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おじいさんが連れてきたビッグスネークは意識をおじいさんから俺達に変え、警戒している。
俺達はいつも通りクルス君が前で盾を構え、イリヤちゃん妹ちゃんは左右にわかれ、弓と石を準備した。
俺は少し後ろに下がり、魔法の準備。蛇、爬虫類には寒さだろうと氷魔法を使う予定だ。
「まずは矢と石で先制お願い!」
俺が叫ぶとイリヤちゃんの矢、妹ちゃんの石、そして、俺の氷の礫がビッグスネークに飛んでいった。
やはり、矢と石はあまり効果が無さそうでダメージを与えていないようだ。氷の礫は同じ場所にいくつも当てたので多少動きが鈍くなった。……気がする。
ビッグスネークはこちらを敵と認識し地面を這うように向かってきた。
クルス君は盾を構えビッグスネークを待ち構える。俺はビッグスネークの進行方向からずれた位置へと移動した。
その間もイリヤちゃんと妹ちゃんは攻撃を続けている。効果はないが経験は得られるだろう。
這う蛇は巨体に似合わず素早くクルス君に近づいた。オーク戦からの経験からクルス君はどんな相手でも盾で受けるよりも回避を重視するようになった。そして、回避しながら剣で一撃加える練習をしていた。
クルス君は迫る蛇をギリギリでかわし、剣で切りつけた。やはり蛇の鱗は固いのか傷を付けた様子はない。多少の衝撃は与えたようだが…。
「クルス危ない!!」
蛇を避け一撃を入れたクルス君にイリヤちゃんが叫んだ。
何かと思ったら蛇の尻尾がクルス君に襲いかかっていた。
クルス君は間一髪盾を構え、そこに尻尾が当たり飛ばされた。
俺は慌てて地魔法で落とし穴を作ったが、蛇はすぐに這い出てきた。
イリヤちゃんと妹ちゃんは援護射撃をしてくれているが、あまり効果が無く蛇は俺に向かってきた。
次に俺は水魔法で水の球を作り蛇にぶつけた。
当然ただの水なので、ダメージはないが、続けて氷の礫を蛇に当てた水を凍らせるイメージで放った。
わずかに蛇は凍りこちらへの突撃を止めることが出来た。
「わるいっ!!」
後ろからクルス君の声が聞こえた。どうやら無事だったようだ。
「クルス君、これ使ってみて!!」
俺はクルス君に良く切れる折れた剣を渡した。
「もう少し凍らせてみるから、そしたら攻撃頼むよ!!」
「まかせろ!」
俺は水の球と氷の礫を繰り返し放ち蛇を徐々に凍らせていく。イメージの問題かだんだん効率は良くなっていく。
頭の方を凍らせたところ、クルス君が横から蛇を切りつけた。
風の刃のように『スパッ!!』とはいかないが普通に切ることが出来た。
切れる折れた剣が有効とわかるとクルス君は頭に登り、蛇の脳天に剣を突き立て頭を切り裂いた。
蛇は痛みで暴れまわり氷も砕け、クルス君はまたしても飛ばされたが、しばらくすると力無く動かなくなった。
どうやら無事にビッグスネークの討伐に成功したようだ。
「なんとかなったな…。」
「クルス、あんた二回も飛ばされて大丈夫なの?」
「くるすくんけがしたの?」
「あぁ?んなもん大丈夫にきまってんだろ!!」
「あの剣がなければ大変だったね。」
「あぁ、強いモンスターほど剣が通じないな。これなら木剣でも変わらねぇかもな」
「剣を大事にするならそれも有りかもね。切れる剣を持ってればとどめは刺せるし。」
「なら試してみればよい。」
そのおじいさんの声に皆が振り返ると、おじいさんが次のビッグスネークを連れてきていた…。




