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孤児院に戻るとおじいさんは布生地を持ってサクヤちゃんが居るであろう家の中に走っていってしまった。
俺達は家の裏に行き狼車からクイーン達を離し、荷物をアイテムボックスにしまった。
このあとはクルス君の剣を研ぎたがったが、鞘がないので先に作ることにする。
安い武器は鞘が付いていないので、新しく買うか、今まで使っていたものを使うかどちらかだが、おじいさんから簡単な鞘の作り方を聞いたので自分で作ることにする。
ちなみに今まで使ってたショートソードは中古の安い鞘を使っている。
鞘を作る前に地魔法で買った剣と重さ、長さを合わせた石剣を作り出しクルス君に渡した。
「クルス君、この石剣はこの剣と重さと長さを同じくらいにしたからとりあえずこれで練習しといて。」
「おう、わかったぜ。でも、剣で練習しちゃまずいのか?」
「まずいっていうか、実物がないと鞘を作り辛いんだよ。」
「あぁ、そういうことか。じゃあ、鞘は任せたぜ!!」
そう言ってクルス君は庭に走り出した。
そして俺は剣と木材、ついでに俺がかった剣とナイフも用意した。
さて、鞘作りをはじめるか!!……と思ったら、孤児院の子供数人が俺のところへやって来た。
「なぁシュウ、これから木工するのか?」
「うん、これから買ってきた剣の鞘を作って、その後は剣を研ぐ作業かな」
「それ、俺達も見てて良いか?」
「別にかまわないけど、どうしたの?」
「いや、俺達は多分冒険者にならなきゃいけなそうだから、師匠に修業つけてもらってるけど、大工か鍛冶屋なら仕事覚えれば働けるかと思ってな。それに、冒険者でも必要になるかもしれないだろ?だから、今のうちから覚えとこうと思ってな。」
確かにここに来た子供達は町の商店の仕事につけず日雇いの肉体労働をしている子や、孤児院の手伝いをしている子達だ。皆クルス君やイリヤちゃんよりも年上だから、先に冒険者になるんだな。
「なら、見るよりやってみた方が良いんじゃない?材料はそれなりにあるし、失敗しても薪にすればいいし。あっ、でも道具が無いから順番にやるか皆で協力しあってやってね!」
「わかった。とりあえず皆で協力してやってみるよ。」
そして俺は彼らに木工道具を渡し、孤児院の椅子から作るように指示をだした。
見本もあるし、良いのが出来れば交換できるから一石二鳥だ。
俺は道具を渡してしまったので、魔法で鞘を作る作業を始めた。道具が無いため細かい作業も魔法でやらなければならず、かなりの魔法の練習になりそうだ。
作業をしているとおじいさんが家の中からガッカリした表情で出てきた。
まぁ予想はつくけど、おじいさんに話しかけると予想通り布を渡したら喜ばれたが、
すぐに追い出されたらしい。相変わらず不憫なじいさんだ。
俺はおじいさんに他の子供達が木工を習いたがってる事を話し、おじいさんに簡単な説明をお願いした。
おじいさんは子供達の所で一度椅子を作り説明してくれた。
ちなみに一度作って失敗し、すでに薪へとなっていた。
おじいさんは説明を終えると俺から木剣を受け取りクルス君がいる方へ向かっていった。
俺はなんとか鞘を作り、剣類を研いだ所で一日の仕事を終えた。




