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「ゴブリンキング…?」
「はい、ゴブリンが集団行動をするのはご存じですね?その集団が大きくなると、アーチャーやマジシャン、アサシンやウォーリアー等の上位種が現れ始めます。この頃になると、集団は巣を作り規模を拡大させていきます。そして、上位種が増えるとキングが誕生します。キングが誕生すると、そのスキルによりゴブリン達の脅威度が増してしまうのです…。」
「それじゃあ、俺達が持ってきた証明部位の数でキングがいると?」
「絶対とは言えませんがおそらく…。」
「そういえば最近ゴブリンが強くなってたな」
「そうなの?クルス君。」
「おう、最近ゴブリン相手でも苦戦しなくなったと思ったら急に強くなったんだよ。てっきりレベルの高い奴等だと思ってたけどキングのせいだったんだな。」
「やはり、ゴブリンキングが現れた可能性が高いですね。放っておくとゴブリンが大量に発生するかもしれないので、冒険者やこの町の兵士で討伐隊を組まなければなりません。」
「そんなに大事なの?」
「そうですね、ゴブリンはそれほど強くはないのですが繁殖力が強いので油断すると一軍に匹敵する数になってしまうのです。そうなる前にゴブリンを殲滅する必要があるんです。ですので、ゴブリンが出没する場所をお教えいただけないでしょうか?お聞き次第偵察をだしますので。」
「おじいさん、どうするの?」
「ふむ、つまり、ゴブリンが大量発生するから危ないという事じゃろ?ならば問題無かろう。」
「……えっと、どういうことでしょう?」
「ふむ、すでに巣の位置は把握しておるし、キングも確認しておる。ゴブリンの数も常に30匹程度に調整しておるから心配要らんという事じゃ!!」
「……と言われましても、大量発生の危険がある以上討伐しなければ大変な事になるかも知れないんですよ!?」
「それはないじゃろ、いくらゴブリンでも一日で大量には生まれんはずじゃからのう。それとも冒険者ギルドは冒険者の獲物を横取りするのが仕事なのかの?」
「い、いえ、決してそのような事は…」
「おじいさん、お姉さんをいじめるのはやめた方がいいよ!」
お姉さんは真剣に話をしているが、おじいさんは笑いながら話しているのでからかっているのはまるわかりである。そもそも、おじいさんがゴブリン程度に困るわけがないしね。
「まぁ、冗談はさておき、あの程度のゴブリンの巣ならば儂一人でもなんとか出来るから大丈夫じゃよ。」
「……わかりました。ですが、こちらとしても何かあると困るので、定期的に連絡をいただけると有りがたいのですが…。」
「ふむ、ならばギルドの人間を誰か孤児院に寄越せば良い。小僧達に聞けばゴブリンの情報も手に入るじゃろう。」
「孤児院にですか?」
「さすがに小僧達だけでギルドには行かせたくないからのう。」
「あぁ、そうですね。わかりました。では、そのようにいたします。ご無理はなさらないようお気をつけくださいね。」
「うむ、気を付けよう。して、ゴブリンの報酬はどうなったかの?」
「あ、はい。それはこちらに」
そう言ってお姉さんはお金の入った袋をとりだした。
「ゴブリンだけの報酬じゃとどれくらいじゃ?」
「ゴブリンだけですか?そうですね…ゴブリンは数が多かったので半分位でしょうか…。」
「そうか、助かったわい」
「いえ、これだけの討伐お疲れ様でした。ゴブリンの巣もお気をつけてください。」
「世話になった。ではまた。」
お姉さんがギルド証を確認し、ゴブリンの討伐報酬を貰った俺達は受付を去り狼車に向かった。
 




