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ぬれた靴

 靴が雨などでぬれてしまうと非常に不快だ。地面を踏みしめるたびにしみ込んだ水が足の裏に噴き出してきて、歩くたびにぐちょぐちょと気味の悪い感触が続く。おまけに足がどんどんふやけていってかゆくなってくるし、足が冷えると全身冷えていって風邪もひきそうだ。水虫になるかもしれない。ホントに最悪だ。

 それでも僕は、ぬれた靴もたまにはいいか、と思える。

 悪いものが悪いことに繋がるとは限らないから。


 その時は今のような小雨なんか話にならないような大雨だった。もちろん僕は傘を差してたけど、そんな僕をあざ笑うかのように雨は僕をぬらしていく。濡れていないのは、もはや頭だけだった。

 これはたまらんと近くの店に入ったら、とたんに雨は止み始めた。なんだよちくしょー、とか思ってたら、膝から下がびしょびしょになった女性を見かけた。どうやら僕と同じ目に遭ったらしい。長い髪もぬれて割とみずぼらしかったが、不思議と惹かれた。水も滴るいい女、そんな言葉を思い浮かべていたら彼女は声を掛けてきた。

 同じ災難に遭った者同士気が合ったのか、意外に話が弾んだ。僕は人見知りする方なのだが、何故かすぐに打ち解けた。二人で雨の事を罵ったり、お互いひどい有様だと笑いあったりして、ぬれた靴が乾いてしまうまで談笑していた。

 乾いた靴は快適で、最高に気持ちがよかった。

 また会おう、ということになり、付き合いを重ねていくうちにお互いを想うようになった。


 ぬれた靴は僕を大切な人と惹き会わせてくれた。

 悪いものが悪いことに繋がるとは限らない。

 良いことに繋がっているかもしれない。

 乾いた靴では、きっと彼女に会えなかったから。

 今、遠くから彼女が走ってきた。まだ待ち合わせには十分に時間はあるのに。こんな小雨なのに、靴をぬらして。

「早く会いたかったから。」彼女は言う。

 だったら僕は、こう言うしかないじゃないか。

「じゃあそこの店で話をしようか。ぬれた靴が、乾くまで。」


久しぶりに物を書きたくなって投稿させていただきました。

短いですが、楽しんでいただければ幸いです。

読んでいただき、ありがとうございました。

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