もふもふ賢者とゆるゆる聖女
なろうラジオ大賞、投稿作品です。
たくさんの評価とブクマありがとうございます!
「ふぁー・・・今日もいい天気」
私は、空に向かってぐっと伸びをした。
「ユラーーー!!!お前、またサボってるだろ!」
こちらに突進してくる、もふもふの塊。
「フーモ、サボってなんかいないわよ〜。ちょっと日向ぼっこしてただけ」
「それをサボってるって言うんだ!」
そうまくし立てるのは、賢者のフーモ。私の相棒。
身長は私の腰くらい。羊の獣人の男の子で、毛並みがもっふもふ。
私?私は見た目はクールビューティ、中身はおっとり系・・・
「話を聞いてるのか!見た目詐欺ゆるゆる聖女!」
「それをいうなら、そっちも見た目詐欺でしょ〜。もふもふ賢者さん?」
フーモは、見た目かわいいもっふもふのぬいぐるみなのに、口が悪いのだ。
「お前は、悪役令嬢みたいにキッツイ容姿のくせに、中身ゆるゆるの能天気だ!」
フーモはフンッと鼻を鳴らす。
「悪役令嬢なんて、ひどいわ〜」
フフっと笑いながら私は返す。
これが、フーモと私の日常会話。
普通の賢者と聖女は、こんな会話しないのでしょうね。
フーモは知らないけれど、私は本当に悪役令嬢だったのだ。ここは、私が前世で大好きだった乙女ゲームの世界。私、フリユーラ・ローゼンベルクは、公爵令嬢であり、王太子の婚約者だった。
伯爵令嬢である、ソフィー・アルメラに王太子が惹かれていき、それに嫉妬した私は、彼女に過剰ないじめを行う。
それが王太子にバレて、国外追放になる、というありがちなシナリオだ。
国外追放になる間際に、前世の記憶を取り戻した私は、王太子とソフィーに謝り倒し、自ら貴族社会からの追放を願った。そして、自分の身一つで、王都から逃げ出したのだ。
そして、行き着いたのが、賢者と呼ばれるフーモの館だった。
その後、ゲームの知識と公爵家の人間として生まれ持った才能から、私は聖属性魔法を極め、聖女と呼ばれるまでになった。
対して相棒のフーモは、身体能力が重視される獣人の中で、少々異端な存在である。彼が秀でていたのは、身体能力ではなく、類まれなる頭脳だった。天文学、薬学、果ては錬金術まで極めたその知識は、賢者と呼ばれるにふさわしいものだ。
貴族、獣人それぞれの枠から外れた私たちは、2人仲良く辺境の村で暮らしているという訳だ。
「聖女様!賢者様!大変です!村の外れに魔物が!」
私達の元には、様々な依頼が舞い込む。
「よーし!行くわよフーモ!」
「待てユラ!僕を置いていくな!」
さぁ今日も、もふもふな相棒と、トラブルを解決だ!
読んで下さりありがとうございました。