロド公爵はリヴァイアサンと契約しているの。」

「リヴァイアサンって海じゃないのか……」

「大きいから広い海にいるだけで本来は陸棲動物なのよ。」


 リヴァイアサンが段々と接近してくる。

これリヴァイアサンが距離感を間違えたらこの都市滅ぶよね?

おっかねぇ。


 とその時ふと思い浮かんだ。

これ戦争の火種になるんじゃないか説。

あのリヴァイアサン程じゃないにしてももしドラゴンを何らかの方法で害することが出来てそれを他の国、一番良いのが公国を従えている帝国の所為に出来れば……

そう考えるとなんだかうまくいく気がする。


 そんなことを考えながら私はリヴァイアサンから飛び降りてくる公爵をじっと見ていた……っておい。

竜に認められる公爵やっぱやべぇわ。

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