表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルディリア戦記  作者: Y.S.
2/3

序章 ルキアの新鋭たち 1節 カーラル士官学校

ルキア諸侯自治領に位置する、アリアス中央教会所在地カーラル。かつて旧ルキア王国の王都だったこの地は現在、教会の直轄領であり、アリアス教団総本部もここに置かれている。自治領最大の都市カーラルは総本部のあるカーラル神殿を中心に広がる街で、今も商業が盛んである。カーラル神殿のすぐ横には教会の下部組織が運営する士官学校があり、ここは中央教会が擁する中央騎士団の兵舎も兼ねている。


自治領全体の傾向として貧富の差が激しく、カーラルも周縁部にスラム街を抱えており、町で起こる問題の多くはスラム街で起こっている。




アリアス歴1059年4月。ここカーラルの士官学校に新入生が入ってきた。


入学式には、騎士や傭兵、文官を目指す自治領の若者たちが数十名集っていた。その中で、ひときわ目を引く3人の若者がいた。


カーラルの騎士の息子、ソーマ。旧ルキア王家アーク家の血を引く家系の出身で、騎士を目指している。


もう一人は同じくカーラルの商人の娘、フィニス。ソーマの幼馴染で、やはりアーク家の末裔である。シスターを目指している。そしてもう一人が、ソーマとフィニスの世話役でカーラル近郊の農家出身の騎士志願、フレインである。


この年は前の教官が家庭の事情で退任したため、後任としてカルカド男爵領の商家出身の女傭兵、サリアが教師に招かれた。カルカド男爵家はカーラルから南東部に領地を持つ小領主で、街道にほど近い地の利を生かして交易を促進し、小規模領主の中では潤っている方で、秩序維持のため教団へもたびたび寄進している。サリアは男爵家とも交易していた家の生まれだが、家業は兄が継ぐこととなったため3年前に士官学校に入り、卒業後は自治領内で傭兵をしていた。傭兵稼業で各地を巡っていたため、自治領内の情勢に詳しい聡明な女性である。




ソーマとフィニス、フレインはB組の配属となり、B組はサリアが担任することとなった。彼らは戦術や歴史などをサリアから学ぶこととなった。ソーマはB組級長となった。




ソーマとフィニスはアーク家の末裔であることはそれぞれ聞かされていたが、周囲には公表できずにいた。その事実を知っていたフレインはサリアにそのことをいつか伝えられるよう、2人の側近として間を取り持とうと考えていた。




サリアとの面談の結果、ソーマは剣術、フィニスは癒術、フレインは槍術と馬術を学ぶことになった。


サリアも教師としては新人のため、ソーマたち生徒が自習している間、他の教官から魔法や弓などを教わるなどしていた。




騎士や傭兵などには使用武器や戦闘スタイルなどで区分けされた「兵種」というもので分けられており、兵種につくためにはその兵種の資格を取らなければならない。資格は資格試験を受けて合格することで取得でき、一度資格を取得した兵種は以後、試験なしでなることができる。このため士官学校では様々な兵種の資格を取るための技能訓練を行っているのである。しかし人に技能の得意苦手はつきものであり、サリアが他の教官から指導を受けていたのは様々なニーズを持つ生徒たちを指導しやすくするためであった。


士官学校の図書室にはこうした兵科や兵種に関する本も多くあり、生徒・教官問わず多くの関係者が利用している。




現在のところ、ソーマは剣士系の兵種、フィニスは癒術を生かした白魔法の兵種、フレインは騎馬の兵種を目指している。3人は先生であるサリアの指揮のもと、騎士団から与えられる任務をこなして、着実に成長しだしていった。


成長を見届けたサリアは、3人に基礎兵種の資格試験を受験させることとし、期日を6月25日とした。3人は一層勉強に励んだ。他の生徒も基礎兵種の資格を受験する予定の生徒が多く、いつもに増してB組の生徒の動きがあわただしくなっていた。




6月25日。受けることとなった兵種は、ソーマが「ジュニアロード」。級長として剣術はもちろん、指揮力や帝王学を学んできたことで、統率能力を求められる兵種の勉強をしていた。


フィニスは「修道士」を受験する。修道士は癒術の基礎となる兵種である。


フレインは「兵士」を受験する。基礎兵種は騎乗兵種がないため、騎乗兵種になるための足がかりとなる兵種として槍を使う基礎兵種である兵士を選んだ。


資格試験を受けている間、サリアは彼らの姿をかつての自分に重ねていた。サリアは剣術を学んでいて、「剣士」の基礎兵種を獲得し、士官学校時代にマスターしていた。今は剣のほか、斧も扱うレベルになっている。




試験の結果、3人ともが合格した。


それまで3人を含めて新入生は「ノービス」という見習い兵種だった。それだけに、基礎兵種に合格したことは、戦士として一人前になった証拠だった。


3人は次のレベルの兵種を目指し、任務をこなしながら勉強に励んでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ