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小屋予定地に帰るとおばあさんとサクヤちゃんがこちらに気付き近づいてきた。
おじいさんはスキップしそうな程の上機嫌でサクヤちゃんに寄っていった。
「サクヤ、お土産じゃぞ~」
「お土産…?」
「これじゃ。」
おじいさんは空間魔法で壺を取り出すとサクヤちゃんに中身を見せた。
「ハチミツ…♪」
サクヤちゃんはキラキラした笑顔を見せていた。
「あらあら、ハチミツが取れたんですか?」
「あぁ、小僧にクイーンハニービーを従魔にさせてハチミツをもらったんじゃ。これからはいつでもハチミツが食べられるぞ!!」
「ほんと!?嬉しい…♪」
サクヤちゃんはいっそうキラキラしながら笑顔を向けていた。
…………俺に向かって。
最初はおじいさんに笑顔を向けていたはずなのにクイーンハニービーを従魔にしたという辺りから視線が俺に変わり始めたのだ。
おじいさんは笑顔が移った事に気付き、この世の終わりのような顔をしていた。
相変わらず報われない人だなぁ…。
その後、おやつタイムとして皆でパンや果物にハチミツをかけて食べた。女性陣や従魔達は美味しそうに食べていた。
ハチミツと言えばホットケーキを食べたいが、卵やミルクが高いので作れるかどうかは微妙である。
この際だから、卵やミルクが取れるモンスターがいれば嬉しいんだがなぁ~。
ハチミツおやつを食べ終えた俺達はおじいさんから貰ったファングボアを狼車に積んで孤児院に帰った。
孤児院に着いた俺は院長先生とシャルちゃんに、孤児院の子供達に内緒でハチミツを渡した。ハチミツにはシャルちゃんだけではなく院長先生も喜んでいた。珍しいことだ。
孤児院の子供達に内緒なのは一応皆の分はあるが、たくさんは無いので喧嘩しないようにするためだ。
勿論クルス君イリヤちゃん妹ちゃんにも内緒にするように言ってある。
それから、二人には従魔が二匹増えた事を伝えた。
そう、二匹だ。一匹はクイーンハニービー。もう一匹はレインボーキャタピラーだ。
上質な糸を吐き出し、ほぼ無害なモンスターなので、従魔にしない手はない。
ちなみにレインボーキャタピラーの色は赤いのを選んできた。
うちは従魔達に赤いスカーフを使っているので赤い糸や布は必需品なのだ。まぁ、レインボーキャタピラー一匹で布など織れないだろうが…。
レインボーキャタピラーの餌に関しては、花畑の花は勿論緑の物なら雑草でも食べるらしいので、森から色々採ってきてあった。
従魔の世話は孤児院の子供達、それも年齢10才未満の子がしてくれている。
従魔達もそれなりに頭が良いので問題なく世話を任せている。
子供達も従魔が肉や果物を取ってくるのをわかっているし、何より働いている事が嬉しいらしく嬉々として世話をしてくれている。
そのうち農業、木工、裁縫あたりの仕事が増えるかもしれないな。
そして、その日の晩御飯、食事を終えた俺達の前に院長先生とシャルちゃんがフルーツのハチミツがけを出してくれた。
子供達、特に女の子達は大興奮だった。
食事の最後に院長先生は子供達にむけ
「皆が良い子にしていれば、またハチミツが食べられるかもしれません。みなさん、良い子にしているのですよ?」
「「「「「「は~い!!」」」」」」
と言う言葉で晩御飯を締めくくった。




