3.チンピラ倒しただけで拍手をもらいました
『語ろう、リアーナちゃんのコーナー!』
このコーナーは気になったコメントを適当にチョイスしてリアーナちゃんが読み上げ、可能ならリクエストにもお応えしちゃうコーナーです!
という訳で最初のコメントはこちら!
―――――
お名前:ツッコミの皇子様
コメント:いつも何か終わった口調で話すの草。
―――――
というコメントでした~!
はい、ありがとうございます!
という訳で今日は語りましょうか、現在進行形で。
はい、という訳で今日も今日とていくつか仕事をこなしてお給料もボーダーラインに行ったところで私は冒険者ギルドの鎌を振っていた。
あっ、鎌を振っているとチンピラたちから声をかけられた。
「おい。」
「はい?」
「見ろよ可愛らしい嬢ちゃんが鎌振ってるぜ!」
駆け出しっぽいチンピラたちはそういって私の事をゲラゲラと笑った。
あー、うん。
これ多分私が純朴系少女なら「いいことしようぜ」って筆舌に尽くせなくなる奴だ。
まあ私一切純朴系じゃないんだけど。
「……だから?」
「あ?」
「いや、だから何?」
「ガキがいい度胸してるな。」
うわー、これ完全によくあるチンピラや。
どうしよう……
そんなことを思っていると騒ぎを聞きつけたのか冒険者たちが続々と周りに集まってきた。
その大半は多分抜刀騒ぎになるのを楽しんでいるんだと思う。
だって、明らかに傍観する気満々だもん。
「えーっと、要は何をいいたいの?」
「土下座して『私の存在があなたに不快な思いを与えてごめんなさい』だ。」
そのセリフに周りは大爆笑。
完全に私たちは見世物になっていた。
めんどくせー。
私は鎌をくるりと回して肩に担ぎあげた。
「私の存在が不快なのであれば今日は引き揚げましょう。今度会ったときは打ち合わせをしてお互い姿を見ないようにしましょうね。」
私は鎌に鞘を付けると冒険者の人垣に向かって歩き始めた。
「シカトしてんじゃねえぞ?」
「ビビってるのか?お嬢様?」
ピタ。
もちろん何かを貼った音じゃなくて私の足が止まった擬音だ。
「私が……お嬢様……?」
軽ーく青筋を立てながら私は振り返る。
よほどひどい表情をしていたのか私の顔を見たチンピラたちが少し青ざめた。
「なんだよ、ずいぶん挑戦的な目だな?」
「あー、うん。落ち着こう私。じゃないと今すぐにでも殺しちゃう。」
たいして強い私じゃないけどお嬢様呼ばわりだけは御免だ。
だけどチンピラたちは賢くはなかった。
まあ賢かったら私にちょっかいなんか出さずに自己鍛錬に励んでいただろうけど。
私にとびかかってきたチンピラAがぱたりと眠った。
「眠りの手」だ。
一発ならMPをぶっ倒れない程度には私は強くなった。
急に成長しすぎだろとかパワーインフレどうなっているんだとかそういうのはなしだ。
地道に成長した、そういうことで。
うんうん、強くはないけど弱いわけでもない。
落ち着こうぜ私。
クールにいかなきゃ。
「さ、て、と。私は今君たちのおかげですごく気分が悪い。だからさっさと消えてくれれば私も今日のことは大人しく忘れよう。そっちのがお互いのためでしょ?」
奴らが取った手段は最悪だった。
顔を真っ赤にしたチンピラたちは剣を上段に構えて斬りかかってきた。
「――『ウィンド』。」
とりあえず最近覚えつつある低級の魔法で相手をよろめかす。
そのすきを逃さず私は一歩踏み込むとチンピラBの鳩尾にどすっと鎌の峰を突っ込んだ。
ふふふ、革鎧では衝撃は殺しきれんよ。
そもそも大鎌はいわゆる「ロマン武器」だ。
やたら口径がデカい癖にそこまで精度の良くない銃と同じように基本的に扱いは良くない。
しかし、鎌には他の武器にない特徴が数多くある。
その一つが「数多くの攻撃方法」だ。
早い話、「斬る」以外の攻撃を持つってこと。
大鎌は「斬る」以外にも「突く」、「打つ」、当たり前かもしれないけど「絡める」とか攻撃手段がいろいろあるって話。
殺さないように攻撃することもできるってこと。
うずくまっているチンピラBは放っておいて私は魔法使い風のチンピラCに狙いを定めた。
すでに涙目のチンピラC。
まあ、あきらめろ。
私はくるりと鎌を反転させると刃の尻でチンピラの頭を打った。
「――安心せい、峰打ちじゃ。」
前世から言いたかったセリフをここで言えるとはー!
謎の感動を味わいながら私はくるりと後ろを向いた。
人垣がおもむろに拍手を始めた。
……え?
私そんなに拍手されるようなことした?
ただのチンピラ倒しただけなんですがねぇ……
世の中何で称賛されるかわからんわ。




